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第二章 赤竜討伐戦
第50話 農耕を始めよう(14)
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リルカが少し怒った口調で語ってくるが、昨日のように殺気を放っていないことから、少しは落ち着いたのだろう。
「わかった。次回から気をつける」
俺の言葉に「分かりました。それならいいです」と、リルカが体を預けてくる。
そして彼女に、昨日は何があったのか語りかけようとしたところで、寝息が聞こえてきた。
もちろん、寝息を立てているのは俺の妻であるリルカで、昨日は俺が気絶してから何が起きたのか聞こうとしていたが、彼女が寝てしまったので俺は内心溜息をつきながらもリルカが目を覚ますのを待つことにする。
そんなことを思った時に、扉が三度ノックされ「カンダしゃん、少しいいでしゅか?」と、エルナの声が聞こえてきた。
「ああ、別に構わないが」
「入るでしゅ」
リルカの妹であるエルナが断りを入れて部屋の中に入ってくると、俺とリルカを見て「お邪魔だったでしゅか?」と、語りかけてきた。
たしかに、寝ている男の上の――、しかも腰の上に乗って体を預けている女の姿を見れば、そうとしか思えないのは世の摂理だろう。
ただ、俺とリルカも服を着ているし、やましい事など一週間くらいしていない。
至って健全な状態だ。
誤解もいいところであり、そこは断固として「お邪魔ではない」と、発言させてもらう。
俺の言葉に、エルナが近づいてくると布団を捲って「そうでしゅか……、たしかに何もしてないようでしゅね……」と、言ってくる。
「エルナ」
「何でしゅか?」
「お前は、まだ子供なんだからあまりそういうのはよくないぞ?」
「――大丈夫でしゅ! こういうのは、よくおかあしゃんから教わったでしゅ!」
エルナの言葉に、俺は溜息をつきながら思う。
一体、自分の娘に何を教えているんだ? と――。
「それで、要件は何なんだ?」
「宿屋を用意してくれた人が、カンダしゃんに会いたいらしいでしゅ」
「……そうか――」
まずいな。
事前情報が何もないというか、町が石鹸に飲み込まれていく光景を見たあとの記憶がまったくないから、相手との交渉をどうすればいいのか分からないぞ?
しかも、これだけエルナと話をしていてリルカが目を覚まさないという事は余程疲れているのだろう。
「エルナ、お前に頼みがあるんだが――」
「何でしゅか?」
「少し、俺と付き合ってくれないか?」
「――!?」
突然、エルナが自分の胸を触り始めて「まだ、小さいのに問題ないのでしゅか?」と意味不明なことを言い出した。
「あれだ――。昨日は俺が気絶した後、獣人の女性達もエルナも町がどんな状況になったのか、宿屋を用意してくれるまで一通り見ていたんだろう?」
「そうでしゅけど……」
俺の言葉を聞いているエルナが、胸を触りながら「まるで成長していない……」と、独り言を言いながら、それでも俺の問いかけに答えてくる。
「それなら、エルナでいい」
「わ、わわ、私でいいのでしゅか?」
幼女が目を輝かせて俺に「ほんとうに、まだ成長してないのにいいでしゅか?」と問いかけてくる。
「ああ、エルナじゃないと駄目だ」
「分かったでしゅ! お姉ちゃんの分までエルナは頑張るでしゅ!」
「それと勘違いさせたら困るから言っておくが、別にエルナを嫁に欲しいとかそういう意味じゃないからな」
「ふぇ――!?」
とりあえず、勘違いさせたらいけないと思いエルナにはきちんと伝えておく。
以前にも問題になったからな。
ハッキリとさせておくのがいいだろう。
「カンダしゃんのバカ!」
何故か分からないが、俺はエルナに殴られた。
やはり思春期の女性は、扱いが難しいな――。
頬を押さえながら回復魔法を発動させつつ、部屋を出ようとすると怒っていたエルナが後ろから着いてくる。
「――ま、まだ殴り足りないのか?」
「そうじゃないでしゅ! カンダしゃんは、これから領主と話にいくでしゅよね?」
「まぁ、そうだが……」
リルカの妹であるエルナの問いかけに答えながら俺は思考していく。
俺の現在置かれている立場は、悪くはないはずだ。
伯爵令嬢であり当主であるスザンナは、俺が石鹸を大量に作ったという事実を知らない。
アイテムボックスから出したと思っている。
そして、アイテムボックスは容量が決まっていて伯爵邸だけでなく町の一部まで呑み込むほどの量は、アイテムボックス内には入れられない。
――以上の点から、俺が原因だとはスザンナは思っていない。
もし、思っていたとしたら、俺は宿屋ではなく牢獄内のベッドで目を覚ましていたはずだ。
つまり、思ったよりも悪くは思われていないということに繋がる。
ただ、問題点としては作ってしまった莫大な量の石鹸をどうするのか? と、言うことだ。
一応、取引自体は約束として存在はしているが引き渡しはしていない。
そのことから、町や伯爵邸が破壊された原因を俺に求めることも可能であるんだが――。
その変は魔王が! と、でっちあげて話を逸らすのがいいだろう。
「ふむ――」
そこまで考えたところで、俺は思わず歩みを止めて考える。
「わかった。次回から気をつける」
俺の言葉に「分かりました。それならいいです」と、リルカが体を預けてくる。
そして彼女に、昨日は何があったのか語りかけようとしたところで、寝息が聞こえてきた。
もちろん、寝息を立てているのは俺の妻であるリルカで、昨日は俺が気絶してから何が起きたのか聞こうとしていたが、彼女が寝てしまったので俺は内心溜息をつきながらもリルカが目を覚ますのを待つことにする。
そんなことを思った時に、扉が三度ノックされ「カンダしゃん、少しいいでしゅか?」と、エルナの声が聞こえてきた。
「ああ、別に構わないが」
「入るでしゅ」
リルカの妹であるエルナが断りを入れて部屋の中に入ってくると、俺とリルカを見て「お邪魔だったでしゅか?」と、語りかけてきた。
たしかに、寝ている男の上の――、しかも腰の上に乗って体を預けている女の姿を見れば、そうとしか思えないのは世の摂理だろう。
ただ、俺とリルカも服を着ているし、やましい事など一週間くらいしていない。
至って健全な状態だ。
誤解もいいところであり、そこは断固として「お邪魔ではない」と、発言させてもらう。
俺の言葉に、エルナが近づいてくると布団を捲って「そうでしゅか……、たしかに何もしてないようでしゅね……」と、言ってくる。
「エルナ」
「何でしゅか?」
「お前は、まだ子供なんだからあまりそういうのはよくないぞ?」
「――大丈夫でしゅ! こういうのは、よくおかあしゃんから教わったでしゅ!」
エルナの言葉に、俺は溜息をつきながら思う。
一体、自分の娘に何を教えているんだ? と――。
「それで、要件は何なんだ?」
「宿屋を用意してくれた人が、カンダしゃんに会いたいらしいでしゅ」
「……そうか――」
まずいな。
事前情報が何もないというか、町が石鹸に飲み込まれていく光景を見たあとの記憶がまったくないから、相手との交渉をどうすればいいのか分からないぞ?
しかも、これだけエルナと話をしていてリルカが目を覚まさないという事は余程疲れているのだろう。
「エルナ、お前に頼みがあるんだが――」
「何でしゅか?」
「少し、俺と付き合ってくれないか?」
「――!?」
突然、エルナが自分の胸を触り始めて「まだ、小さいのに問題ないのでしゅか?」と意味不明なことを言い出した。
「あれだ――。昨日は俺が気絶した後、獣人の女性達もエルナも町がどんな状況になったのか、宿屋を用意してくれるまで一通り見ていたんだろう?」
「そうでしゅけど……」
俺の言葉を聞いているエルナが、胸を触りながら「まるで成長していない……」と、独り言を言いながら、それでも俺の問いかけに答えてくる。
「それなら、エルナでいい」
「わ、わわ、私でいいのでしゅか?」
幼女が目を輝かせて俺に「ほんとうに、まだ成長してないのにいいでしゅか?」と問いかけてくる。
「ああ、エルナじゃないと駄目だ」
「分かったでしゅ! お姉ちゃんの分までエルナは頑張るでしゅ!」
「それと勘違いさせたら困るから言っておくが、別にエルナを嫁に欲しいとかそういう意味じゃないからな」
「ふぇ――!?」
とりあえず、勘違いさせたらいけないと思いエルナにはきちんと伝えておく。
以前にも問題になったからな。
ハッキリとさせておくのがいいだろう。
「カンダしゃんのバカ!」
何故か分からないが、俺はエルナに殴られた。
やはり思春期の女性は、扱いが難しいな――。
頬を押さえながら回復魔法を発動させつつ、部屋を出ようとすると怒っていたエルナが後ろから着いてくる。
「――ま、まだ殴り足りないのか?」
「そうじゃないでしゅ! カンダしゃんは、これから領主と話にいくでしゅよね?」
「まぁ、そうだが……」
リルカの妹であるエルナの問いかけに答えながら俺は思考していく。
俺の現在置かれている立場は、悪くはないはずだ。
伯爵令嬢であり当主であるスザンナは、俺が石鹸を大量に作ったという事実を知らない。
アイテムボックスから出したと思っている。
そして、アイテムボックスは容量が決まっていて伯爵邸だけでなく町の一部まで呑み込むほどの量は、アイテムボックス内には入れられない。
――以上の点から、俺が原因だとはスザンナは思っていない。
もし、思っていたとしたら、俺は宿屋ではなく牢獄内のベッドで目を覚ましていたはずだ。
つまり、思ったよりも悪くは思われていないということに繋がる。
ただ、問題点としては作ってしまった莫大な量の石鹸をどうするのか? と、言うことだ。
一応、取引自体は約束として存在はしているが引き渡しはしていない。
そのことから、町や伯爵邸が破壊された原因を俺に求めることも可能であるんだが――。
その変は魔王が! と、でっちあげて話を逸らすのがいいだろう。
「ふむ――」
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