おっさんの異世界建国記

なつめ猫

文字の大きさ
上 下
80 / 190
第二章 赤竜討伐戦

第80話 正妻戦争(30)レッドドラゴン強襲!

しおりを挟む
 そして赤い閃光は、建物へ着弾しつつも直進し数十もの建物を纏めて吹き飛ばした。
 間一髪、ソルティは避けていたが、威力が今までの炎の弾と比べて段違いだ。
 
「何だ! 今のは!?」
「一体、何が……」
「リア!」
「大丈夫なの! 何とか避けられたけど……、今のは……、何なの?」
「荷電粒子砲よ……」
 
 俺達の疑問に答えてきたのはソルティ。
 彼女は額から汗を垂らしている。
 
「荷電粒子砲って、あの!?」
「ええ、まさか……。神代文明大戦末期の技術を使ってくるなんて思わなかったけど……」
「どれだけ、神代文明時代は物騒なんだ!」
 
 俺は思わず叫びながら、ドラゴンと化したマリーを見上げた。
 口元に無数の粒子が収束していくのが分かる。   
 
「神田さん、荷電粒子砲を使ってきたということは、エンシェントドラゴンとしての個が定着してきた証です。時間がありません!」
「――だが、さっきの攻撃を打たれたら……、全滅する可能性も――」
「大丈夫です! 伊達に元・女神ではありません!」
 
 ソルティが、叫ぶと同時に地面に手を着く。
 
「元・女神ソルティの名において命ずる!」
 
 彼女が叫ぶと同時に、先ほどリアとマリーの間に生み出されたのと同程度の壁が無数に作り出されていく。
 俺達の前にも数枚の壁が作られる。
 壁が出来たと同時に、ドラゴンと化したマリーから赤い閃光が打ち出され壁を貫通。
 何枚もの壁を破壊しながら直進すると、新たに壁が地面からせり上がってくると閃光を遮断した。
 
「一枚でダメなら何枚でも作りだします」
「ソルティ……、お前……」
「少しは見直しましたか?」
「ああ。お前、少し小さくなっているぞ?」
 
 連続して壁を作り出しているソルティであったが、身長が10センチほど縮んでいる。
 
「だから、全力を出すのは嫌なのです! だけど……、いまは、そんなことを言っている場合ではないです! 最初に言ったとおりメディデータや私の体は魔力で維持されているのですから、消費魔力が多ければそれだけ身体に影響するのです!」
「なるほど……」
「なので! 早くマリーさんを何とか戻してください! 少女だからと適当なことは言わずに誠心誠意話し合ってください!」
「分かった!」
 
 ソルティや俺達が無事だったのが、ドラゴンの本能として苛立ったか知らないがドラゴンと化したマリーの口元に粒子を集め始めると同時に俺は思った。
 
 現在のソルティの身長が130センチくらいだ。
 つまり12発打たれたら10センチまでソルティの身長が小さくなってしまう。
 
「タイムリミットは12発か……」
「ちょっと待ってください! どうして私が、そこまで小さくなる計算で物事を考えているのですか!?」
「いや、ほら……。最悪の事態を想像して行動しないとダメだろう? 社会人として!」
「そういう発想はいりませんから!」
「カンダさん、用意ができました」
 
 俺の独り言に、魔法を行使しながら的確にソルティが突っ込み返してきているとソフィアが、遠慮がちに俺の手を握り話しかけてきた。
 
「ああ、すまない」
 
 別に忘れていたわけではない。
 少しというか、俺もかなりテンパっているだけだ。
 よく見ると、ソフィアの足元には、無数の円が組み合わさったような魔法陣が浮かびあがっている。
 
「手を握ればいいのか?」
「はい!」
「分かった」
 
 目配せするとセフィも慌てた様子で走り寄ってくると魔法陣の中に足を踏み入れてくる。
 
「それでは、いきます!」
 
 ソフィアの魔法が発動すると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。
 体へ感じる重力が消えたと同時に、一瞬だけ思考が途切れる。
 
「カンダさん、大丈夫ですか?」
 
 ソフィアの言葉に、俺は意識を取り戻す。
 何が起きたのか確認するために周囲を確認する。
 
「何もないな……」
「ここは、マリーさんの精神世界です。人間だけでなく動物や植物全てが一つの世界を形成しているのですが……、黒一色ということはマリーさんの精神はもう……」
「そんな! 娘はどこにいるのですか?」
 
 ソフィアの悲観的な言葉に、セフィが表情を強張らせる。
 
「マリーは、どこに……」
 
 セフィは、焦りを含んだ声色で一人呟くと辺りを見渡し始め――。
 
「ソフィア。黒一色であるのはどういう理屈なんだ?」
「簡単に説明しますと、建物を作る際に木々を倒してから資材にすると思いますが、木々は倒されてから死ぬのです。その時に見せる光景が、このような形だったのですけど……」
「なるほど……」
 
 実体験に基づいてという訳か。
 問題は、どこまでも続くような広大な漆黒の空間でマリーを見つけることが出来るかどうかだが……。
 
「マリーが、どこ居るか分かるか?」
「いえ、ここまで進行していると――、もう……」
「……そうか」
 
 とりあえず……だ。
 ソルティは別にいいとして、早くしないとマリーが助けられない。
 どうしたらいいものか……。
 
「ハッ!」
「カンダさん?」
 
 俺は事態を打破する閃きを思いつく。
 ただ、それが成功するかどうかは別問題だが……。
 
「セフィ。例の薬の予備があるか?」
「薬?」
「ああ、見た目を変化させる薬だ」
「予備が一個……」
「それを貸してくれ!」





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...