おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第102話 王都リーズ(2)

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「ご主人様、どうですかにゃん?」
「ああ。間違いない。エルダ王国の王都リーズに到着したようだな。ディアナ、幌馬車だが、向こうに走らせてくれ」
 
 俺は、指先を城壁ではなく、その手前のみすぼらしい掘っ立て小屋が立ち並ぶ方へと向ける。
 
「向こうですかにゃん?」
「ああ。このまま王都に行ってもいいんだが、一応、保険はかけておきたいからな」
 
 俺の指示に頷いたディアナは、貧民街へと向けて馬車を走らせる。
 3時間も経ったところで、馬車は貧民街入口に到着する。
 
「ご主人さま……ここは……」
 
 鼻を押さえながら、聞いてくるディアナ。
 
「ここはエルダ王国の貧民街だ。城壁の中だと、どうしても土地に限りがあるからな」
「限りがある?」
 
 ディアナの疑問に俺は頷く。
 
「先ほども説明した通り、城壁の中は土地が限られている。よって新しい建築物を建てることができない。だから、臨時というか仮住まいとして、王都リーズの城壁外に住むことをエルダ王国側は許可している」
「でも、ご主人様、人口が増えただけとは思えないほどの建物の数がありますにゃん」
「それは、獣人族との戦争が原因だからな……」
「それって……」
「ああ。戦争で稼ぎ手を失って城壁内で支払う税金が払えなくなった人達が住み着いているんだ」
「そうにゃんですか……」
 
 まぁ、一番の問題は仮住まいということで、インフラなどがまったく整備されていないことだ。特に上下水道が設置されていないので、衛生面は最悪と言っていい。
 それは、まさしく、ひと昔前のヨーロッパ並みと言えば分かるかもしれない。
 
「やっぱり獣人族には、匂いはきついか?」
「はいにゃん」
「それなら、少し貧民街から離れた森の中に行くとするか」
「了解にゃん」
 
 ディアナは、一刻も早く、その場から立ち去りたいのか迅速に元・幌馬車を王都リーズから離れた森の中へと隠す。
 そして到着し、馬車から降りるなり何度も深呼吸を繰り返す。
 
「大丈夫か? ディアナ」
「はいにゃん。あと1分いたら気絶するところでしたにゃん」
「そんなにか!?」
 
 頷くディアナ。
 そんな彼女の様子に、俺はリルカとエルナのことも気になり馬車の中を見る。
 すると、リルカとエルナも匂いにやられたのか気絶していた。
 どうやら、山猫族よりも狐耳族の方が匂いには敏感だったらしい。
 
「仕方ないな……。これは、完全に俺のミスだ。ディアナ、お前はエルナやリルカと一緒に、ここで待機していてくれ」
「ご主人様はどこに?」
「俺は貧民街で会って来たい男がいるから、少し貧民街に行ってくる」
「大丈夫ですかにゃん? 貧民街という言葉は聞いた覚えがあるんゃん。何でも悪事が横行する場所だと聞いたにゃん」
「問題ない。俺は、貧民街では少しは顔が売れているからな。それよりもリルカとエルナの護衛をきちんとしてくれ」
「わかりましたにゃん」
 
 気絶している二人のことをディアナに任せて俺は貧民街へと向かう。
 元・幌馬車を隠した森から歩くこと30分ほどで、先ほど、入らずに立ち去った貧民街の入り口に到着する。
 俺は、貧民街に向けて歩き出す。
 すると、いくつも刺すような視線が自身に向けられている事に気が付く。
 どうやら、俺に興味深々のようだ。
 そして、さらに貧民街に向けて歩くと、目の前にチンピラ風の男が3人立ち塞がる。
 
「おいおい。おっさん! 誰の許可を得て! ここから先に行こうとしているんだ? ここが何処か分かっているんだろうな? 通りたいなら出す物があんだろ?」
 
 世紀末の覇者の世界に出てくるようなモヒカンに肩パットをつけた男が、俺に絡んでくる。
 どうやら新入りのようだ。
 
「出す物か……」
「そうそう。出す物を出してくれないとな! ひひひひっ」
 
 俺は手のひらを男に向ける。
 そして――、
 
「石鹸を錬成!」
 
 俺の手のひらから高速で打ち出された3個の石鹸はすさまじい速さで男達の口目掛けて飛翔すると、男達の口の中に入っていく。
 すると、すぐに泡を吹きながら前のめりに男達が倒れていく。
 
「ふっ、峰打ちだ」
 
 口から泡を吹いている男3人の横を通り過ぎると――、拍手の音が頭上から降ってくる。
 それと共に、20人ほどの大男を従えた人物が姿を現す。
 
「相変わらずだね、エイジ・カンダ」
「ふっ。ひさしぶりだな。顔役の婆さん」
「婆さんじゃない! ラウネって名前があるし! それに、アタイは、まだ130代だよ!」
「そうだったか?」
「そうだよ! それよりもエイジ! あんた、何しにきたんだい?」
「何しに来たって言われてもな……。石鹸を持ってきたとしか言いようがないな」
「石鹸を!? ど、どこに?」
 
 俺の言葉に血相を変える目鼻のいい女に、俺は肩を竦めながら――、
 
「ラウネ、まずは石鹸を渡す前に話を聞いてもらいたい」
「なるほどね。つまり、石鹸が欲しければ対話をしろ――、と、いうことかい?」
「ご明察だ」
「――ちっ! 仕方ないね! ついてきな! アジトまで案内するから」
 
 ラウネ。
 彼女はエルフ族の一人で年齢は130歳。
 エルフ族の中で見れば、子供と言って差し障りのない年齢だ。
 
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