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第二章 赤竜討伐戦
第69話 正妻戦争(19)エルナ VS 神田栄治
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俺の構えを見てエルナが目を見開き言葉を紡いできた。
今の俺が構えているのは空手で言う半身の状態。
つまり相手から見える面積を減らすことで攻撃される箇所を減らすことが目的の立ち方だ。
「エルナ、貴女が私のことを何て思っているのか分からないけど……、そこまで私を憎むなら理由があるのでしょう?」
「……」
エルナの表情が――、無表情になる。
それと同時にエルナの姿が視界から消え去った。
「考えるな……。感じろ――」
俺は自分に言い聞かせるように一人呟く。
それと同時に、右耳が何か硬い物が砕けたような音を拾う。
音がした方向ではなく、左手側に体を回転させながら、後ろ向きで半身になる。
「――ッ!?」
俺の脇の下をエルナが通過する。
その時――、驚愕の表情をエルナは俺に見せてきた。
通過しつつあるエルナの後ろ襟を掴む。
確かにエルナは目に映らない速度で最初動くことが出来る。
――だが、果たしてその速度を維持したまま2撃目に生かせるのかと言うと。そんなのは無理だ。
建物の壁を利用して方向転換をする以上、必ず物体の――、質量の移動の際には必ずロスが発生する。
そのロス分が――。
俺がエルナを捉えられることに繋がる。
それでも、30キロもの重量が100キロを超える質量を伴って突っ込んでくるのだ。
体を魔力で強化しているエルナは問題ないが、エルナの後ろ襟を掴んだ俺の右腕は何度も骨折し肩も脱臼を繰り返している。
――刹那の時間。
持続して固定化の魔法と、回復魔法を連打しながら俺は痛みに耐えながらもエルナの体を右へと引っ張る。
それと同時に、両足の靭帯が切れていくのが感覚的に理解できたが、それすらも回復魔法で修復し、エルナを地面に背中から叩きつけた。
「カハッ!?」
そこで、ようやくエルナが体に受けた衝撃に息を吐いた。
「ハァハァハァ――」
俺は、震える膝を押さえながらエルナから距離を取る。
「な、何をした……でしゅか?」
エルナはふらつきながらも俺を睨み付けながら立ち上がってくる。
そして、俺はエルナの問いかけに無言で返す。
「なにをしたのか聞いてるでしゅ!」
「ハァハァハァ――、こちらからの質問には一切答えずに、自分の質問に答えてもらえると思っているのですか?」
極度の連続魔法行使の影響で、意識が混濁し始めてきた。
それでも、俺はリルカのエルナの確執だけはそのままにしておく訳にはいかない。
「どうして――、エルナがリルカを恨んでいるのか本当に分からないでしゅか!」
「分からないわ。――だって思いを伝えるために……考えていることや気持ちを伝えるために言葉があるのだから」
俺が使った空手と柔道の混合技をエルナは警戒しているのか一定の距離から近づいてきようとしない。
それは、俺が望んでいる展開。
相手と距離が一定以上開いているのなら――。
そこで俺は、ハッ! とする。
そして横へと飛びのく。
一瞬送れて、俺が立っていた後方の建物が吹き飛ぶ。
……そうだった。
エルナには長距離攻撃がある。
その証拠に、エルナは掌底を吹き飛んだ建物の方へと向けていた。
「いいでしゅ……、リルカ! お前の父親はエルナのパパを殺したでしゅ!」
「――なっ!?」
「知らないとは言わせないでしゅ! それともお前の前では言わなかったでしゅか? エルナはリルカの実の妹じゃないって!」
動揺している間にもエルナは掌底を放ってくる。
俺は、思考しながら避けていく。
掌底を放つ際には溜めが必要らしく、エルナの動きを見ていれば避けることは出来るが……。
「エルナは……、エルナは! ずっと集落で! 一人ぼっちだったでしゅ!」
「……」
エルナの言葉に無言になる。
それよりも、どうしてリルカの父親がエルナの父親を殺したのか理解できない。
それも獣人特有の物なのだろうか?
俺が無言で居ると、それを無言の肯定として受け取ったのか知らないがエルナが口を開く。
「お前が! エルナを同情するたびに! エルナがどんな気持ちだったのか考えたことがあるでしゅか!」
叫びながら掌底を俺に向けて放ってくる。
それらを走りながら避けていると、膝に激痛が走った。
「――くっ!?」
――ずっと感じていなかった膝からの激痛に、顔を歪める。
それと同時に、エルナの掌底が俺目掛けて放たれて、俺の頭上を掠めていく。
「――そ、それは!?」
エルナの動揺を含んだ声色が聞こえてくる。
本能が危険だと察し無意識の内に埋葬の生活魔法を発動してしまっていた。
それにより体は地面の下に落ちてエルナの攻撃を避けることは出来た。
――だが……。
「さすがバレるよな――」
「ど、どうして……。どうしてカンダしゃんがリルカの姿をしているでしゅか?」
地面から這い出ると、青くした表情でエルナが言葉を紡いでいた。
それは、俺に語りかけるというよりも、どちらかと言えば自分自身に語りかけているようにも思える。
「エルナ!」
俺が名前を呼ぶとエルナは、体を一瞬震わせたあと、焦点が定まらない瞳で俺を見てきた。
今の俺が構えているのは空手で言う半身の状態。
つまり相手から見える面積を減らすことで攻撃される箇所を減らすことが目的の立ち方だ。
「エルナ、貴女が私のことを何て思っているのか分からないけど……、そこまで私を憎むなら理由があるのでしょう?」
「……」
エルナの表情が――、無表情になる。
それと同時にエルナの姿が視界から消え去った。
「考えるな……。感じろ――」
俺は自分に言い聞かせるように一人呟く。
それと同時に、右耳が何か硬い物が砕けたような音を拾う。
音がした方向ではなく、左手側に体を回転させながら、後ろ向きで半身になる。
「――ッ!?」
俺の脇の下をエルナが通過する。
その時――、驚愕の表情をエルナは俺に見せてきた。
通過しつつあるエルナの後ろ襟を掴む。
確かにエルナは目に映らない速度で最初動くことが出来る。
――だが、果たしてその速度を維持したまま2撃目に生かせるのかと言うと。そんなのは無理だ。
建物の壁を利用して方向転換をする以上、必ず物体の――、質量の移動の際には必ずロスが発生する。
そのロス分が――。
俺がエルナを捉えられることに繋がる。
それでも、30キロもの重量が100キロを超える質量を伴って突っ込んでくるのだ。
体を魔力で強化しているエルナは問題ないが、エルナの後ろ襟を掴んだ俺の右腕は何度も骨折し肩も脱臼を繰り返している。
――刹那の時間。
持続して固定化の魔法と、回復魔法を連打しながら俺は痛みに耐えながらもエルナの体を右へと引っ張る。
それと同時に、両足の靭帯が切れていくのが感覚的に理解できたが、それすらも回復魔法で修復し、エルナを地面に背中から叩きつけた。
「カハッ!?」
そこで、ようやくエルナが体に受けた衝撃に息を吐いた。
「ハァハァハァ――」
俺は、震える膝を押さえながらエルナから距離を取る。
「な、何をした……でしゅか?」
エルナはふらつきながらも俺を睨み付けながら立ち上がってくる。
そして、俺はエルナの問いかけに無言で返す。
「なにをしたのか聞いてるでしゅ!」
「ハァハァハァ――、こちらからの質問には一切答えずに、自分の質問に答えてもらえると思っているのですか?」
極度の連続魔法行使の影響で、意識が混濁し始めてきた。
それでも、俺はリルカのエルナの確執だけはそのままにしておく訳にはいかない。
「どうして――、エルナがリルカを恨んでいるのか本当に分からないでしゅか!」
「分からないわ。――だって思いを伝えるために……考えていることや気持ちを伝えるために言葉があるのだから」
俺が使った空手と柔道の混合技をエルナは警戒しているのか一定の距離から近づいてきようとしない。
それは、俺が望んでいる展開。
相手と距離が一定以上開いているのなら――。
そこで俺は、ハッ! とする。
そして横へと飛びのく。
一瞬送れて、俺が立っていた後方の建物が吹き飛ぶ。
……そうだった。
エルナには長距離攻撃がある。
その証拠に、エルナは掌底を吹き飛んだ建物の方へと向けていた。
「いいでしゅ……、リルカ! お前の父親はエルナのパパを殺したでしゅ!」
「――なっ!?」
「知らないとは言わせないでしゅ! それともお前の前では言わなかったでしゅか? エルナはリルカの実の妹じゃないって!」
動揺している間にもエルナは掌底を放ってくる。
俺は、思考しながら避けていく。
掌底を放つ際には溜めが必要らしく、エルナの動きを見ていれば避けることは出来るが……。
「エルナは……、エルナは! ずっと集落で! 一人ぼっちだったでしゅ!」
「……」
エルナの言葉に無言になる。
それよりも、どうしてリルカの父親がエルナの父親を殺したのか理解できない。
それも獣人特有の物なのだろうか?
俺が無言で居ると、それを無言の肯定として受け取ったのか知らないがエルナが口を開く。
「お前が! エルナを同情するたびに! エルナがどんな気持ちだったのか考えたことがあるでしゅか!」
叫びながら掌底を俺に向けて放ってくる。
それらを走りながら避けていると、膝に激痛が走った。
「――くっ!?」
――ずっと感じていなかった膝からの激痛に、顔を歪める。
それと同時に、エルナの掌底が俺目掛けて放たれて、俺の頭上を掠めていく。
「――そ、それは!?」
エルナの動揺を含んだ声色が聞こえてくる。
本能が危険だと察し無意識の内に埋葬の生活魔法を発動してしまっていた。
それにより体は地面の下に落ちてエルナの攻撃を避けることは出来た。
――だが……。
「さすがバレるよな――」
「ど、どうして……。どうしてカンダしゃんがリルカの姿をしているでしゅか?」
地面から這い出ると、青くした表情でエルナが言葉を紡いでいた。
それは、俺に語りかけるというよりも、どちらかと言えば自分自身に語りかけているようにも思える。
「エルナ!」
俺が名前を呼ぶとエルナは、体を一瞬震わせたあと、焦点が定まらない瞳で俺を見てきた。
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