おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第二章 赤竜討伐戦

第79話 正妻戦争(29)レッドドラゴン強襲!

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「――と、とりあえずだ! まずは、リアとソフィアの結婚に関しては、善処するってことで……」
「そう言って、また先送りするの?」
「リア! 俺がいつも先送りするような無責任な男に見えるのか?」
 
 リアが、ドラゴンの口から放つ炎を避けながら俺の方へと視線を向けてくる。
 そして口を開くと「無責任じゃないけど、物事を先送りするの」と、全面的に俺の言葉を否定してきた。
 
 そんなリアの言葉の後に、「カンダさん、男らしく責任を取るかどうかを聞いているだけです。どうせ、マリーさんの件もセフィさんを妻にして、「本当の家族になろう」とか、説明するのですよね?」と、ソフィアも突っ込みを入れてくる。
 
「いや……、それは――」
「また、適当なことを言って先送りするのですか?」
 
 ソフィアの突っ込みがハンパない。
 もう少しやさしく諭してほしいものだ。
 やさしさを半分くらい入れてほしい。
 
「わ、わかった!」
「「――!」」
「リアとソフィアも…………、俺が娶る!」
 
 ――ああ。すまない、リルカ。俺が優柔不断なばかりに、こんなことになってしまった。
 あとでいくらでも殴ってくれてかまわない。
 ただ、全力で殴られると死ぬから手加減してくれ……。
 
「………で、ソルティ」
「はい」
「マリーを助けるための手段は?」
 
 俺の問いかけに、ソルティが頷く。
 
「メディデータは、通常の人間が魔法を使えるように改良した生物です。通常の人間ですと細胞単位で肉体を動かすエネルギーを作り出しますが、メディデータの場合は、精神感応物質を取り入れることで代用しているのです」
「それって……、ミトコンドリアのエネルギー生産のことを言っているのか?」
「はい。この世界の人間――、つまりメディデータは生きるために膨大な精神感応物質を利用しているのです。ですから、生粋のカンダさんと違って魔法における魔力消費できる量が極端に少ないのです。そのため、カンダさんの場合は、生活魔法でも普通ではありえない魔法を扱うことができるのですよ?」
「……なるほど――、よく分からん」
「一応、カンダさんの知識に合わせて説明をしているのですが……」
「それで、結局のところどうすればいいんだ?」
「マリーさんの場合は、取り入れた精神感応物質が固体が有する魔力の限界を超えてしまったことで魔物化という現象が起きています。つまり、取り入れた魔力を排出することさえ出来れば……」
「助けられるということか?」
「はい。そうなります」
「取り入れた魔力の排出か……。方法は?」
「方法は、一つだけ。森や木々と共感が出来るハーフエルフであるソフィアさんが、マリーさんとコネクトした後、カンダさんが精神感応物質の構築に命令を下せるナノ・ニュートリノ・マシンに命令を下して実行を移すだけです」
「――それって……」
 
 俺は、チラッとリアの方を見る。
 すると俺の視線に気がついたリアが視線を俺から外してくる。
 
「ソルティ。お前、嘘をついたな?」
「嘘はついていません」
「お前の話だと、ソフィアと俺だけで――」
「実は、そうでもないのですよね」
「どういうことだ?」 
「マリーさんから輩出された魔力は固まりとなって大気に一気に放出されます。それは、マリーさんが炎系のエンシェントドラゴンということから見て物質に変換されて放出された場合、莫大なエネルギーとなります。その魔力を制御するのは魔法師しかできないのです」
「つまり……」
「はい。リアさんは、カンダさんとソフィアさんが上手くマリーさんを元に戻したあとの対応要員となるわけです」
「……そ、そうか」
「カンダさん、魔物化が長いと細胞が固定してしまい元に戻らなくなってしまうので急ぎましょう」
「わかった」
 
 俺はソルティの方へ視線を向ける。
 視線に気がついたのか彼女は俺の方へと走ってくると「話は纏まったのね?」と、語りかけてきた。
 
「ああ、頼めるか?」
「うん、任せて!」
 
 ソフィアは頷くと精霊魔法の詠唱を開始するが、一人になったリアがドラゴンの猛攻に晒されてしまう。
 そんなリアの前に巨大な白い壁が作りだされていくとソルティが「カンダさん! 私がマリーさんの動きを止めますので、その間に何とかしてください」と叫んできた。
 
「ソルティ!」
 
 俺は思わずソルティの名前を叫ぶ。
 
「神田さん、塩は炎に強いので――」
「なるほど……」
 
 頷きながら、思い出す。
 たしか有機化合物の砂糖と違い塩は、塩化ナトリウム型構造で酸素分子が結合することは難しい。
 つまり、リアの前に作り出されたのは塩で作られた壁という訳か……。
 だが、一つ気になることがある。
 
「それは塩の壁だよな? そんなに作って大丈夫なのか?」
 
 俺は高さ20メートル近く、横幅10メートル、厚さ3メートルの塩の塊と言うか壁に視線を向けながら問いかける。
 
「私が一万年かけて貯塩した塩を使っているから、早くケリをつけて!」
「わかった!?」



 俺が頷くと同時に塩の壁が、赤い閃光で丸く円形状に刳り貫かれる。
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