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第二章 赤竜討伐戦
第62話 正妻戦争(12)
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途中まで説明したところで、「それって断ったから殺されたってことですか?」と、ベックが言葉を紡いできた。
「それは分からない。ただ、その直後にエルダ王国王宮から、ニードルス伯爵夫妻に対して夜会の招待が届いた。そして、その際に護衛をしたのが冒険者をしていたセフィの旦那だった」
「それっておかしくないですか?」
ベックは、不思議そうな表情をして俺に問いかけてくる。
「ああ、たしかにおかしいな」
俺のベックの言葉に同意する。
そもそも伯爵家くらいの規模なら自前の兵士を持っていて然るべきなのだ。
なのに、自前の兵士ではなく冒険者を雇うのは明らかにおかしい。
「――ただ、問題なのは採掘問題でエルダ王家とニードルス伯爵家は、仲が良くなかった」
「それでも、普通は……」
「ああ、普通なら……だ、自前の兵士を連れていく。少なくとも俺が同じ立場なら……そうする。だが、王家からの招待状には伯爵家の兵士を連れていくことは謀反にあたると書かれていたそうだ。どう考えても襲撃しますと言っているようにしか見えないよな」
「そうですね……」
「そして、襲撃はあった。その時にニードルス夫妻と共に殉職したのがセフィの旦那ガーランドだった。俺とは冒険者に登録したときの同期で、もとは一緒に護衛するはずだったんだが、急用を冒険者ギルドに捻じ込まれてな……」
「それで一人だけで?」
「いや、俺の代わりってことで何人か用意されたらしい。問題は、その代わりってのが冒険者じゃなかった」
「――それって!?」
ベックの言葉に俺は肩を竦める。
「ああ、冒険者ギルドもニードルス夫妻の事件に関与していた可能性が高いってことだ。俺は一人で調査をしていく上でリムルが、俺の代わりの冒険者を手配していることに辿り着いた。そして裏を取っていく内に、冒険者へ本来支払われるはずのお金を着服していることに気がついた。本来なら、そこからガーランドのことについても言及する予定だったんだが、カールダの冒険者ギルドマスターに邪魔された」
「それで事件は……」
「容疑者を絞り込むことはできた。だが、問題はそいつらの潜伏場所だった」
――そう。
エルダ王家や冒険者ギルドまで関与していた事件なのだ。
そうそう尻尾が掴めるわけがなかった。
普通なら――。
「だいたいの当たりはつけていたんだよ」
「それって――」
俺は、ベックの言葉に頷く。
「……犯人は現場に戻る」
「――へ?」
「分からなくていい。つまりだ、何か餌があればセフィの旦那ガーランドを殺した犯人が食いつくと思った。そして丁度、ニードルス伯爵家が夫妻を殺した領民を探しているという情報が入ってきた」
「領民を?」
「ああ、そこで話が食い違っていることに俺も気がついた。どうやら、ニードルス伯爵家の中にも間者が居るってことにな……」
「そうなんですか――」
「そして、その領民っていうのはニードルス伯爵家に仕える兵士だった」
「……それは――」
ベックが顔を青くするのも仕方がない。
自領の兵士が裏切っていたのだから。
「だろう? だから……、俺は徹底的にそいつらを殲滅した。生かしておいて、こちらの情報が漏れたら困るからな」
話が一区切りついたところで、セフィが「その後、カンダさんがうちに来て、旦那の仇を討ったことを教えてくれたんだよ」と、言葉を紡ぐ。
「――で、その時に冒険者として出稼ぎに出ていたガーランドの顔を、セフィの娘であるマリーは知らなかったんだ。――で、冒険者をしていた俺のことを父親と勘違いして今に至るってわけだ」
俺の締めの言葉を聞いたベックは、深い溜息交じりに「そう……だったんですか……」と、気の毒そうに実の姉であるセフィを見る。
「そういうことで、マリーは俺の娘ではないんだ」
「わかりました。それにしても最初に言ってくれれば……」
「それが言えればいいんだが――。とりあえず、マリーがもう少し大きくなるまではベックも黙っていてくれないか? 一応、ガーランドは俺の冒険者同期であったし、そのくらいはな……」
「旦那、分かりました」
ベックが首肯したと同時に部屋の奥から、カタッと音が鳴ったような気がした。
「ベック、何か聞こえなかったか?」
「――いえ、何も……」
「私も聞こえなかったよ?」
セフィもベックも物音を聞いていないようだ。
どうやら、俺の勘違いのようだな。
話が一段落ついたところでセフィが「ところで、こんな夜にアンタが尋ねてきたってことは、何か頼みたいことがあったんだろう?」と、俺に問いかけてきた。
俺は彼女の言葉に頷く。
「ああ、実は――」
セフィに、俺が結婚したことを伝える。
そして、妻となったリルカが獣人である事と、一週間前から体調が悪いことを伝えると彼女は思案顔になった。
「旦那……それって――」
隣で話しを聞いていたベックの表情が強張っていた。
「何か心当たりがあるのか?」
「旦那の奥さんってリルカさんでしたよね?」
「ああ、そうだが……」
「それは分からない。ただ、その直後にエルダ王国王宮から、ニードルス伯爵夫妻に対して夜会の招待が届いた。そして、その際に護衛をしたのが冒険者をしていたセフィの旦那だった」
「それっておかしくないですか?」
ベックは、不思議そうな表情をして俺に問いかけてくる。
「ああ、たしかにおかしいな」
俺のベックの言葉に同意する。
そもそも伯爵家くらいの規模なら自前の兵士を持っていて然るべきなのだ。
なのに、自前の兵士ではなく冒険者を雇うのは明らかにおかしい。
「――ただ、問題なのは採掘問題でエルダ王家とニードルス伯爵家は、仲が良くなかった」
「それでも、普通は……」
「ああ、普通なら……だ、自前の兵士を連れていく。少なくとも俺が同じ立場なら……そうする。だが、王家からの招待状には伯爵家の兵士を連れていくことは謀反にあたると書かれていたそうだ。どう考えても襲撃しますと言っているようにしか見えないよな」
「そうですね……」
「そして、襲撃はあった。その時にニードルス夫妻と共に殉職したのがセフィの旦那ガーランドだった。俺とは冒険者に登録したときの同期で、もとは一緒に護衛するはずだったんだが、急用を冒険者ギルドに捻じ込まれてな……」
「それで一人だけで?」
「いや、俺の代わりってことで何人か用意されたらしい。問題は、その代わりってのが冒険者じゃなかった」
「――それって!?」
ベックの言葉に俺は肩を竦める。
「ああ、冒険者ギルドもニードルス夫妻の事件に関与していた可能性が高いってことだ。俺は一人で調査をしていく上でリムルが、俺の代わりの冒険者を手配していることに辿り着いた。そして裏を取っていく内に、冒険者へ本来支払われるはずのお金を着服していることに気がついた。本来なら、そこからガーランドのことについても言及する予定だったんだが、カールダの冒険者ギルドマスターに邪魔された」
「それで事件は……」
「容疑者を絞り込むことはできた。だが、問題はそいつらの潜伏場所だった」
――そう。
エルダ王家や冒険者ギルドまで関与していた事件なのだ。
そうそう尻尾が掴めるわけがなかった。
普通なら――。
「だいたいの当たりはつけていたんだよ」
「それって――」
俺は、ベックの言葉に頷く。
「……犯人は現場に戻る」
「――へ?」
「分からなくていい。つまりだ、何か餌があればセフィの旦那ガーランドを殺した犯人が食いつくと思った。そして丁度、ニードルス伯爵家が夫妻を殺した領民を探しているという情報が入ってきた」
「領民を?」
「ああ、そこで話が食い違っていることに俺も気がついた。どうやら、ニードルス伯爵家の中にも間者が居るってことにな……」
「そうなんですか――」
「そして、その領民っていうのはニードルス伯爵家に仕える兵士だった」
「……それは――」
ベックが顔を青くするのも仕方がない。
自領の兵士が裏切っていたのだから。
「だろう? だから……、俺は徹底的にそいつらを殲滅した。生かしておいて、こちらの情報が漏れたら困るからな」
話が一区切りついたところで、セフィが「その後、カンダさんがうちに来て、旦那の仇を討ったことを教えてくれたんだよ」と、言葉を紡ぐ。
「――で、その時に冒険者として出稼ぎに出ていたガーランドの顔を、セフィの娘であるマリーは知らなかったんだ。――で、冒険者をしていた俺のことを父親と勘違いして今に至るってわけだ」
俺の締めの言葉を聞いたベックは、深い溜息交じりに「そう……だったんですか……」と、気の毒そうに実の姉であるセフィを見る。
「そういうことで、マリーは俺の娘ではないんだ」
「わかりました。それにしても最初に言ってくれれば……」
「それが言えればいいんだが――。とりあえず、マリーがもう少し大きくなるまではベックも黙っていてくれないか? 一応、ガーランドは俺の冒険者同期であったし、そのくらいはな……」
「旦那、分かりました」
ベックが首肯したと同時に部屋の奥から、カタッと音が鳴ったような気がした。
「ベック、何か聞こえなかったか?」
「――いえ、何も……」
「私も聞こえなかったよ?」
セフィもベックも物音を聞いていないようだ。
どうやら、俺の勘違いのようだな。
話が一段落ついたところでセフィが「ところで、こんな夜にアンタが尋ねてきたってことは、何か頼みたいことがあったんだろう?」と、俺に問いかけてきた。
俺は彼女の言葉に頷く。
「ああ、実は――」
セフィに、俺が結婚したことを伝える。
そして、妻となったリルカが獣人である事と、一週間前から体調が悪いことを伝えると彼女は思案顔になった。
「旦那……それって――」
隣で話しを聞いていたベックの表情が強張っていた。
「何か心当たりがあるのか?」
「旦那の奥さんってリルカさんでしたよね?」
「ああ、そうだが……」
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