おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第101話 王都リーズ(1)

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リンゼントの町を出立してから1日が経過し、王都リーズへと続く街道を真っ直ぐに進んでいると――、
 
「ご主人様、また複数の馬の集団が向かってくる音がするにゃん」
「そうか。リルカ、エルナ、藁の中へ入るぞ」
「分かりました」
「わかったでしゅ!」
 
 そそくさと、俺達は藁の中へと入る。
 しばらくすると、俺達の元・幌馬車の横を、馬に乗った騎士団一行が通り過ぎていく。
 
「エイジさん。ずいぶんと騎士の方たちが、街道を通るようになりましたね」
「そうだな」
 
 俺は、麦藁の中に隠れながらリルカの問いかけに答える。
 偽装工作をして出発してから10時間が経過したころから、街道を騎士団の一団が巡回する回数が明らかに増えていた。
 むしろ、俺が冒険者をしていた頃――、まぁ今も冒険者ではあるが、膝に矢を受ける前は、街道を国や貴族お抱えの騎士や兵士が巡回することなんて稀だった。
 それが一時間に一回は巡回に出会うと言う事は、明らかに異常であり、何かを探しているというのは明白。
 
「それにしてもしつこいですよね」
「まぁ、俺達を探しに出たリンゼント男爵の騎士団が行方不明になっているんだ。普通に考えれば俺達と接敵して全滅したと考えるのが普通だからな。それに騎士団の中には貴族の血縁者が含まれている事もある。そうなると、私財をはたいて追っ手を差し向けてくる可能性もある」
「面倒なのですね。いっその事、追っ手を全て殲滅する事は?」
「出来なくはないが……、そうなると国を敵に回しかねないからな」
 
 おそらく俺の立場は、エルダ王国の王宮内では、ニードルス伯爵領の領主と言う事になっているのだろう。
そして、ニードルス伯爵領は、エルダ王国側からは、伯爵位を取り上げられているはず。
ただ、それは王宮側としては――、のはずなので対外的には伯爵のままだと思う。
つまり、王宮側ではニードルス伯爵領は、エルダ王国からは外して考えてはいるが、王宮の外には、未だに伯爵という事にしているのだろう。
 
その王宮内と、王宮の外との意識の差が、いま俺が置かれている現状を作り出していると言っていい。
つまりダブルスタンダードをしたら、貴族派の連中が誤解をしていると言う事だ。
 そして、俺としても、そこは訂正できる立場を有していない。
 何せ、貴族連中のパイプがスザンナしか持ってないからだ。
 こんなことならスザンナを連れてくれば――と、思ったが、それはもう遅い。
 
「――それでは、これからどうするのですか?」
「とりあえず、王都リーズの冒険者ギルドマスターに会う」
「冒険者ギルドマスターですか。たしかに、ギルドマスターなら貴族や王宮にコネがありますからね」
「ああ」
 
 リルカの言葉に俺は頷く。
 王都の冒険者ギルドは、半分は国営みたいなモノだ。
 つまり王国から出資されているギルドであり、独立採算制をとってはいるが、国側も冒険者ギルドにある程度の発言権は有している。
 それは、王国と冒険者ギルドは資金面では繋がっているとの証であり、強力な武力を持つ冒険者ギルドを支配下に有しているという証を喧伝しているのと同じだ。
 
 よって何か重要な事件や魔物が集団行動を起こした時、国の騎士団や兵士だけで対応できない場合は国からの命令で冒険者ギルドは冒険者を収集することができる。
 
「まぁ、問題は、ガルガンが此方の話を聞くかどうかだな」
「ガルガンって……、元・Sランク冒険者の?」
「リルカは知っているのか」
「知っているも何も……、レッサードラゴンを一人で倒した冒険者ですよね?」
「そうだな……」
「神田しゃん」
「どうした? エルナ」
「レッサードラゴンって、何でしゅか?」
「ああ。ドラゴンの劣化バージョンだな」
「レッドドラゴンと、どっちが強いでしゅか?」
「レッドドラゴンの方が10倍以上は強いな」
「それなら神田しゃんの方が強いでしゅ?」
「それは、どうだろうな……。俺がレッドドラゴンを倒せたのは、みんなの力を借りれた事と運要素が強かったからな……」
「そうなんでしゅか?」
「ああ。それに冒険者ギルドマスターと戦ったら、王宮側に働きかけてくれなくなるから、それは避けたいし」
「そうでしゅか……」
 
 まったく、俺が冒険者ギルドマスターと戦う可能性があるようなフラグを建てるのは止めてほしい。
 それに俺が王都リーズで冒険者をしていた頃、ガルガンは何かと俺のことを目に掛けてくれたからな。
 石鹸を作れるようになってから売り込んでくれたのも、脳筋のガルガンのおかげだった事も多いし。
 
「まぁ、知らない仲じゃないから何とかなるはずだ」
 
 
 
 幌馬車は、それから3日間、王都リーズへ向けて走り続ける。
 その間も騎士団一向が通りすぎたが、まったく俺達に気が付く気配はなかった。
 どうやら偽装工作は完璧だったらしい。
 
「ご主人様。巨大な壁が見えてきました」
「本当か?」
 
 俺は麦藁の中から頭を出して元・幌馬車が向かう先へと視線を向ける。
 すると高さ5メートルほどの壁と、巨大な白亜な城が目に飛び込んできた。
 
 
 
 
 
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