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第三章 王都暗躍編
第108話 王都リーズ(8)
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「有効活用? 何をするつもりなんだい?」
「まぁ、その辺は夜になってからの話だな」
俺は肩を竦める。
幸い、貧民街には何度も足を運んでいるので、どこに水門があるのかくらいは理解しているし地理にも通じている。
あとの問題は――、
「それよりも、いま直ぐに手を打たないといけないのは、水の問題だな」
俺は呟く。
「そうだが、どうにか出来る当てはあるのかい?」
「まぁ、できなくもないな。ただ、水に関してはラウリが何とかしたという体裁を作ってくれ。俺が来たってことを知られるのは面倒だからな」
「それは精霊魔法があるから、ある程度は何とかなるけどさ――」
「なら、何とかしたって事にしておいてくれ」
「……」
無言で俺を見つめてくるラウリは、深く溜息をつく。
「はぁー。分かったよ。エイジ、アンタの提案は受け入れよう。水を確保しないと何も始まらないからね」
「分かった。それじゃ、こちらからもお願いも聞いてもらいたい。そちらの願いを聞くのだから等価交換というやつだな」
「なんだい?」
「俺が、今後、貧民街でする事には目を瞑ってほしい。もちろん、貧民街の連中を傷つけることはしない。これを呑んでくれるのなら――」
「分かったよ」
「随分と素直だな」
「聞かないと干上がっちまうからね」
「そうか。――なら、まずは水を貯める貯水池が必要だな」
「――え? あ、あんた……。今、自分が何を言ったのか理解しているのかい? そんな貯水池があったら、スーニャが慌てて報告しに来るわけが――」
「そのくらいは分かっている。だから町の中で開いている場所に貯水池を作って水を貯めていく。それなら問題ないだろう?」
「それはそうだが……」
「――なら、さっさとするぞ。ラウリ」
「分かったよ」
俺は、生活魔法で髪の色を金髪へと変化させる。
異世界でもっとも多い金髪という髪色。
誰か見ても、黒髪とは全く隔たりのあるモノ。
「変化の魔法かい」
「まあな……。それよりも人工的に作られた川沿いの空き地を全部見て回りたいから案内してくれ」
「わかったよ」
ラウリに川沿いの空き地まで案内される。
空き地の広さは、学校の教室くらいの広さだ。
「――さて、始めるとするか」
「何をするつもりだい?」
「まずは――」
俺は生活魔法で地面に窪みを作る。
その深さは30センチほど。
「川の深さは1メートルくらいあるから、これで十分、溝を作れば水を排出できるな」
「出来るなって……。その水は――、貯水池に入れる水は精霊魔法で出せってことかい? これだけの広さに水を張ったら、私の魔力は空になるんだが?」
「問題ない」
俺は貯水池に手を翳し、生活魔法である水生成を発動させる。
すると手のひらから、膨大な水がドドドドドドドッと、音を立てて貯水池に流れ込み、10秒ほどで貯水池を満タンにする。
「あ、あんた……、まさか精霊使いという……わけでは……」
「細かい詮索はするな。俺が何をしようとスルーしてくれ」
「……わ、分かったよ」
「エイジさん、すごいです!」
ラウリとは違い、スーニャは感嘆な声を上げていた。
そのあとは、ハッキリ言って作業と言ってよかった。
人工的に作られた川沿いの空き地にラウリに案内されては、貯水池を作り、生活魔法で水を出し貯水池を作っていく。
その繰り返し。
その数は30を超えたところで――、
「エイジ。あんた、本当に何者なんだい?」
「さあな?」
ソルティの話だと、俺はアガルタの世界に存在している人間を作った存在に近いらしいが詳しいことは知らない。
ただ、俺は殆ど魔力を消費せずに生活魔法であらゆる事が出来る。
それだけはたしかだ。
至るところに貯水池を作ったあとは、俺達は最初の建物へと戻る。
理由は簡単だ。
目立ち過ぎた。
まぁ、このへんはラウリがやったと言うことにしておけば問題ないだろう。
「とりあえず、水の確保については、あれで問題ないだろう?」
「問題ないどころか、かなり綺麗な水でビックリしたぞ? エイジ」
「まぁ、俺が作り出す水は川の水よりも綺麗だからな」
生で飲めば腹を下すような水ではない。
日本でならミネラルウォーターで通用するレベルの品質の水を俺は作り出すことができる。
「どうやら、私は、エイジ、お前を侮っていたようだよ」
「そうか?」
俺は、リルカ達が心配だったこともあり椅子に座りながらラウリの言葉に適当に答えておく。
「話半分ってことで、私の話は聞いてないか」
そうラウリは自虐っぷりで話を振ってくる。
「別に聞いてないってわけじゃないぞ? 実りが無いから適当に言葉を返しているだけで」
「それを話を聞いてないというんじゃが!?」
「すまないな。それなりの魔力を使ったからな」
まともに相手にするのもメンドクサイから、適当に話を振っておこう。
それにしても、リルカ達は、俺のことを心配しているだろうな。
心配のしすぎで変な行動を取らなければいいが……。
「とりあえず夜になるまでは此処で待機だな」
「夜って何かをするつもりなのかい?」
「まぁ、その辺は夜になってからの話だな」
俺は肩を竦める。
幸い、貧民街には何度も足を運んでいるので、どこに水門があるのかくらいは理解しているし地理にも通じている。
あとの問題は――、
「それよりも、いま直ぐに手を打たないといけないのは、水の問題だな」
俺は呟く。
「そうだが、どうにか出来る当てはあるのかい?」
「まぁ、できなくもないな。ただ、水に関してはラウリが何とかしたという体裁を作ってくれ。俺が来たってことを知られるのは面倒だからな」
「それは精霊魔法があるから、ある程度は何とかなるけどさ――」
「なら、何とかしたって事にしておいてくれ」
「……」
無言で俺を見つめてくるラウリは、深く溜息をつく。
「はぁー。分かったよ。エイジ、アンタの提案は受け入れよう。水を確保しないと何も始まらないからね」
「分かった。それじゃ、こちらからもお願いも聞いてもらいたい。そちらの願いを聞くのだから等価交換というやつだな」
「なんだい?」
「俺が、今後、貧民街でする事には目を瞑ってほしい。もちろん、貧民街の連中を傷つけることはしない。これを呑んでくれるのなら――」
「分かったよ」
「随分と素直だな」
「聞かないと干上がっちまうからね」
「そうか。――なら、まずは水を貯める貯水池が必要だな」
「――え? あ、あんた……。今、自分が何を言ったのか理解しているのかい? そんな貯水池があったら、スーニャが慌てて報告しに来るわけが――」
「そのくらいは分かっている。だから町の中で開いている場所に貯水池を作って水を貯めていく。それなら問題ないだろう?」
「それはそうだが……」
「――なら、さっさとするぞ。ラウリ」
「分かったよ」
俺は、生活魔法で髪の色を金髪へと変化させる。
異世界でもっとも多い金髪という髪色。
誰か見ても、黒髪とは全く隔たりのあるモノ。
「変化の魔法かい」
「まあな……。それよりも人工的に作られた川沿いの空き地を全部見て回りたいから案内してくれ」
「わかったよ」
ラウリに川沿いの空き地まで案内される。
空き地の広さは、学校の教室くらいの広さだ。
「――さて、始めるとするか」
「何をするつもりだい?」
「まずは――」
俺は生活魔法で地面に窪みを作る。
その深さは30センチほど。
「川の深さは1メートルくらいあるから、これで十分、溝を作れば水を排出できるな」
「出来るなって……。その水は――、貯水池に入れる水は精霊魔法で出せってことかい? これだけの広さに水を張ったら、私の魔力は空になるんだが?」
「問題ない」
俺は貯水池に手を翳し、生活魔法である水生成を発動させる。
すると手のひらから、膨大な水がドドドドドドドッと、音を立てて貯水池に流れ込み、10秒ほどで貯水池を満タンにする。
「あ、あんた……、まさか精霊使いという……わけでは……」
「細かい詮索はするな。俺が何をしようとスルーしてくれ」
「……わ、分かったよ」
「エイジさん、すごいです!」
ラウリとは違い、スーニャは感嘆な声を上げていた。
そのあとは、ハッキリ言って作業と言ってよかった。
人工的に作られた川沿いの空き地にラウリに案内されては、貯水池を作り、生活魔法で水を出し貯水池を作っていく。
その繰り返し。
その数は30を超えたところで――、
「エイジ。あんた、本当に何者なんだい?」
「さあな?」
ソルティの話だと、俺はアガルタの世界に存在している人間を作った存在に近いらしいが詳しいことは知らない。
ただ、俺は殆ど魔力を消費せずに生活魔法であらゆる事が出来る。
それだけはたしかだ。
至るところに貯水池を作ったあとは、俺達は最初の建物へと戻る。
理由は簡単だ。
目立ち過ぎた。
まぁ、このへんはラウリがやったと言うことにしておけば問題ないだろう。
「とりあえず、水の確保については、あれで問題ないだろう?」
「問題ないどころか、かなり綺麗な水でビックリしたぞ? エイジ」
「まぁ、俺が作り出す水は川の水よりも綺麗だからな」
生で飲めば腹を下すような水ではない。
日本でならミネラルウォーターで通用するレベルの品質の水を俺は作り出すことができる。
「どうやら、私は、エイジ、お前を侮っていたようだよ」
「そうか?」
俺は、リルカ達が心配だったこともあり椅子に座りながらラウリの言葉に適当に答えておく。
「話半分ってことで、私の話は聞いてないか」
そうラウリは自虐っぷりで話を振ってくる。
「別に聞いてないってわけじゃないぞ? 実りが無いから適当に言葉を返しているだけで」
「それを話を聞いてないというんじゃが!?」
「すまないな。それなりの魔力を使ったからな」
まともに相手にするのもメンドクサイから、適当に話を振っておこう。
それにしても、リルカ達は、俺のことを心配しているだろうな。
心配のしすぎで変な行動を取らなければいいが……。
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