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第三章 王都暗躍編
第104話 王都リーズ(4)
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「――な、何故に! 何故に、その名前を!?」
ああ、やっぱりリムルが関わっているのかー。
まったく、あやつは碌な事をしないな。
「まぁ、話は長くなるが――、色々と暗躍していたんだ。非合理的な行いをしてな。カルーダの冒険者ギルドのギルド長ハロルドの孫だったが、一つの町を崩壊させるような事をしたんだよ」
「――なっ!?」
「まぁ、何とか討伐はしたが……」
「そ、そうなのか……。つまり、この契約書は……」
「リムルが勝手に金を稼ぐために横領した石鹸を、ここに流していたと考えるのが筋だな」
俺は肩を竦める。
まぁ、俺の言葉を、そのまま100%信じてくれるとは思わない。
だが、本当のことを言えば多少は疑念は払拭できるだろう。
「……だ、だが! エイジ、お前の膝は――」
「それは獣人族に治してもらったんだ。教会の連中でも、魔法師でも治すことは出来なかったからな」
「魔法を使う事が出来る獣人がいるのか?」
「ああ」
俺は頷きながら肯定する。
「そ、そうなのか……。そんな珍しい獣人の知り合いがいるとは……」
「俺の話を100%、信じるつもりなのか?」
「信じるかどうかは、お前を取り囲んでいる精霊を見れば分かる。俺を取り囲んでいる精霊?」
そんなのは初めて聞いたな。
「なるほどな。それで、俺の言葉を信じてくれると言う事か」
「ああ。もちろんだ。それよりも、此方が勘違いしていたことの非礼を詫びたい」
ラウリは、頭を下げてくる。
その際に、背中で三つ編みに纏められていた緑色の髪が、ラウリの胸元へと重力に従って落ちてくる。
まぁ、ここで相手の問題点を突いて有利に立ってもいいんだが、ここは恩を売っておくべきだろう。
「気にすることはない。それよりも、悪いと思っているのなら、俺に力を貸して欲しい」
「力を? それは依頼と言う事か?」
「そうなるな」
俺は、エルフの女――、ラウリの言葉に頷く。
「私達に出来ることなんて高が知れているぞ? それでも依頼をしたいと言うのか?」
「もちろんだ。じつは王都に入りたい」
俺の言葉に首を傾げるラウリ。
「どうして、それを私に頼んでくる? エイジなら、冒険者ギルドカードを有しておるだろう? それを提示すれば、王都には入れるはずだが?」
たしかにラウリの言う通り、冒険者ギルドが身分を保証している証としての冒険者ギルドカード、それを門番に見せれば王都リーズの中に入ることは容易だ。
だが、それは同時に俺が敵地のど真ん中に到着したことを相手に伝えることになる。
それは、相手に俺と戦う準備を与えることになってしまうので、俺としては、そこは隠しておきたい。
「ああ。たしかに入れる。だが、俺の命を狙う奴がいるから、それが出来ない」
「ほう……」
俺の言葉に目を細めるラウリ。
その目には、驚きというよりも好奇心という色合いが浮かんでいるのを俺はハッキリと認識していた。
「それは、また面白いことに首を突っ込んでいるみたいだね。エイジ」
「まぁな」
ようやく向こうも本調子になったようで、口調が砕けたモノになった。
「冒険者ギルドメンバーを暗殺か……、それは相手もリスクを背負っていそうだね」
「まあ……な……」
「――と、なるとお前の命を狙っているのは大貴族か――、もしくは……」
「王宮側にいると考えられる」
ラウリが呟いた仮定と、続くように話した俺の考え。
それを聞いた彼女は頷く。
「王宮側に暗殺者を送られるような真似をしたのか? おまえは」
「それは分からん。あと犯人も分かってない。おかげで、コソコソと行動することを強いられていて面倒な状況だ」
「だろうね。――で、あんたは、王宮側――、それに繋がる警備兵や兵士や武官や文官や貴族達に知られないように王都に入りたいということかい」
「出来るか?」
「出来なくはない。出来なくはないが……、王都に王宮から狙われている人間を入れると言う事は、こちらにも多大なリスクがあることを承知しているんだろう? あんたは」
「そうだな」
下手をすれば、壁の外で暮らしている貧民街をエルダ王国側が潰す可能性だってある。
それは相手の立場によるが、現状では敵が誰か分からないのだ。
さすがに二つ返事で協力するとは貧民街の顔役をしているラウリは言えないだろう。
彼女の判断一つで、貧民街の成否が関わってくるからだ。
「無理なら別に断ってくれてもいい」
「石鹸――」
「ん?」
「石鹸1000個で手を打とうじゃないか」
即答――。
しかも、石鹸1000個で手を打つという提案をラウリがしてきた。
俺としては、石鹸は衛生面――、とくに貧民街だと売春などが主な収入源だから、石鹸を重宝すると思い、石鹸で交渉しようと思ったが、どうやら俺が思っていたよりも石鹸の需要はあったらしい。
相手から、交渉の報酬として石鹸を提示してきたのだから、助かったと言えば助かったと言えるが……、実際は、かなり困っていたらしいな。
「了解だ。すぐに用意しよう。前払いとして石鹸は500個、成功報酬として石鹸500個でどうだ? あと、俺の個人情報については一切! 王国側には流さないように情報の徹底はしてくれ」
「そんなのは分かっているよ。なら交渉は成立だね、エイジ」
「ああ。よろしく頼む」
ああ、やっぱりリムルが関わっているのかー。
まったく、あやつは碌な事をしないな。
「まぁ、話は長くなるが――、色々と暗躍していたんだ。非合理的な行いをしてな。カルーダの冒険者ギルドのギルド長ハロルドの孫だったが、一つの町を崩壊させるような事をしたんだよ」
「――なっ!?」
「まぁ、何とか討伐はしたが……」
「そ、そうなのか……。つまり、この契約書は……」
「リムルが勝手に金を稼ぐために横領した石鹸を、ここに流していたと考えるのが筋だな」
俺は肩を竦める。
まぁ、俺の言葉を、そのまま100%信じてくれるとは思わない。
だが、本当のことを言えば多少は疑念は払拭できるだろう。
「……だ、だが! エイジ、お前の膝は――」
「それは獣人族に治してもらったんだ。教会の連中でも、魔法師でも治すことは出来なかったからな」
「魔法を使う事が出来る獣人がいるのか?」
「ああ」
俺は頷きながら肯定する。
「そ、そうなのか……。そんな珍しい獣人の知り合いがいるとは……」
「俺の話を100%、信じるつもりなのか?」
「信じるかどうかは、お前を取り囲んでいる精霊を見れば分かる。俺を取り囲んでいる精霊?」
そんなのは初めて聞いたな。
「なるほどな。それで、俺の言葉を信じてくれると言う事か」
「ああ。もちろんだ。それよりも、此方が勘違いしていたことの非礼を詫びたい」
ラウリは、頭を下げてくる。
その際に、背中で三つ編みに纏められていた緑色の髪が、ラウリの胸元へと重力に従って落ちてくる。
まぁ、ここで相手の問題点を突いて有利に立ってもいいんだが、ここは恩を売っておくべきだろう。
「気にすることはない。それよりも、悪いと思っているのなら、俺に力を貸して欲しい」
「力を? それは依頼と言う事か?」
「そうなるな」
俺は、エルフの女――、ラウリの言葉に頷く。
「私達に出来ることなんて高が知れているぞ? それでも依頼をしたいと言うのか?」
「もちろんだ。じつは王都に入りたい」
俺の言葉に首を傾げるラウリ。
「どうして、それを私に頼んでくる? エイジなら、冒険者ギルドカードを有しておるだろう? それを提示すれば、王都には入れるはずだが?」
たしかにラウリの言う通り、冒険者ギルドが身分を保証している証としての冒険者ギルドカード、それを門番に見せれば王都リーズの中に入ることは容易だ。
だが、それは同時に俺が敵地のど真ん中に到着したことを相手に伝えることになる。
それは、相手に俺と戦う準備を与えることになってしまうので、俺としては、そこは隠しておきたい。
「ああ。たしかに入れる。だが、俺の命を狙う奴がいるから、それが出来ない」
「ほう……」
俺の言葉に目を細めるラウリ。
その目には、驚きというよりも好奇心という色合いが浮かんでいるのを俺はハッキリと認識していた。
「それは、また面白いことに首を突っ込んでいるみたいだね。エイジ」
「まぁな」
ようやく向こうも本調子になったようで、口調が砕けたモノになった。
「冒険者ギルドメンバーを暗殺か……、それは相手もリスクを背負っていそうだね」
「まあ……な……」
「――と、なるとお前の命を狙っているのは大貴族か――、もしくは……」
「王宮側にいると考えられる」
ラウリが呟いた仮定と、続くように話した俺の考え。
それを聞いた彼女は頷く。
「王宮側に暗殺者を送られるような真似をしたのか? おまえは」
「それは分からん。あと犯人も分かってない。おかげで、コソコソと行動することを強いられていて面倒な状況だ」
「だろうね。――で、あんたは、王宮側――、それに繋がる警備兵や兵士や武官や文官や貴族達に知られないように王都に入りたいということかい」
「出来るか?」
「出来なくはない。出来なくはないが……、王都に王宮から狙われている人間を入れると言う事は、こちらにも多大なリスクがあることを承知しているんだろう? あんたは」
「そうだな」
下手をすれば、壁の外で暮らしている貧民街をエルダ王国側が潰す可能性だってある。
それは相手の立場によるが、現状では敵が誰か分からないのだ。
さすがに二つ返事で協力するとは貧民街の顔役をしているラウリは言えないだろう。
彼女の判断一つで、貧民街の成否が関わってくるからだ。
「無理なら別に断ってくれてもいい」
「石鹸――」
「ん?」
「石鹸1000個で手を打とうじゃないか」
即答――。
しかも、石鹸1000個で手を打つという提案をラウリがしてきた。
俺としては、石鹸は衛生面――、とくに貧民街だと売春などが主な収入源だから、石鹸を重宝すると思い、石鹸で交渉しようと思ったが、どうやら俺が思っていたよりも石鹸の需要はあったらしい。
相手から、交渉の報酬として石鹸を提示してきたのだから、助かったと言えば助かったと言えるが……、実際は、かなり困っていたらしいな。
「了解だ。すぐに用意しよう。前払いとして石鹸は500個、成功報酬として石鹸500個でどうだ? あと、俺の個人情報については一切! 王国側には流さないように情報の徹底はしてくれ」
「そんなのは分かっているよ。なら交渉は成立だね、エイジ」
「ああ。よろしく頼む」
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