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第二章 赤竜討伐戦
第74話 正妻戦争(24)レッドドラゴン強襲!
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やれやれ――。
ベックは俺のことを勘違いしているようだな。
俺は、あくまでも最善の手を打っているに過ぎない。
このまま、何もせずにニードルス伯爵令嬢のスザンナを放置して逃げたりしたら、俺が関与していなくても俺のせいにされるかも知れない。
だが、俺が救助活動を率先していたら、他の人間はどう思う?
――そう、俺が事件には関係ないと勝手に思ってくれるかもしれない。
そうすれば、ニードルス伯爵に恩が売れるし俺に対してお咎めも無いかもしれないし、何より借金がチャラになるかも知れないのだ!
「――完璧な作戦だな」
多少、マッチポンプな気がしないでも無いが、細かいことに拘っている場合ではないだろう。
社会人として、やるべきことはやらないとな。
「旦那、見えてきましたぜ!」
「――ん? ……これは、ひどい……」
ニードルス伯爵だけではなくメイドや執事達も白目を剥いて完全に気絶して倒れている。
これは早々に手当てをしないとマズイ。
「ベック、運ぶのを手伝ってくれ」
「……旦那、俺も、もう体が――」
紫色に唇を変色させたベックが語りかけてくる。
思ったより事態は深刻そうだ。
どうしたらいい?
どうすれば……。
「そ、そうだ!」
俺は一人叫ぶと生活魔法でエナドリを作り出す。
大量のカフェインを摂取すれば、きっと寝ないで24時間戦えるようになるはずだ。
俺は地面の上で倒れて意識を飛ばしかけているベックの口を開けてエナドリを一本飲ます。
それでも意識がハッキリしないベックに2本、3本とエナドリを飲ませていくと。
「うぉおおおおおおお。体が心臓がバクバク言って燃えるようだ!」
何やら、ベックが叫ぶと立ち上がり天を仰ぎ見ると叫び始めた。
どうやら、エナドリは中々効果があったようで何よりだ。
「ベック、とりあえずニードルス伯爵と付き人を幌馬車に乗せるのを手伝ってくれ」
「イエッサー!」
俺が見ている前で、ベックがあっというまに10人もの男女を幌馬車に投げ入れていく。
どうやら、エナドリが効きすぎた気もするが、今は気にしなくてもいいだろう。
ベックが手綱を握る幌馬車がソドムの町の北側へ入ると大勢の人間が最低限の荷物だけ持って町の外へ逃げていく姿が目に入った。
どうやら南部で起きている問題に気がついて町から離れようとしているのだろう。
まだ風向きからして匂いが来ていないから、来る前には何とかなりそうだが――。
それよりも問題が……ある。
幌馬車の手綱を握っているベックが「ヒャッハー! 幌馬車様のお通りだぞおおお」と、叫んでいることだ。
おかげで町の外に逃げている町民達からも好奇の視線が向けられている。
すこしはベックには少し自重してほしい。
一緒に居ると恥ずかしくてこの上ない。
「カンダさん!」
そんな俺達に話かけてきた人間がいた。
正直、この状態で俺の身元がバレるようなことをしてほしくはないんだが……。
仕方なく、話掛けてきた相手へと視線を向ける。
「セフィか? どうしたんだ?」
「それが……」
セフィが何かを言いかけたところで、誰も通っていない路地に巨大な火の玉が着弾し大爆発を引き起こした。
爆風が周辺に吹き荒れる。
一瞬、リアの攻撃魔法か? と思ったところで路地から10メートルを超える赤色の竜――、ファイアードラゴンが姿を現した。
「おいおい、ドラゴンが攻めてくるとか……、この町には疫病神か何かがいるのか?」
俺は思わず、素直に感じた思いを口にしてしまうが。
「カンダさん、あれはマリーなんです」
「はあ?」
マリーってセフィの娘だよな?
何がどうなって、ドラゴンになっているんだ?
「――マリーって、セフィの娘のマリーだよな?」
俺は、町の路地から姿を現した赤竜であるファイアードラゴンを見上げながら、彼女に問いかける。
俺の言葉に、セフィが神妙そうな表情で頷く。
嘘を言っているようには見えないが……。
いくらなんでも人間がドラゴンになるなんて理解ができない。
それに――。
「もしかして、住民が逃げているのって……」
「はい。マリーが暴れていて――」
「どうして、そうなったんだ? いや、まてよ……」
一つだけ俺には心当たりがあった。
「まさか……、魔王に関連があるのでは……」
俺達が辛うじて倒した淫魔王も人間を魔王に変えてしまうものであった。
もしかしたら、それが存在しているのでは? と考えてしまうのは至極当然のことだ。
「……ね、ねえさん――」
俺が考えごとをしている間に、ヒャッハーしていたつけなのかベックが御者席に座りながらグッタリとしていた。
「ベック!? どうしたの! こんなに憔悴しきって! 唇も真っ青じゃない! 熱もあるじゃない!」
「ね、ねえさん……、実は――」
「セフィ。今は、ベックよりもマリーの方が問題だ」
ベックの口から俺に不利な話が出る前にすかさず二人の話の間に割ってはいる。
もちろん、少しは保身のためはある! だが、それ以上にマリーのことが心配でならないのだ。
ベックは俺のことを勘違いしているようだな。
俺は、あくまでも最善の手を打っているに過ぎない。
このまま、何もせずにニードルス伯爵令嬢のスザンナを放置して逃げたりしたら、俺が関与していなくても俺のせいにされるかも知れない。
だが、俺が救助活動を率先していたら、他の人間はどう思う?
――そう、俺が事件には関係ないと勝手に思ってくれるかもしれない。
そうすれば、ニードルス伯爵に恩が売れるし俺に対してお咎めも無いかもしれないし、何より借金がチャラになるかも知れないのだ!
「――完璧な作戦だな」
多少、マッチポンプな気がしないでも無いが、細かいことに拘っている場合ではないだろう。
社会人として、やるべきことはやらないとな。
「旦那、見えてきましたぜ!」
「――ん? ……これは、ひどい……」
ニードルス伯爵だけではなくメイドや執事達も白目を剥いて完全に気絶して倒れている。
これは早々に手当てをしないとマズイ。
「ベック、運ぶのを手伝ってくれ」
「……旦那、俺も、もう体が――」
紫色に唇を変色させたベックが語りかけてくる。
思ったより事態は深刻そうだ。
どうしたらいい?
どうすれば……。
「そ、そうだ!」
俺は一人叫ぶと生活魔法でエナドリを作り出す。
大量のカフェインを摂取すれば、きっと寝ないで24時間戦えるようになるはずだ。
俺は地面の上で倒れて意識を飛ばしかけているベックの口を開けてエナドリを一本飲ます。
それでも意識がハッキリしないベックに2本、3本とエナドリを飲ませていくと。
「うぉおおおおおおお。体が心臓がバクバク言って燃えるようだ!」
何やら、ベックが叫ぶと立ち上がり天を仰ぎ見ると叫び始めた。
どうやら、エナドリは中々効果があったようで何よりだ。
「ベック、とりあえずニードルス伯爵と付き人を幌馬車に乗せるのを手伝ってくれ」
「イエッサー!」
俺が見ている前で、ベックがあっというまに10人もの男女を幌馬車に投げ入れていく。
どうやら、エナドリが効きすぎた気もするが、今は気にしなくてもいいだろう。
ベックが手綱を握る幌馬車がソドムの町の北側へ入ると大勢の人間が最低限の荷物だけ持って町の外へ逃げていく姿が目に入った。
どうやら南部で起きている問題に気がついて町から離れようとしているのだろう。
まだ風向きからして匂いが来ていないから、来る前には何とかなりそうだが――。
それよりも問題が……ある。
幌馬車の手綱を握っているベックが「ヒャッハー! 幌馬車様のお通りだぞおおお」と、叫んでいることだ。
おかげで町の外に逃げている町民達からも好奇の視線が向けられている。
すこしはベックには少し自重してほしい。
一緒に居ると恥ずかしくてこの上ない。
「カンダさん!」
そんな俺達に話かけてきた人間がいた。
正直、この状態で俺の身元がバレるようなことをしてほしくはないんだが……。
仕方なく、話掛けてきた相手へと視線を向ける。
「セフィか? どうしたんだ?」
「それが……」
セフィが何かを言いかけたところで、誰も通っていない路地に巨大な火の玉が着弾し大爆発を引き起こした。
爆風が周辺に吹き荒れる。
一瞬、リアの攻撃魔法か? と思ったところで路地から10メートルを超える赤色の竜――、ファイアードラゴンが姿を現した。
「おいおい、ドラゴンが攻めてくるとか……、この町には疫病神か何かがいるのか?」
俺は思わず、素直に感じた思いを口にしてしまうが。
「カンダさん、あれはマリーなんです」
「はあ?」
マリーってセフィの娘だよな?
何がどうなって、ドラゴンになっているんだ?
「――マリーって、セフィの娘のマリーだよな?」
俺は、町の路地から姿を現した赤竜であるファイアードラゴンを見上げながら、彼女に問いかける。
俺の言葉に、セフィが神妙そうな表情で頷く。
嘘を言っているようには見えないが……。
いくらなんでも人間がドラゴンになるなんて理解ができない。
それに――。
「もしかして、住民が逃げているのって……」
「はい。マリーが暴れていて――」
「どうして、そうなったんだ? いや、まてよ……」
一つだけ俺には心当たりがあった。
「まさか……、魔王に関連があるのでは……」
俺達が辛うじて倒した淫魔王も人間を魔王に変えてしまうものであった。
もしかしたら、それが存在しているのでは? と考えてしまうのは至極当然のことだ。
「……ね、ねえさん――」
俺が考えごとをしている間に、ヒャッハーしていたつけなのかベックが御者席に座りながらグッタリとしていた。
「ベック!? どうしたの! こんなに憔悴しきって! 唇も真っ青じゃない! 熱もあるじゃない!」
「ね、ねえさん……、実は――」
「セフィ。今は、ベックよりもマリーの方が問題だ」
ベックの口から俺に不利な話が出る前にすかさず二人の話の間に割ってはいる。
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