97 / 190
第三章 王都暗躍編
第97話 王都リーズへ出立
しおりを挟む
食事を摂ったあと、食糧を買い揃え――、台車3台分の物資を買い漁ったところで――、
「それじゃ、あとは馬車に載せるだけ……」
「どうかしましたか? エイジさん」
途中で、俺は気が付き口を閉じていた。
それに気が付いたリルカが語り掛けてきたが――、
「リルカ」
「はい!」
「ディアナのことをすっかり忘れていた」
「あ――」
「い……」
リルカとエルナが、そこでようやく思い出したのかハッとした表情をしたが、すでに日は沈みかけている。
つまり、10時間以上、馬車でディアナを待たせていることになる。
これは、弁明の余地はないな。
「まぁ、エイジさん」
「何だ? リルカ?」
「そこまで、奴隷に関して気にしなくてもいいと思います。獣人族は、数日食べないくらいで死にはしませんし、何より奴隷は一日くらい食事を抜かれるのは当然ですし、正妻である私の用事だと言えば、その下の雌は納得しますから!」
いや、さすがに、俺の良心が痛むからキチンと食糧を買っていくとしよう。
それにしても獣人族は上下関係が厳しいな。
俺は、すぐに屋台に戻り焼かれた肉や、パンなどを買い込む。
そして、リルカとエルナの所へと戻る。
「待たせたな。それじゃ、この台車を見て置いてくれ。市場の外にある馬車停留所まで、幌馬車をもってくるから」
「分かりました。それでは、待っています」
市場には、人間族の方が入りやすいこともあり、俺は二人を置いて泊まっている宿まで走る。
宿に到着したあとは、宿代と幌馬車の駐車料を払い、宿の裏手へと移動する。
「ディアナ! 待たせたな!」
俺は、御者席でぐったりとして寝ている山猫族のディアナに声をかける。
すると、ディアナは、丸めて寝ていた体を猫のようにピン! と、背中を張り詰めると、俺へと視線を向けてくる。
「ご主人様。待っていました」
「ああ。待たせてしまって、すまないな。少し買い物に時間がかかってな」
「問題ないですにゃん。それよりも、リルカ様とエルナ様の姿が見えないけど……」
「二人とも市場で待っているから、すぐに移動するとしよう。かなりの荷物を買い込んだから、手では持ってこれなかったからな」
「そうですか……。――では、ご主人様、乗ってくださいにゃん」
「ああ」
御者席の横に座ったあと、ディアナが巧みに馬を操り、馬車を移動させる。
通りに出たあとは市場へと向けて少し早めに馬車を走らせ、市場の荷下ろしを行う専用の馬車停留所へと入る。
ジロジロと行商人などから視線を向けられるが、それは全てディアナに向けられたモノで、俺が横に座っているのを見ると感心を失ったのが分かるくらい視線を逸らしていく。
理由は簡単で、御者席に獣人というか奴隷を座らせて横に座って楽をする行商人は数多くいるからだ。
つまり、よくある風景の一つということで、行商人や商人が認識したに他ならない。
「ご主人様。どのへんに?」
「あー、あのへんだな」
俺は、指を指す。
すると、俺の指の先を見たディアナが目を細める。
「分かりました。――では、市場の荷下ろしの入り口あたりまで幌馬車を移動します」
「ああ。頼む。俺は、リルカとエルナに伝えてくるから」
「はい」
頷いたディアナを見たあと、俺は幌馬車から飛び降りて市場の方へと走っていく。
「リルカ! エルナ!」
「エイジさん!」
「神田しゃん!」
「二人とも待たせたな。幌馬車を持ってきたから、台車を商品の荷下ろしの場所まで移動するとしよう」
「はい! 分かりました!」
「わかったでしゅ!」
3人で、大量の食材や部材、調理器具が乗った台車を移動する。
そして、幌馬車に到着したあとは荷物を載せていく。
「ご主人様、かなり買われたんですね」
「まあな。開拓村でも使うからな。必要経費ってやつだ」
「にゃるほど」
全ての荷物を積み込んだところで――、
「ディアナ。コレ、お前の食事な」
「リルカ様とエルナ様の分は?」
「俺達は、もう食べたから、これはディアナの分だ。町から出るのは、俺がやっておくから、お前は幌馬車の中で食事をしておいてくれ」
「――え? いいのですか?」
「もちろんだ。町を出たら、ディアナの操作で王都リーズまで移動だからな」
「わ、分かりました。それでは、遠慮なく食べさせてもらいます」
俺から食料を受け取ったディアナは幌馬車の中に入っていく。
「さて――、行くとするか……」
俺は馬の手綱を手にとり、馬車を走らせる。
大通りに出たあとは北に向かって――、しばらく走らせると、最初に俺達の町への出入りを許可した兵士と顔を合わせた。
俺は冒険者ギルドカードを取り出し、兵士に渡す。
「よし、行ってよし!」
「では、失礼します」
人間同士ということ――、そして冒険者ギルドカードという冒険者ギルドが後ろ盾にある事もあり、ほとんどフリーパスで町から出る事が出来た。
町を出て30分ほどが経過したところで、食事を摂り終えたディアナが幌馬車から出てくる。
「ご主人様。代わります」
「ああ、任せた」
俺はディアナに手綱を渡し、地図を開く。
「それじゃ、あとは馬車に載せるだけ……」
「どうかしましたか? エイジさん」
途中で、俺は気が付き口を閉じていた。
それに気が付いたリルカが語り掛けてきたが――、
「リルカ」
「はい!」
「ディアナのことをすっかり忘れていた」
「あ――」
「い……」
リルカとエルナが、そこでようやく思い出したのかハッとした表情をしたが、すでに日は沈みかけている。
つまり、10時間以上、馬車でディアナを待たせていることになる。
これは、弁明の余地はないな。
「まぁ、エイジさん」
「何だ? リルカ?」
「そこまで、奴隷に関して気にしなくてもいいと思います。獣人族は、数日食べないくらいで死にはしませんし、何より奴隷は一日くらい食事を抜かれるのは当然ですし、正妻である私の用事だと言えば、その下の雌は納得しますから!」
いや、さすがに、俺の良心が痛むからキチンと食糧を買っていくとしよう。
それにしても獣人族は上下関係が厳しいな。
俺は、すぐに屋台に戻り焼かれた肉や、パンなどを買い込む。
そして、リルカとエルナの所へと戻る。
「待たせたな。それじゃ、この台車を見て置いてくれ。市場の外にある馬車停留所まで、幌馬車をもってくるから」
「分かりました。それでは、待っています」
市場には、人間族の方が入りやすいこともあり、俺は二人を置いて泊まっている宿まで走る。
宿に到着したあとは、宿代と幌馬車の駐車料を払い、宿の裏手へと移動する。
「ディアナ! 待たせたな!」
俺は、御者席でぐったりとして寝ている山猫族のディアナに声をかける。
すると、ディアナは、丸めて寝ていた体を猫のようにピン! と、背中を張り詰めると、俺へと視線を向けてくる。
「ご主人様。待っていました」
「ああ。待たせてしまって、すまないな。少し買い物に時間がかかってな」
「問題ないですにゃん。それよりも、リルカ様とエルナ様の姿が見えないけど……」
「二人とも市場で待っているから、すぐに移動するとしよう。かなりの荷物を買い込んだから、手では持ってこれなかったからな」
「そうですか……。――では、ご主人様、乗ってくださいにゃん」
「ああ」
御者席の横に座ったあと、ディアナが巧みに馬を操り、馬車を移動させる。
通りに出たあとは市場へと向けて少し早めに馬車を走らせ、市場の荷下ろしを行う専用の馬車停留所へと入る。
ジロジロと行商人などから視線を向けられるが、それは全てディアナに向けられたモノで、俺が横に座っているのを見ると感心を失ったのが分かるくらい視線を逸らしていく。
理由は簡単で、御者席に獣人というか奴隷を座らせて横に座って楽をする行商人は数多くいるからだ。
つまり、よくある風景の一つということで、行商人や商人が認識したに他ならない。
「ご主人様。どのへんに?」
「あー、あのへんだな」
俺は、指を指す。
すると、俺の指の先を見たディアナが目を細める。
「分かりました。――では、市場の荷下ろしの入り口あたりまで幌馬車を移動します」
「ああ。頼む。俺は、リルカとエルナに伝えてくるから」
「はい」
頷いたディアナを見たあと、俺は幌馬車から飛び降りて市場の方へと走っていく。
「リルカ! エルナ!」
「エイジさん!」
「神田しゃん!」
「二人とも待たせたな。幌馬車を持ってきたから、台車を商品の荷下ろしの場所まで移動するとしよう」
「はい! 分かりました!」
「わかったでしゅ!」
3人で、大量の食材や部材、調理器具が乗った台車を移動する。
そして、幌馬車に到着したあとは荷物を載せていく。
「ご主人様、かなり買われたんですね」
「まあな。開拓村でも使うからな。必要経費ってやつだ」
「にゃるほど」
全ての荷物を積み込んだところで――、
「ディアナ。コレ、お前の食事な」
「リルカ様とエルナ様の分は?」
「俺達は、もう食べたから、これはディアナの分だ。町から出るのは、俺がやっておくから、お前は幌馬車の中で食事をしておいてくれ」
「――え? いいのですか?」
「もちろんだ。町を出たら、ディアナの操作で王都リーズまで移動だからな」
「わ、分かりました。それでは、遠慮なく食べさせてもらいます」
俺から食料を受け取ったディアナは幌馬車の中に入っていく。
「さて――、行くとするか……」
俺は馬の手綱を手にとり、馬車を走らせる。
大通りに出たあとは北に向かって――、しばらく走らせると、最初に俺達の町への出入りを許可した兵士と顔を合わせた。
俺は冒険者ギルドカードを取り出し、兵士に渡す。
「よし、行ってよし!」
「では、失礼します」
人間同士ということ――、そして冒険者ギルドカードという冒険者ギルドが後ろ盾にある事もあり、ほとんどフリーパスで町から出る事が出来た。
町を出て30分ほどが経過したところで、食事を摂り終えたディアナが幌馬車から出てくる。
「ご主人様。代わります」
「ああ、任せた」
俺はディアナに手綱を渡し、地図を開く。
7
お気に入りに追加
609
あなたにおすすめの小説
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる