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第二章 赤竜討伐戦
第58話 正妻戦争(8)
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「なん……だと……!?」
つまり石鹸や香辛料を作って町の修理費を支払うだけではなく、他に懲罰があるということか……。
面倒だな――。
「そこで! 全てを解決する方法があるのです」
「解決する方法が正妻戦争か? それで、ニードルス伯爵を妻にしろと?」
「はい! ご自分の領地になれば、政策の失態ということで力押しができますから!」
ニードルス伯爵の言葉には多々突っ込みどころが存在している。
たが要点は、しっかりと抑えている。
――ただ、どこかおかしい。
まるで、突然話が決まって、それに合わせるかのようにストーリーを組んだように思えてしまうのだ。
「それで……、正妻戦争というのはどういうものなんだ?」
とりあえず話を聞くだけ聞いてから考えてみるとしよう。
何も分からないと判断のつけようもないからな。
「それでは、こちらに――」
ニードルス伯爵は近づいてくると俺の手を握り締め最初に彼女と話合いをした建物の仲に案内してくる。
仕方なく、彼女に案内されたまま建物の中に入り中央に配置されていた椅子に腰を下ろす。
俺が座るのを見届けたあと、ニードルス伯爵も椅子へ腰掛けると先ほど俺に見せてきた羊皮紙をテーブルの上に広げた。
「――これは……、どうして開拓村エルの獣人達の名前が全部書いてあるんだ?」
獣人達の名前のほかに、リアやソフィアの名前も書いてある。
さらに言うなら獣人達の名前の下には、古風にも血判が押されていて何か重要な書類なのではないのか? と思ってしまう。
「エルナやリルカ、それにリアやソフィアには……」
「一応、参加される可能性がある方の名前を全部、書いておきました。朱印が押されていないのは、確認が取れていないだけです」
「――ん? 確認?」
「はい。ここに名前を書いている人は、正妻戦争を望む方です。ちなみに私の名前も書かれています!」
「そう……なのか――」
あまりの急展開すぎる事態に溜息しかでない。たしかにニードルス伯爵は、俺が王国に捕まらないように取り計らってくれたりと、俺のことを案じてくれていたり、ソドムの住民のことを考えている。
だが強引すぎるのは好きではない。
しかし、受けないという選択肢がないのも事実であって――。
「ちなみに受けずに王国に捕まった場合、どのくらいお勤めをすることになるんだ?」
「私と結婚しない場合は、領内騒乱罪として死刑でしょうか?」
――おいおい……。
受けない以外に選択肢が無いぞ?
もう、いっそのこと別の国いくか?
震える小さな手で、リルカの妹であるエルナが俺の腕を掴んでくると「カンダしゃん! お姉ちゃんが負けるわけがないでしゅ! それにエルナは、お姉ちゃんとカンダしゃんの味方でしゅ!」と、強い口調で言葉を紡いできた。
実の姉が不幸になってしまうかも知れないのに――。
エルナは気丈に体を震わせながらも、不安な眼差しで俺を見上げてきていて――。
「だが……」
俺は、正直――、今回の正妻戦争は出来すぎている気がしている。
まるで俺やリルカを陥れるように、影で動いている奴がいるようにしか思えない。
俺の40年に及ぶ人生経験が言っている。
犯人は間違いなく正妻戦争の羊皮紙に名前を書いて血判を押した10人の中にいる! と――。
そして、こういう時の俺の感は6割くらい当たる。
――問題は10人もいて犯人が分からないということだ。
くそっ! 俺の長年の人生経験でも判断がつかないなんて……。
「カンダしゃん……、エルナがお姉ちゃんのサポートをするから負けることはないでしゅ! だから男らしく決めたほうがいいでしゅ!」
「男らしく?」
「でしゅ!」
「だが、正妻戦争がどんな物か分からないんだぞ?」
「殴り合いでしゅ! 相手が、折れるまで殴るか気絶させれば、それで勝ちでしゅ! それで最後まで立っていた人が勝者で正妻になれるでしゅ!」
「なるほど……」
ずいぶんと野蛮な勝ち負けの決め方をするんだな……。
正直ついていけない。
「カンダしゃん、大丈夫でしゅ! エルナがついているでしゅ!」
なんだが、エルナがずいぶんとやる気のようだ。
一瞬、エルナが黒幕なのでは? と思ってしまった。
俺は、相当疲れているようだ。
まさか実の姉をサポートするとか言って後ろから撃つような真似を、エルナがするわけがない。
そして、ニードルス伯爵と裏で繋がっているようなことがあるわけがない。
「――俺は、ずいぶんと疲れているようだな……」
物事を悪いほう悪いほうに考えすぎている気がする。
俺の義理の妹であるエルナがリルカを陥れるような最低な真似をするはずがない。
そんなことを一瞬でも思ってしまった自分のことを軽蔑してしまう。
「カンダしゃんは、疲れているでしゅ! ここはエルナとお姉ちゃんに任せるでしゅ!」
「だが、リルカが勝ったら結局、俺は捕まるんじゃないか?」
「神田さん、その点は大丈夫です。私が負けましたら第二夫人、第三夫人でも構いませんので――、それなら一応は神田さんもニードルス伯爵家の連なりとなりますので免除されます」
つまり石鹸や香辛料を作って町の修理費を支払うだけではなく、他に懲罰があるということか……。
面倒だな――。
「そこで! 全てを解決する方法があるのです」
「解決する方法が正妻戦争か? それで、ニードルス伯爵を妻にしろと?」
「はい! ご自分の領地になれば、政策の失態ということで力押しができますから!」
ニードルス伯爵の言葉には多々突っ込みどころが存在している。
たが要点は、しっかりと抑えている。
――ただ、どこかおかしい。
まるで、突然話が決まって、それに合わせるかのようにストーリーを組んだように思えてしまうのだ。
「それで……、正妻戦争というのはどういうものなんだ?」
とりあえず話を聞くだけ聞いてから考えてみるとしよう。
何も分からないと判断のつけようもないからな。
「それでは、こちらに――」
ニードルス伯爵は近づいてくると俺の手を握り締め最初に彼女と話合いをした建物の仲に案内してくる。
仕方なく、彼女に案内されたまま建物の中に入り中央に配置されていた椅子に腰を下ろす。
俺が座るのを見届けたあと、ニードルス伯爵も椅子へ腰掛けると先ほど俺に見せてきた羊皮紙をテーブルの上に広げた。
「――これは……、どうして開拓村エルの獣人達の名前が全部書いてあるんだ?」
獣人達の名前のほかに、リアやソフィアの名前も書いてある。
さらに言うなら獣人達の名前の下には、古風にも血判が押されていて何か重要な書類なのではないのか? と思ってしまう。
「エルナやリルカ、それにリアやソフィアには……」
「一応、参加される可能性がある方の名前を全部、書いておきました。朱印が押されていないのは、確認が取れていないだけです」
「――ん? 確認?」
「はい。ここに名前を書いている人は、正妻戦争を望む方です。ちなみに私の名前も書かれています!」
「そう……なのか――」
あまりの急展開すぎる事態に溜息しかでない。たしかにニードルス伯爵は、俺が王国に捕まらないように取り計らってくれたりと、俺のことを案じてくれていたり、ソドムの住民のことを考えている。
だが強引すぎるのは好きではない。
しかし、受けないという選択肢がないのも事実であって――。
「ちなみに受けずに王国に捕まった場合、どのくらいお勤めをすることになるんだ?」
「私と結婚しない場合は、領内騒乱罪として死刑でしょうか?」
――おいおい……。
受けない以外に選択肢が無いぞ?
もう、いっそのこと別の国いくか?
震える小さな手で、リルカの妹であるエルナが俺の腕を掴んでくると「カンダしゃん! お姉ちゃんが負けるわけがないでしゅ! それにエルナは、お姉ちゃんとカンダしゃんの味方でしゅ!」と、強い口調で言葉を紡いできた。
実の姉が不幸になってしまうかも知れないのに――。
エルナは気丈に体を震わせながらも、不安な眼差しで俺を見上げてきていて――。
「だが……」
俺は、正直――、今回の正妻戦争は出来すぎている気がしている。
まるで俺やリルカを陥れるように、影で動いている奴がいるようにしか思えない。
俺の40年に及ぶ人生経験が言っている。
犯人は間違いなく正妻戦争の羊皮紙に名前を書いて血判を押した10人の中にいる! と――。
そして、こういう時の俺の感は6割くらい当たる。
――問題は10人もいて犯人が分からないということだ。
くそっ! 俺の長年の人生経験でも判断がつかないなんて……。
「カンダしゃん……、エルナがお姉ちゃんのサポートをするから負けることはないでしゅ! だから男らしく決めたほうがいいでしゅ!」
「男らしく?」
「でしゅ!」
「だが、正妻戦争がどんな物か分からないんだぞ?」
「殴り合いでしゅ! 相手が、折れるまで殴るか気絶させれば、それで勝ちでしゅ! それで最後まで立っていた人が勝者で正妻になれるでしゅ!」
「なるほど……」
ずいぶんと野蛮な勝ち負けの決め方をするんだな……。
正直ついていけない。
「カンダしゃん、大丈夫でしゅ! エルナがついているでしゅ!」
なんだが、エルナがずいぶんとやる気のようだ。
一瞬、エルナが黒幕なのでは? と思ってしまった。
俺は、相当疲れているようだ。
まさか実の姉をサポートするとか言って後ろから撃つような真似を、エルナがするわけがない。
そして、ニードルス伯爵と裏で繋がっているようなことがあるわけがない。
「――俺は、ずいぶんと疲れているようだな……」
物事を悪いほう悪いほうに考えすぎている気がする。
俺の義理の妹であるエルナがリルカを陥れるような最低な真似をするはずがない。
そんなことを一瞬でも思ってしまった自分のことを軽蔑してしまう。
「カンダしゃんは、疲れているでしゅ! ここはエルナとお姉ちゃんに任せるでしゅ!」
「だが、リルカが勝ったら結局、俺は捕まるんじゃないか?」
「神田さん、その点は大丈夫です。私が負けましたら第二夫人、第三夫人でも構いませんので――、それなら一応は神田さんもニードルス伯爵家の連なりとなりますので免除されます」
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