おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第97話 王都リーズへ出立

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 食事を摂ったあと、食糧を買い揃え――、台車3台分の物資を買い漁ったところで――、
 
「それじゃ、あとは馬車に載せるだけ……」
「どうかしましたか? エイジさん」
 
 途中で、俺は気が付き口を閉じていた。
 それに気が付いたリルカが語り掛けてきたが――、
 
「リルカ」
「はい!」
「ディアナのことをすっかり忘れていた」
「あ――」
「い……」
 
 リルカとエルナが、そこでようやく思い出したのかハッとした表情をしたが、すでに日は沈みかけている。
 つまり、10時間以上、馬車でディアナを待たせていることになる。
 これは、弁明の余地はないな。
 
「まぁ、エイジさん」
「何だ? リルカ?」
「そこまで、奴隷に関して気にしなくてもいいと思います。獣人族は、数日食べないくらいで死にはしませんし、何より奴隷は一日くらい食事を抜かれるのは当然ですし、正妻である私の用事だと言えば、その下の雌は納得しますから!」
 
 いや、さすがに、俺の良心が痛むからキチンと食糧を買っていくとしよう。
 それにしても獣人族は上下関係が厳しいな。
 俺は、すぐに屋台に戻り焼かれた肉や、パンなどを買い込む。
 そして、リルカとエルナの所へと戻る。
 
「待たせたな。それじゃ、この台車を見て置いてくれ。市場の外にある馬車停留所まで、幌馬車をもってくるから」
「分かりました。それでは、待っています」
 
 市場には、人間族の方が入りやすいこともあり、俺は二人を置いて泊まっている宿まで走る。
 宿に到着したあとは、宿代と幌馬車の駐車料を払い、宿の裏手へと移動する。
 
「ディアナ! 待たせたな!」
 
 俺は、御者席でぐったりとして寝ている山猫族のディアナに声をかける。
 すると、ディアナは、丸めて寝ていた体を猫のようにピン! と、背中を張り詰めると、俺へと視線を向けてくる。
 
「ご主人様。待っていました」
「ああ。待たせてしまって、すまないな。少し買い物に時間がかかってな」
「問題ないですにゃん。それよりも、リルカ様とエルナ様の姿が見えないけど……」
「二人とも市場で待っているから、すぐに移動するとしよう。かなりの荷物を買い込んだから、手では持ってこれなかったからな」
「そうですか……。――では、ご主人様、乗ってくださいにゃん」
「ああ」
 
 御者席の横に座ったあと、ディアナが巧みに馬を操り、馬車を移動させる。
 通りに出たあとは市場へと向けて少し早めに馬車を走らせ、市場の荷下ろしを行う専用の馬車停留所へと入る。
 ジロジロと行商人などから視線を向けられるが、それは全てディアナに向けられたモノで、俺が横に座っているのを見ると感心を失ったのが分かるくらい視線を逸らしていく。
 理由は簡単で、御者席に獣人というか奴隷を座らせて横に座って楽をする行商人は数多くいるからだ。
 つまり、よくある風景の一つということで、行商人や商人が認識したに他ならない。
 
「ご主人様。どのへんに?」
「あー、あのへんだな」
 
 俺は、指を指す。
 すると、俺の指の先を見たディアナが目を細める。
 
「分かりました。――では、市場の荷下ろしの入り口あたりまで幌馬車を移動します」
「ああ。頼む。俺は、リルカとエルナに伝えてくるから」
「はい」
 
 頷いたディアナを見たあと、俺は幌馬車から飛び降りて市場の方へと走っていく。
 
「リルカ! エルナ!」
「エイジさん!」
「神田しゃん!」
「二人とも待たせたな。幌馬車を持ってきたから、台車を商品の荷下ろしの場所まで移動するとしよう」
「はい! 分かりました!」
「わかったでしゅ!」
 
 3人で、大量の食材や部材、調理器具が乗った台車を移動する。
 そして、幌馬車に到着したあとは荷物を載せていく。
 
「ご主人様、かなり買われたんですね」
「まあな。開拓村でも使うからな。必要経費ってやつだ」
「にゃるほど」
 
 全ての荷物を積み込んだところで――、
 
「ディアナ。コレ、お前の食事な」
「リルカ様とエルナ様の分は?」
「俺達は、もう食べたから、これはディアナの分だ。町から出るのは、俺がやっておくから、お前は幌馬車の中で食事をしておいてくれ」
「――え? いいのですか?」
「もちろんだ。町を出たら、ディアナの操作で王都リーズまで移動だからな」
「わ、分かりました。それでは、遠慮なく食べさせてもらいます」
 
 俺から食料を受け取ったディアナは幌馬車の中に入っていく。
 
「さて――、行くとするか……」
 
 俺は馬の手綱を手にとり、馬車を走らせる。
 大通りに出たあとは北に向かって――、しばらく走らせると、最初に俺達の町への出入りを許可した兵士と顔を合わせた。
 俺は冒険者ギルドカードを取り出し、兵士に渡す。
 
「よし、行ってよし!」
「では、失礼します」
 
 人間同士ということ――、そして冒険者ギルドカードという冒険者ギルドが後ろ盾にある事もあり、ほとんどフリーパスで町から出る事が出来た。
 町を出て30分ほどが経過したところで、食事を摂り終えたディアナが幌馬車から出てくる。
 
「ご主人様。代わります」
「ああ、任せた」
 
 俺はディアナに手綱を渡し、地図を開く。
 
 
 
 
 
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