おっさんの異世界建国記

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
86 / 190
第三章 王都暗躍編

第86話 今後の課題

しおりを挟む
 ドラゴンを討伐してから3日が経過した。
ソドムの町は、俺が作った水により湖面に沈んだままであったが――、
 俺は、この3日間、必死に生活魔法により地面を掘って掘って掘りまくった。
そして川まで土を掘りまくり、水の通り道を作っていた。
 
「ようやくですね」
「そうだな」
 
 俺は、ニードルス伯爵スザンナの声に頷きつつ、幅10メートル、深さ5メートルの渓谷を見下ろす。
 それは、俺が生活魔法で作った湖面の水を抜く為の通路。
 200メートル以上離れている川まで繋がっている。
 そして、最後の――、ソドムの町が沈んでいる湖面を抜く為の壁となっている土の部分を生活魔法で崩すために手を向ける。
 
「スザンナさん、行きます」
「はい。お願いします」
「生活魔法発動!」
 
 俺の声と共に生活魔法が発動し――、湖面の水を抜く為に作った渓谷と湖面を隔てているダムのようになっていた土の壁が崩される。
 それと共に――、
 
 ――ドドドドドドドドドドドッドドドッ! と、大規模なダムの放水のような音が響くと同時に、ソドムの町が浸かっていた水が一気に引けていく。
 
「「「「「「「おおおおー」」」」」」」
 
 俺の魔法が発動し、膨大な水が一気に抜けていく。
それと共に湖面が小さくなっていき、湖底へと沈んでいたソドムの町が姿を見せていく。
 もちろん、それと共に、ソドムの町の住民からは歓喜の声が上がる。
 そして1時間が経過したころには、湖底に沈んでいたソドムの町は、完全に湖底から姿を見せた。
 もちろん、ソドムの町の住民たちは自分達の町へと被害状況を含めて確認するために向かっていく。
 そんな姿を見たあと、唯一無事だったニードルス伯爵家へと、俺達は戻った。
 
 ニードルス伯爵家――、もう伯爵家の地位は剥奪されているから伯爵ではないのだが……。
 その伯爵家の邸宅の執務室で、スザンナと俺は、今後の事に関して頭を抱えていた。
 
「――とりあえずだ。ソドムの町は、何とか復帰できると思う」
「はい。それは、分かっています」
「――で、問題はニードルス伯爵領と、開拓村エルと、その周辺の土地をエルダ王国が切り捨てたことだ」
 
 しかも、ご丁寧に関税までかけてくる始末。
 完全に、こちらをエルダ王国とは別の国ということで認定してきている。
 その事に対して、こちらが行き申し立てをしても恐らく聞くことはないだろう。
 そもそも、俺の予測ではドラゴンが出たことも拍車をかけていると思うし。
 そう考えると、溜息しかでない。
 
「はい。交易をしようとにも、おそらく莫大な関税をかけてくると思います。それも、石鹸で払えとか言ってきそうです」
「だよな……」
 
 俺は執務室の椅子に座りながら、じーっと扇情的な目で見てきているスザンナから目を逸らす。
 
「そういえば、リルカやエルナは?」
「開拓村エルで、神田さんの代わりに村を治めていると報告が来ています」
「そうか……」
 
 俺は頷く。
 そして、頭の片隅で――、そう言えばと思い出す。
 開拓村エルの開拓を――、塩を流通させる為に、リルカやソフィアやリアや奴隷となっている獣人に任せたということを。
そんな大事なことを俺は忘れていた。
ここ数日、ソドムの町を復興させる為に、不眠不休で、生活魔法を使い地面を掘り水路を作っていたから。
言い訳かも知れないが、余裕がなかった。
 
「――となると、一度、エルに戻ってみるのもいいかも知れないな」
「いえ。神田さん。すでに、ここら一帯は神田さん――、いえ、神田様の領地なのですから、開拓村エルは辺境に属しますから、向かうのは良くないと思います。まずは首都となるソドムの町の復興を最優先にして地盤を固めて地力を養いませんと――」
「……そうだな」
 
 まだ建国はしていない。
 それでも、エルダ王国からは一国として扱うと通達があった以上、交易をおこなう上でも国としての体裁を保つために動かないといけないだろう。
 まったく、やってくれるぜ!
 
「あとは、神田様が国王として即位する必要がありますね」
「即位って言われてもな……。こんな状況で即位式なんてしたらソドムの町の住民からヘイトを向けられるだろうに」
「そこは、上手くやるしかないと思います」
「うまくとは?」
「何かしらの利益を自分の領地の人間に、今後、この国は、こうなります! と、説明すればいいかと」
「つまりプレゼンをしろということだな」
 
 プレゼンなら、地球でサラリーマンをしていた時に散々してきたからな。
 得意だ。
 
「プレゼンとは?」
 
 俺の言葉に不思議そうな表情で聞いてくるスザンナに、
 
「スザンナが、さっき俺に説明した国民に向けての説明のことだ。それをプレゼンという」
「そうなのですか……」
「ああ。とりあえず、俺に出来ることと言えば石鹸を作ることくらいだからな。石鹸を主力に、他の国々と交易をして外貨を稼ぐのが第一歩だな」
 
 あとは売れるモノと言ったら塩くらいなものか。
 その辺に関しては開拓の村エルの進捗具合次第だから何ともいえないな。
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

両親が勇者と魔王だなんて知らない〜平民だからと理不尽に追放されましたが当然ざまぁします〜

コレゼン
ファンタジー
「ランス、おまえみたいな適なしの無能はこのパーティーから追放だ!」  仲間だと思っていたパーティーメンバー。  彼らはランスを仲間となどと思っていなかった。  ランスは二つの強力なスキルで、パーティーをサポートしてきた。  だがそんなランスのスキルに嫉妬したメンバーたちは洞窟で亡き者にしようとする。  追放されたランス。  奴隷だったハイエルフ少女のミミとパーティーを組み。  そして冒険者として、どんどん成りあがっていく。  その一方でランスを追放した元パーティー。  彼らはどんどん没落していった。  気づけはランス達は、元パーティーをはるかに凌駕していた。  そんな中、ある人物からランスは自身の強力なスキルが、勇者と魔王の固有のスキルであることを知らされる。 「え!? 俺の両親って勇者と魔王?」  ランスは様々な争いに次々と巻き込まれていくが――  その勇者と魔王の力とランス自身の才によって、周囲の度肝を抜く結果を引き起こしてゆくのであった。 ※新たに連載を開始しました。よければこちらもどうぞ!  魔王様は転生して追放される。今更戻ってきて欲しいといわれても、もう俺の昔の隷属たちは離してくれない。  https://www.alphapolis.co.jp/novel/980968044/481690134  (ページ下部にもリンクがあります)

処理中です...