おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第二章 赤竜討伐戦

第65話 正妻戦争(15)

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 ――そして……。
 
 彼女らは、俺が地面にばら蒔いたかんしゃく玉を踏んだ。
 踏まれたことで、かんしゃく玉は盛大な音だけを鳴らす。
 耳がいい彼女ら山猫族の女性達は「にゃあああああ」と、叫んでいる。
 しかも路地から、2人の山猫族の女性達が耳を押さえて転がり出てきた。
 どうやら、俺の居る位置を彼女たちは把握していたらしい。
 だが、それは無駄に終わったな。
 
「生活魔法発動! 墓場作成! スライム作成!」
 
 怯えて動けなくなった山猫族の女性達は4人とも俺が作り出した穴の中に落ちていく。
 さらに彼女らの頭上からパソコンの内部を掃除するスライムも大量に追加して落とす。
 これで、ぬるぬるぐちょぐちょになったはずだ。
 しばらくは動けまい。
 
 ――と、いうか人前には出ることは出来ないだろう。
 
 一息ついたところで、山猫族が近づいてきようとした道の反対側から、かんしゃく玉が破裂する音が聞こえてきた。
 
「――なっ!?」
 
 スコープ越しで確認すると、鎧を着た兵士たちが突っ込んできている姿が見えた。
 
「くそっ! 卑怯だろ! 自領の兵士まで導入するとか聞いてないぞ!?」
 
 兵士たちは、次々と足元のかんしゃく玉を踏み潰して音を鳴らしながら確実に近づいてくる。
 正直、鎧を着ていられると困るが……。
 
「そんなこと言っていられるか! 墓場作成! さらにスライムも作成だ!」
 
 射程に入ると同時に生活魔法を発動。
 鎧を着ていることで俊敏な行動が取れない兵士たちは次々と穴の中へと落ちていく。
 落ちていく際に「うああああ」とか「おすなよ! 絶対におすなよ!」とか聞こえてくるが、一度動き出した落下は止まらない。
 物の数秒で鎧を着込んだ兵士たちは全て俺が作り出した穴の中へと落ちた。
 もちろん獣人族よりも多くのスライムを投入してある。
 怪我をしないようにという俺の配慮だ。
 
「――さて、時間まで篭城でもいいんだが……」
 
 俺は、屋根の上に昇ったあと銃口をニードルス伯爵が居るであろう建物のほうへと向ける。
 するとスコープ越しにエルナと、ニードルス伯爵の姿が見えた。
 ニードルス伯爵も簡易的な女性的な鎧を着込んでいるが、動きやすさを重視しているのだろう。
 男が着るようなナイトアーマーではなく、ドレスのような形をした見栄えのいい白銀に光るドレスアーマーを着ている。
 
「ふむ……、武器はランスってところか? とりあえず……、威嚇だけしておくか?」
 
 俺は銃口を、ニードルス伯爵が携えているランスの柄へと向ける。
 数度息を吐いたあと、トリガーを引き絞った。
 
 数瞬遅れて、スコープに移るニードルス伯爵が尻餅をつく。
 その表情は蒼白になっていた。
 
 ――そして、それと同時にスコープ越しにエルナと視線が合った。
 その瞬間、俺のサバゲーで培った本能が告げた。
 
 理由は知らないがエルナは俺の敵であると――。
 
 


 エルナside 






「「エルナしゃま!」」
 
 山猫族と、狼族の少女――、私よりも年齢が低い年少組みが私の名前を呼びながら走って近づいてくる。
 二人とも、呼吸が荒い。
 何かあったのか……。
 
「どうしたでしゅか?」
 
 私は、冷静に周囲を見渡しながら年少組みに声をかける。
すると、山猫族の少女が「――た、たいへんでしゅ!」と、呟くと「山猫族が全員、倒されてしまったでしゅ!」と、報告してきた。
 
「狼族も全滅でしゅ!」
 
 狼族の少女も、報告してくる。
 
「な、何を言っているでしゅか? お姉ちゃんは、肉弾戦では無類の強さを発揮するから、挟撃の作戦を取ったでしゅよ? ――それなのに、どうして全滅しているでしゅか?」
 
 意味が分からない。
 お姉ちゃんは、肉弾戦には秀でている。
 だけど、多勢に無勢なら私の計算通りなら縄で縛って身動きできなくすることくらい可能だったはず。
 
「兎族の兵隊は、どうしているでしゅか?」
「全滅でしゅ!」
「――は?」
 
 二人の報告に私は耳を疑う。
 少なくとも、兎族の女が招集した兵士は50人近い。
 それらを一人で相手できるほど……、お姉ちゃんは強くない……。
 
「――どういう……、ことでしゅか?」
 
 何が起きているのかまったく想像がつかない。
 いくらお姉ちゃんでも、始まって一の鐘も鳴らずに、こちらの手駒を殆ど下すなんて理解できない。
 
「……エルナ殿――」
 
 何が起きたか考えていたところで、ランスを杖代わりに兎族の女が姿を現した。
 
「何があったでしゅか?」
「分からない。目的まで近づいたと思ったら、いきなり周囲に雷鳴が轟くような音が鳴り始めたのだ」
「雷鳴?」
 
 兎族の女が何を言っているのか理解が出来ない。
 雷鳴が鳴ったら、私が居る場所まで音が聞こえてきてもおかしくないからだ。
 
「狼族のところも!」
「山猫族のところも!」
「「大きな雷がなったでしゅ!」」
「それから、どうなったでしゅか?」
「地面に大きな穴が開いて、全員落下したのだ」
 
 私の問いかけに答えてきたのは兎族の女で――。
 報告に来た人間の情報が不確か過ぎて答えが導きだすことが出来ない。









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