おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第127話 VS 冒険者ギルドマスター(1)

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 俺の横やりにより王城までの道を民衆が確保したあと、数千の王都の民が王城を取り囲む。
 それを見ながら、俺は何となくフランス革命みたいだなと思いを馳せつつ、屋根上から、その光景を見ていると――、
 
「ここに居たのか栄治」
 
 背後から声をかけられる。
 その声は、王都リーズの冒険者ギルドのギルドマスターの声であったが――、ゾワリと寒気が背中から脳へと伝わってくる。
 それは――、
 
「ディアナ! 避けろ!」
 
 俺は叫ぶと同時に振り向かずに、その場から跳躍し数メートルほど移動する。
 それと共に、屋根上に敷かれている瓦が吹き飛んでくる。
 
「――くっ!?」
 
 咄嗟に空中で体を捻り、俺は屋根上を転がり自由落下に身を委ねて屋根上から自身の意思で落下を選択する。
 そして落下途中で、建物の――、出っ張っている窓の縁を素手で掴む。
 
「何を――」
 
 喉まで昇ってきた言葉を一度、胸中に呑み込んだあと、俺は頭上を見上げる。
 そこには、ガルガンが俺を見下ろしていた。
 
「どうして、俺を攻撃した! ガルガン!」
「どうしてだと? そうだな……。あの方の命令だからだ……」
「何を……、何を言っている!?」
「お前とは話す言葉ない」
 
 俺の言葉に一切、答えるつもりはないのかガルガンが右手のてのひらを俺に向けてくる。
 傷だらけの武骨なてのひら。
 その手のひらの中心には赤い光点がいくつも生まれていく。
 
「攻撃魔法だと!? 正気か!」
「ご主人様!」
 
 ディアナが、俺の名前を叫ぶと同時に、ガルガンへとナイフを片手に襲い掛かる。
 ガルガンの首元へと吸い込まれていくディアナのナイフ。
 そのナイフをガルガンは身体強化した腕で受け止める。
 人の体とは思えない金属音が周囲に鳴り響く。
 
「――にゃっ!? こ、これは……」
「ディアナ! 避けろ!」
「にゃん!?」
 
 ディアナが、俺の忠告と共に、ガルガンの鋼鉄化した腕を蹴りつけガルガンから距離を取ると同時に、ディアナが居た場所を――、大気を石の槍が貫く。
 それを見ながら、俺は建物の壁を昇っていきガルガンに向けて仕込みナイフを投げつける。
 
 ――キンッ!
 
 またしても金属音が響く。
 ガルガンが自身の肉体を身体強化した上で、腕を鋼鉄化して防いでいた。
 
「――ちっ」
 
 思わず舌打ちする。
 
「ディアナ。ガルガンは土属性の魔力に特化した魔法戦士だ。どういう理屈か知らないが、アイツは、俺達を殺そうとしている」
「――に、にゃんで!?」
「知らん! だが! 相手は、元・Sランク冒険者だ。俺達の敵に回ったってことは、事実だ。だから――、一瞬も! 気を緩めるな!」
「――で、でも……。ご主人様の――」
 
 俺は腰から日本刀を抜きながら、固定化の魔法をかけつつ――、
 
「敵は斬る! 相手から仕掛けてきたことだ! だから、躊躇はするな、ディアナ!」
 
 俺の言葉に、ディアナの瞳が一瞬揺れる。
 
「わかったにゃん」
 
 そして、ディアナが覚悟を決めたところで、俺は口を開く。
 
「ガルガン。理由は話せない、そういうことだろう? だがな、アンタは……、あんたは俺に命を狙ってきた相手には遠慮するなと教えた。だから――」
 
 俺は日本刀の柄を両手で構えたまま身体強化を行う。
 それと同時に日本の剣道を主体として、自身で昇華した剣術を振るう為に、対・対人戦の構えを取る。
 
「死んでも恨むなよ?」
「何だ? その構えは?」
 
 そこで、ようやくガルガンが表情を変えるが、向けてきている殺気は変わらない。
 ガルガンは、俺が構えたことで背中に背負っていた長さ2メートルを超えるバスタードソードを手に取ると俺に向けてくる。
 
「ガルガン、お前が俺達を襲ってくる理由を答えないのに、俺が教える訳がないだろう?」
「よかろう。殺すことは変わらないのだから――」
「ああ。そうだな」
 
 俺は、殺気を向けてくるガルガンに向けて殺気を消す。
 それと同時に、ガルガンがバスタードソードを片手に突っ込んでくる。
 瞬きの瞬間――、5メートルほどの間合いを一瞬で詰めてくるガルガンは、バスタードソードを頭上から振り下ろしてくる。
 
「対人戦闘用剣術――、下段の構え――『地擦り斬月』」
 
 振り下ろされてくるバスタードソードに合わせるようにして、俺は瓦の上を剣道独特の歩法で躱しながら両手で構えていた日本刀を下段から振るう。
 ガルガンが振り下ろしたバスタードソードは、屋根上の瓦を粉々にし周囲へと石礫として飛ぶが、既に俺はガルガンの背後を取っていたこともあり、ガルガンの体が防壁となることで、避けることすらせずにやり過ごす。
 
「どこに行った!?」
 
 俺の姿を見失ったガルガンは声をあげる。
 俺の姿を見失うなんて……、まったく――、らしくない!
 俺は、自身の日本刀を払う。
それと共に、日本刀に付着した血が、建物の瓦の上に飛び散り、軽い音と共に何かが落ちる音が聞こえてきた。
 
「グアアアアアアアアアッ。――ば、ばかな!? お、俺の腕が!?」
 
 瓦の上に落ちたのは、俺がガルガンの横を通り過ぎる際に切り落としたガルガンの腕。
 腕から血を流すガルガンは、その場から距離を取ると回復魔法を使い腕の傷口を塞ぎながら、俺を見てきた。
 
「――お、俺が、教えた技では……」
「そうだな」
 
 俺は日本刀を構えながら返す。
 この異世界では、対人特化の剣術なんてモノは存在しない。
 何故なら、冒険者ってのは魔物相手に戦う存在だからだ。
 そして、それは騎士団や兵士にも言える。
 戦争が存在してたと言っても、それは対人特化ではない。
 だが――、日本では違う。
 日本の剣術は、2000年以上もの歴史がある。
 それは集約され収束されて剣術という形に――剣道として受け継がれている。
 謂わば対人特化の暗殺剣とも言える。
 
 
 
 
 
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