おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第二章 赤竜討伐戦

第76話 正妻戦争(26)レッドドラゴン強襲!

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「セフィ。マリーはショックを受けてドラゴンになったんだよな?」
「ええ、そうだけど……」
「つまり、気持ちを落ち着かせれば元に戻るんじゃないのか?」
「そ、そんな話は聞いたことが……」
「試してみないと分からないだろ。こう見ても、交渉は得意な方なんだ」
「交渉?」
「ああ」
 
 セフィが俺の言葉に首を傾げてくるが、異世界の日本でサラリーマンをしていたと言っても、きっと理解はしてくれないだろう。
 すでにドラゴンになったマリーを恐れて、辺りは無人になっている。
 これなら、マリーの名前を叫んでも大丈夫だろう。
 
「マリー!」
 
 俺は、ドラゴンになったマリーに大声で語りかける。
 すると、リルカに攻撃した後、行動を止めていたマリードラゴンがゆっくりと俺に近づいてきた。
 
「カンダさん……」
 
 俺の近くに寄ってきたセフィが服の裾を掴んで語りかけてくる。
 
「大丈夫だ。リルカを攻撃してきた理由は分からないが、とりあえず落ち着いているように見え――」
 
 途中まで言いかけたところで、俺は建物の壁に叩きつけられた。
 ソドムの町の北は、遺跡を利用して作られている。
 そのために壁は石だ。
 衝撃がモロに体に伝わってくる。
 
「カンダさん!?」
 
 何が起きたのか分からないと言った表情でセフィが近寄って来ようとするが、そんなセフィに向けてドラゴンと化したマリーが口を開く。
 
「――ま、まさか……」
 
 俺は、嫌な予感を感じながらマリーの目を見る。
 先ほどまで白い眼だったドラゴンの目が赤く染まっていて理性があるようには思えない。
 淫魔王のときもそうだったが、力に呑まれた可能性が頭をもたげてくる。
 
「セフィ! すぐに逃げろ!」
 
 石壁に叩きつけられた影響で体はふらつくが動かせない程ではない。
 それでも間に合わ――。
 
「リア!」
「分かっているの! エクスプロージョン!」
 
 どこかで聞いた声が耳に聞こえてくる。
 それと同時に、セフィの前面に土壁が作られていく。
 俺が見ている前で、ドラゴンが放った火の玉と攻撃魔法がぶつかりあい爆発を引き起こす。
 爆風は、四方に広がりドラゴンと化したマリーだけでなくセフィや俺の方にも等しく向かってくる。
 
「――くっ!?」
 
 体中に固定化の魔法と回復魔法をかけながら防御の姿勢をとると、前面に白い壁が作られていき爆風から俺の身を守る。
 
「カンダさん、大丈夫ですか?」
「ソルティか」
「はい。何やら強力な力の波動を感じて急いできました。あれは……、エンシェント・ドラゴンですね」
「エンシェント?」
「はい。普通のドラゴンよりも遥かに強力なドラゴンですが……、絶滅したと聞いておりましたが、まだ生き残っていたとは……」
 
 ソルティは、好奇心に彩られた目でドラゴンとなったマリーのほうへと視線を向けている。
 
「そういえばセフィは!?」
 
 さすがに自分の母親を、殺したとなったらどうなるか想像が出来ない。
 
「大丈夫なの」
 
 小走りで駆け寄ってきたリアが指差す方向には、ソフィアとセフィの姿が見えた。
 
「無事だったか」
 
 小さく溜息をつきながら俺は一つ気になっていたことを彼女らに聞くことする。
 
「それよりも戦っていたんじゃないのか?」
「うっ!? それは……」
「カンダさん、彼女らも冒険者ですし、私も元・女神ですので優先度の順位くらいはつけられます。今は、正妻戦争をしている場合ではないと判断したのです」
「そうか……」
 
 俺としては、ソルティも何か裏があるのでは? と思ってしまっていたが勘違いだったことに少しだけ溜息をついてしまう。
 ここ最近、俺の人生経験が生かせない問題に直面しすぎていて正直、俺って社会人失格なのではないのか? と、まで思っていたが、そうではないようで一安心だ。
 
「ソルティ。あれは俺の知り合いの娘がショックでドラゴンになった姿なんだが元に戻す術はないか?」
「あります」
「あるのか!?」
「はい。ドラゴンに変化したときに受けたショックを取り除くことです」
「と、言うことは……」
 
 それが本当なら……。
 
「俺とセフィが夫婦では無かった事実。そのショックを取り除くってことか?」
「カンダさん……。一体……、何をしているの?」
 
 ソルティが、苛立ちを含んだ声色で問いただしてきた。
 
「いや、何というか……。こんな事態になるとは思わなかったというか、流れ的にそんな感じになってしまったというか」
「違います! カンダさんに私が頼んだのです」
 
 セフィが俺を庇うようにソルティと俺の間に割って入ってくる。
 
「貴女は黙っていてくれる? 私は、カンダさんと話しをしているの」
「ソルティ。ドラゴンと変化したリアの父親は、俺と同期の冒険者なんだ」
「同期?」
 
 俺の言葉に反応したのは、ソフィア。
 
「ああ、知っているだろ? ニードルス伯爵事件を」
「そ、それって……、ガーランドのこと?」
 
 ソフィアが震える声で言葉を紡ぐと、リアが大きく眼を見開く。
 
「――も、もしかして……。貴女、ガーランドの奥さんなの? そ、それじゃ……、あの子は娘? ガーランドの?」



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