76 / 190
第二章 赤竜討伐戦
第76話 正妻戦争(26)レッドドラゴン強襲!
しおりを挟む
「セフィ。マリーはショックを受けてドラゴンになったんだよな?」
「ええ、そうだけど……」
「つまり、気持ちを落ち着かせれば元に戻るんじゃないのか?」
「そ、そんな話は聞いたことが……」
「試してみないと分からないだろ。こう見ても、交渉は得意な方なんだ」
「交渉?」
「ああ」
セフィが俺の言葉に首を傾げてくるが、異世界の日本でサラリーマンをしていたと言っても、きっと理解はしてくれないだろう。
すでにドラゴンになったマリーを恐れて、辺りは無人になっている。
これなら、マリーの名前を叫んでも大丈夫だろう。
「マリー!」
俺は、ドラゴンになったマリーに大声で語りかける。
すると、リルカに攻撃した後、行動を止めていたマリードラゴンがゆっくりと俺に近づいてきた。
「カンダさん……」
俺の近くに寄ってきたセフィが服の裾を掴んで語りかけてくる。
「大丈夫だ。リルカを攻撃してきた理由は分からないが、とりあえず落ち着いているように見え――」
途中まで言いかけたところで、俺は建物の壁に叩きつけられた。
ソドムの町の北は、遺跡を利用して作られている。
そのために壁は石だ。
衝撃がモロに体に伝わってくる。
「カンダさん!?」
何が起きたのか分からないと言った表情でセフィが近寄って来ようとするが、そんなセフィに向けてドラゴンと化したマリーが口を開く。
「――ま、まさか……」
俺は、嫌な予感を感じながらマリーの目を見る。
先ほどまで白い眼だったドラゴンの目が赤く染まっていて理性があるようには思えない。
淫魔王のときもそうだったが、力に呑まれた可能性が頭をもたげてくる。
「セフィ! すぐに逃げろ!」
石壁に叩きつけられた影響で体はふらつくが動かせない程ではない。
それでも間に合わ――。
「リア!」
「分かっているの! エクスプロージョン!」
どこかで聞いた声が耳に聞こえてくる。
それと同時に、セフィの前面に土壁が作られていく。
俺が見ている前で、ドラゴンが放った火の玉と攻撃魔法がぶつかりあい爆発を引き起こす。
爆風は、四方に広がりドラゴンと化したマリーだけでなくセフィや俺の方にも等しく向かってくる。
「――くっ!?」
体中に固定化の魔法と回復魔法をかけながら防御の姿勢をとると、前面に白い壁が作られていき爆風から俺の身を守る。
「カンダさん、大丈夫ですか?」
「ソルティか」
「はい。何やら強力な力の波動を感じて急いできました。あれは……、エンシェント・ドラゴンですね」
「エンシェント?」
「はい。普通のドラゴンよりも遥かに強力なドラゴンですが……、絶滅したと聞いておりましたが、まだ生き残っていたとは……」
ソルティは、好奇心に彩られた目でドラゴンとなったマリーのほうへと視線を向けている。
「そういえばセフィは!?」
さすがに自分の母親を、殺したとなったらどうなるか想像が出来ない。
「大丈夫なの」
小走りで駆け寄ってきたリアが指差す方向には、ソフィアとセフィの姿が見えた。
「無事だったか」
小さく溜息をつきながら俺は一つ気になっていたことを彼女らに聞くことする。
「それよりも戦っていたんじゃないのか?」
「うっ!? それは……」
「カンダさん、彼女らも冒険者ですし、私も元・女神ですので優先度の順位くらいはつけられます。今は、正妻戦争をしている場合ではないと判断したのです」
「そうか……」
俺としては、ソルティも何か裏があるのでは? と思ってしまっていたが勘違いだったことに少しだけ溜息をついてしまう。
ここ最近、俺の人生経験が生かせない問題に直面しすぎていて正直、俺って社会人失格なのではないのか? と、まで思っていたが、そうではないようで一安心だ。
「ソルティ。あれは俺の知り合いの娘がショックでドラゴンになった姿なんだが元に戻す術はないか?」
「あります」
「あるのか!?」
「はい。ドラゴンに変化したときに受けたショックを取り除くことです」
「と、言うことは……」
それが本当なら……。
「俺とセフィが夫婦では無かった事実。そのショックを取り除くってことか?」
「カンダさん……。一体……、何をしているの?」
ソルティが、苛立ちを含んだ声色で問いただしてきた。
「いや、何というか……。こんな事態になるとは思わなかったというか、流れ的にそんな感じになってしまったというか」
「違います! カンダさんに私が頼んだのです」
セフィが俺を庇うようにソルティと俺の間に割って入ってくる。
「貴女は黙っていてくれる? 私は、カンダさんと話しをしているの」
「ソルティ。ドラゴンと変化したリアの父親は、俺と同期の冒険者なんだ」
「同期?」
俺の言葉に反応したのは、ソフィア。
「ああ、知っているだろ? ニードルス伯爵事件を」
「そ、それって……、ガーランドのこと?」
ソフィアが震える声で言葉を紡ぐと、リアが大きく眼を見開く。
「――も、もしかして……。貴女、ガーランドの奥さんなの? そ、それじゃ……、あの子は娘? ガーランドの?」
「ええ、そうだけど……」
「つまり、気持ちを落ち着かせれば元に戻るんじゃないのか?」
「そ、そんな話は聞いたことが……」
「試してみないと分からないだろ。こう見ても、交渉は得意な方なんだ」
「交渉?」
「ああ」
セフィが俺の言葉に首を傾げてくるが、異世界の日本でサラリーマンをしていたと言っても、きっと理解はしてくれないだろう。
すでにドラゴンになったマリーを恐れて、辺りは無人になっている。
これなら、マリーの名前を叫んでも大丈夫だろう。
「マリー!」
俺は、ドラゴンになったマリーに大声で語りかける。
すると、リルカに攻撃した後、行動を止めていたマリードラゴンがゆっくりと俺に近づいてきた。
「カンダさん……」
俺の近くに寄ってきたセフィが服の裾を掴んで語りかけてくる。
「大丈夫だ。リルカを攻撃してきた理由は分からないが、とりあえず落ち着いているように見え――」
途中まで言いかけたところで、俺は建物の壁に叩きつけられた。
ソドムの町の北は、遺跡を利用して作られている。
そのために壁は石だ。
衝撃がモロに体に伝わってくる。
「カンダさん!?」
何が起きたのか分からないと言った表情でセフィが近寄って来ようとするが、そんなセフィに向けてドラゴンと化したマリーが口を開く。
「――ま、まさか……」
俺は、嫌な予感を感じながらマリーの目を見る。
先ほどまで白い眼だったドラゴンの目が赤く染まっていて理性があるようには思えない。
淫魔王のときもそうだったが、力に呑まれた可能性が頭をもたげてくる。
「セフィ! すぐに逃げろ!」
石壁に叩きつけられた影響で体はふらつくが動かせない程ではない。
それでも間に合わ――。
「リア!」
「分かっているの! エクスプロージョン!」
どこかで聞いた声が耳に聞こえてくる。
それと同時に、セフィの前面に土壁が作られていく。
俺が見ている前で、ドラゴンが放った火の玉と攻撃魔法がぶつかりあい爆発を引き起こす。
爆風は、四方に広がりドラゴンと化したマリーだけでなくセフィや俺の方にも等しく向かってくる。
「――くっ!?」
体中に固定化の魔法と回復魔法をかけながら防御の姿勢をとると、前面に白い壁が作られていき爆風から俺の身を守る。
「カンダさん、大丈夫ですか?」
「ソルティか」
「はい。何やら強力な力の波動を感じて急いできました。あれは……、エンシェント・ドラゴンですね」
「エンシェント?」
「はい。普通のドラゴンよりも遥かに強力なドラゴンですが……、絶滅したと聞いておりましたが、まだ生き残っていたとは……」
ソルティは、好奇心に彩られた目でドラゴンとなったマリーのほうへと視線を向けている。
「そういえばセフィは!?」
さすがに自分の母親を、殺したとなったらどうなるか想像が出来ない。
「大丈夫なの」
小走りで駆け寄ってきたリアが指差す方向には、ソフィアとセフィの姿が見えた。
「無事だったか」
小さく溜息をつきながら俺は一つ気になっていたことを彼女らに聞くことする。
「それよりも戦っていたんじゃないのか?」
「うっ!? それは……」
「カンダさん、彼女らも冒険者ですし、私も元・女神ですので優先度の順位くらいはつけられます。今は、正妻戦争をしている場合ではないと判断したのです」
「そうか……」
俺としては、ソルティも何か裏があるのでは? と思ってしまっていたが勘違いだったことに少しだけ溜息をついてしまう。
ここ最近、俺の人生経験が生かせない問題に直面しすぎていて正直、俺って社会人失格なのではないのか? と、まで思っていたが、そうではないようで一安心だ。
「ソルティ。あれは俺の知り合いの娘がショックでドラゴンになった姿なんだが元に戻す術はないか?」
「あります」
「あるのか!?」
「はい。ドラゴンに変化したときに受けたショックを取り除くことです」
「と、言うことは……」
それが本当なら……。
「俺とセフィが夫婦では無かった事実。そのショックを取り除くってことか?」
「カンダさん……。一体……、何をしているの?」
ソルティが、苛立ちを含んだ声色で問いただしてきた。
「いや、何というか……。こんな事態になるとは思わなかったというか、流れ的にそんな感じになってしまったというか」
「違います! カンダさんに私が頼んだのです」
セフィが俺を庇うようにソルティと俺の間に割って入ってくる。
「貴女は黙っていてくれる? 私は、カンダさんと話しをしているの」
「ソルティ。ドラゴンと変化したリアの父親は、俺と同期の冒険者なんだ」
「同期?」
俺の言葉に反応したのは、ソフィア。
「ああ、知っているだろ? ニードルス伯爵事件を」
「そ、それって……、ガーランドのこと?」
ソフィアが震える声で言葉を紡ぐと、リアが大きく眼を見開く。
「――も、もしかして……。貴女、ガーランドの奥さんなの? そ、それじゃ……、あの子は娘? ガーランドの?」
38
お気に入りに追加
609
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる