おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第96話 ごはんっ!

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「それでは、村で使う調理器具などを購入してもいいですか?」
 
 そういえば、村で使っている調理器具って、以前に買い揃えたモノだったな。
 奴隷が増えた今の村では調理器具を追加で購入した方がいいよな。
 それに、今後、町に入れるか分からなくなるし、自分の村の分くらいは購入しておいた方がいいだろう。
 
「そうですね。纏めて購入しておきましょうか」
「はい!」
「神田しゃん! お皿も必要でしゅ!」
「そうだな。じゃ、この際、必要なモノは全部買っていくか!」
 
 3人で市場を見て回る。
 包丁や鍋におたまと言った調理器具に始まり、トンカチやノコギリと言った金属製の建築用の道具。
 さらにお皿やスプーンやフォークなども人数分購入していく。
 20人分プラス、居候の分も合わせると――、必然的に台車に乗せて移動する事になってしまった。
 市場で商品納入の為に使う台車を押しながら――、
 
「かなりの量になってしまいましたね」
 
 そう、隣を歩いているリルカが話しかけてくる。
 たしかに彼女の言う通り、すごい量になってしまった。
 台車には木箱に入った戦利品が山のように積まれている。
 
「あとは、食糧の購入だな」
「はいっ!」
「神田しゃん! 肉焼きがあるでしゅ!」
 
 エルナが、少し離れた場所から叫んでくる。
 
「もう! エルナったら!」
「気にしなくていいですよ。それよりも、俺達も飯にしますか。もうお昼も過ぎていますし」
「そうですか?」
「はい。子供に食事をさせるのも大人の役目ですから」
「神田しゃん!」
「はいはい。今行くから――」
 
 俺は台車を押しながら、リルカと共にフードコートとも言えるような開けた場所へと移動する。
 テーブルの椅子が置かれている場所に台車を置く。
 
「こっちでしゅ! おねえしゃん! 神田しゃん!」
「もう、エルナったら――」
「リルカ、今日は、王都リーゼに行く前の気分転換だから、色々なモノを食べよう」
「神田しゃん、わかっているでしゅ!」
 
 エルナが飛び跳ねながら手を振ってくる。
 俺は、肉を焼いている店長へと視線を向ける。
 すると店長の50代近くの親父さんが何かを察したのか――、
 
「お嬢ちゃん、よかったね!」
 
 そう、エルナに話しかけた。
 
「でしゅ! 神田しゃん!」
「どうした? エルナ」
「お肉っ!」
「そうだな……。親父さん」
「へい!」
「売っている肉を全て焼いてくれ」
「ぜ、全部ですかい?」
「ああ。全部だ」
 
 まぁ、全部と言っても、そこまでの量ではないからな。
 すでに昼の時間も過ぎている事だし、丁度いいとも言えるな。
 
「それじゃ焼くから、少し待っていてくれ」
「エルナ、俺が受け取るからリルカと一緒にテーブルで待っていてくれ」
「了解でしゅ! おねえしゃん、いくでしゅ!」
「はいはい」
 
 微笑みながら、リルカはエルナと共に屋台前から、テーブルの方へと歩いていく。
 その後ろ姿を見ながら、俺は屋台の方へと向き直った。
 焼かれた肉を受け取ったあとは、テーブルへと戻る。
 
「昼にしよう」
「でしゅ!」
「あの、エイジさん」
「ん? どうした?」
「私、何かを忘れているような気がしているのですが……」
「何かを?」
「はい。何か大事なことを忘れている気が……」
「うーん。気のせいじゃないですか」
「そうですかね」
「神田しゃん! 神田しゃん! ごはんっ!」
「おっと、そうだったな」
 
 屋台の店長から渡された焼かれた肉をテーブルの上に置き――、
 
「頂きます」
 
 俺は手を合わせて日本風に食事を始める作法を行う。
 
「いただきましゅ!」
「いただきます」
 
 何時も通り、エルナもリルカも俺に習って手を合わせる。
 そして、食事を始める。
 もちろん、エルナもリルカも大食漢ということもあり、一瞬で屋台の店長から渡されたお肉が平らげられた。
 
「ほら、旦那。追加で焼けたぞ。それにしても獣人族だけあって食べる量がすごいな」
「まぁ……な。店長、どんどん焼いてくれ」
「おう、任せておけ」
 
 次々と店長が焼いては、肉を持ってくる。
 テーブルの上に並べられていく肉の数々。
 それは常人では、簡単には食べる事が出来ないほどの量ではあったが――、あっと言う間に、肉が消えていく。
 
「……」
 
 俺は無言で消えていく肉を見ながら、他の屋台へと視線を向ける。
 このペースでは、肉の供給が間に合わない。
 他の屋台でも飯を購入しておくか。
 
「店長、肉は全部テーブルに並べておいてくれ」
「あいよ!」
「エイジさん、大丈夫ですか? 支払いとか……」
「問題ないので、リルカも好きなだけ食べてください。まだまだ、もってくるので」
「はい!」
 
 あっと言う間に、テーブルの上に置かれている肉が消える。
 もちろん犯人はエルナで、凄まじい速度でもぐもぐしている。
 
「おいしいでしゅ! いくらでも食べられる気がするでしゅ!」
 
 ――いや、実際、3キロくらい肉を喰っているからな。
 底なしとも言える量で食べている姿を見るとエルナの食事の量は底なしなのでは? と、思わず心の中で突っ込みを入れたくなる。
 
 
 
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