おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第三章 王都暗躍編

第93話 獣人族の常識

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 なんということだ……。
 そんな事情を知っていたら、頭を撫でるような行為はしなかったというのに……。
 ――いや、それは今さらか。
 郷に入っては郷に従えというし。
 それにしても……、獣人族の習慣おそるべし。
 
「そ、そうなのか……。納得はできないが、理解はした」
 
 一応、日本で暮らしてきた一般人として、中学生に行くか行かないかくらいの子供を抱くという常識は持ち合わせはいない俺としては、理解することは出来たが、納得することは出来なかった。
 ただ、リルカ達、獣人族の理を真っ向から否定するのも良くないとは思っている。
 なにせ、リルカは、俺の妻なのだから、妻の考えを肯定するのも夫の務めだろう。
 
「エイジさん。それでは、妹が発情したら抱いて頂けると言う事でいいのでしょうか?」
「どうして、そこで再確認してくるような聞き方をしてくるんだ?」
「だって、妹に知らせないといけませんから」
「そのへんは隠さないのか?」
「匂いで分かりますから! 隠す意味は、殆どないと思います」
 
 たしかに獣人族は匂いに敏感だから、そういう風に言われると「なるほどな!」と、頷くことしかできないな!
 
「しかし日本だったら完全に事案だぞ!」
「えっと……、日本とは?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
 
 あまりにショックなあまり気が付けば言葉が口から出ていた。
 
「そうですか。それで、妹が成人したら、雄として躾けてくれると言う事でいいのでしょうか? エイジさんが、ご負担に思われるようでしたら、私も妹を躾けるのを手伝いますから、安心していいです」
 
 これまたサラリと自分の妹を躾けるというとんでもないパワーワードを出してきたな。
 それにしても、そんなに躾けることは大事なのか。
 
「そ、そうだな。その時になったら――、おいおいとな」
 
 こう答えるしかできない。
 
「そういえば、エルナは何歳なんだ?」
「今年で11歳になります! 12歳になれば、体は成熟しますので!」
「そういう話を聞いたわけではないんだがな!」
 
 そういえば、昔の日本でも元服は12歳から17歳の間だったな。
 もしかしたら医療技術が未発達な世界だと早めに結婚するのが、異世界でも普通なのかも知れない。 
 
「――それでは、どうして妹のことを聞いたのですか?」
「いや、年齢くらいは知っておいておかしくはないよな?」
「そうですね……。エイジさんには、説明したことはありませんが、獣人族は、発情期イコール妊娠適齢期です。ですから、昔から獣人族は、その少し前には特殊な匂いを発しますから、妊娠適齢期の年齢が近づいたら、成人の儀式をします」
「成人の儀式?」
「はい!」
「それは、どんなモノなんだ?」
「エイジさん、ここを見てください」
 
 エルナが、銀色の毛で覆われた狐耳を俺に見せてくる。
 すると、狐耳の一部に切れ込みが入っているのが見れた。
 
「これは……」
「成人の儀を行うと、雌は左耳に、雄は右耳に切れ込みを入れるのが獣人族の習わしとなっています」
「つまり……、切れ込みがある獣人族の男女は――」
「雄は、いつでも発情していますから気にしないでください。雌のことだけ考えてください。雌で、左耳に切れ込みがある雌は、いつ発情期が来てもおかしくない個体だと言う事をご理解ください」
「そ、そうか……」
「ちなみに、この開拓村エルでは、リルカとエイジさんの昔の仲間さん以外の全部の雌は耳に切れ込みが入っていますから――」
 
 その言葉に、俺はゴクリと唾を呑み込む。
 
「つまり、全ての獣人族の雌は――」
「現在は発情期ですから、エイジさんは狙われます」
「それは、問題だな……。リルカとしても嫌だろ?」
「どうしてですか?」
 
 首を傾げるリルカ。
 きょとんとした表情から、俺が、どういう意味で聞いたのか理解していないようで――、
 
「だから、他の女と俺が寝たらリルカは嫌じゃないのか?」
「何を言っているのですか? エイジさん」
「ん?」
「強い雄の子を雌が孕んで産むのは常識ですよ? それに、今、この地で暮らしているのはエイジさんの所有物の雌だけですよ? なら、全員、孕ませるのは当たり前ですよ?」
「……そ、そうか……」
 
 その辺は、獣人族はドライなんだな。
 
「まぁ、私はエイジさんの第一夫人ですから、私が子を孕むまでは許可は出しませんでしたけど、今日からは解禁です」
「……と、とりあえず、王都に向かうとしようか」
「――え? で、でも……、他の雌を待たせていると大変な事になりますよ?」
「大変な事とは?」
「あとで搾り取られます」
 
 そういう言葉はリルカからは聞きたくなかったが、そのへんは獣人族では普通なのだろう。
 そうだ! そうに違いない!
 
「わ、分かった……」
「それでしたら、数日間は、滞在された方がいいと思います」
「そんなに時間は――」
「大丈夫です! 夜伽に関しては、獣人族は本能で知っていますから! 飽きさせることはありませんから! 私と交尾をしていてもエイジさんは萎えることは無かったですよね? それと同じです」
「……そ、そうか……」
 
 ソドムの町で使者を待たせているというのに、そんなことをしていいのか?
 
 
 
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