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第二章 赤竜討伐戦
第45話 農耕を始めよう(9)
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「いくらって……、お金じゃないだろ? 子供達が食事の前に石鹸で手を洗ってくれればと思って作っていたからな……、あまり高いと買えないだろ? 100個で金貨1枚ってところだな――」
「100個で金貨1枚!?」
俺の言葉を聞いたニードルス伯爵が驚きの声を上げていた。
まぁ俺も金貨1枚は高いと思ったが、100個で金貨1枚なら1個あたり銭貨10枚くらいだからな。
銭貨10枚なら日本円で換算すると100円くらいだし、ほぼ大抵の人間なら買えると思う。
「あ、あの――」
「どうかしたのか?」
「それで採算は取れるのですか?」
「だから、採算じゃなくてだな……、石鹸は病気などの予防にも繋がるし体の皮脂を洗い流すことで衛生面にも使える。それは巡り巡って伝染病の予防にも繋がり結果的に俺や身の回りの人間を助けることにもなるから、ボッタクリをしても仕方ないだろ?」
「――そうだったのですね……」
「まぁ、偽善と言えば偽善かも知れないがな」
肩を竦めながら彼女に告げた。
「いえ! とても素晴らしい事だと思います。これは、伴侶としてではなくて……、一人の男性として素晴らしいと思いますよ? そうですね! 石鹸ですが、どのくらいでご用意できるものなのでしょうか?」
「そうだな。一応、作り置きが多少あるからな……、いくつくらい必要なんだ?」
「そうですね。共同井戸にも置いておきたいので……1000個くらいは――」
「わかった。そのくらいなら作り置きがあるから問題ない」
「ありがとうございます。それで御代は――」
彼女の言葉に考え込む。
正直、一週間近い行動で俺はかなり疲れているしエルナやリルカそして獣人達も疲れているだろう。
何せ、重い塩をずっと運んできたのだ。
「そうだな。頼みたいことは二つ」
「二つですか?」
「ああ、俺達が売買するものに対して税金は免除してほしい。代わりに石鹸に関しては優先的にニードルス伯爵に卸すことにする」
「そうですか……、それでもう一つは?」
「実は長旅で疲れているんだ。俺と獣人達と数日間、滞在させてもらえないか?」
「――!? わかりました! ぜひお泊りください! それで石鹸の費用ですが……」
「ああ、冒険者ギルドに卸していた金額で卸す。それがいいだろ?」
「それは――!? よろしいのですか? そんな価格で……」
「ああ、問題ない」
俺達が売買する物に税金が掛からないだけでも十分すぎるほどの価値がある。
なにせ、これから俺達が扱うものはソルティが作る香辛料だからな。
石鹸なんて副産物にすぎない。
「わかりました。すぐにお部屋を用意させて頂きますね」
鉄仮面の下からは、少しくぐもっていたが、弾んだ声が聞こえてきた。
女神ソルティの優雅な一日
――ソドムの町から一週間の距離に存在する開拓村エル。
神田栄治を筆頭に、多くの獣人が出稼ぎに出かけてしまった村は、閑散としていた。
そんな閑散とした村にも、やはり毎日のように夜が来ては太陽が昇る。
太陽が昇れば、職人が建てた訳でもない建築物の隙間からは日差しが入ってくるのだ。
その光は、ログハウス内で寝ていた人物を覚醒させるには十分で――。
「――まぶしい……」
私は、瞼を擦りながら丸太の上に敷かれた毛皮の上で体をゆっくりと伸ばす。
外から見て人間と大差の無い作りをしている私の体は、実際のところ人とはまったく異なったプロセスから作られている。
この世界アガルタ。
その霊長類の万物的頂点として現在、位置づけられているのがメディデータと呼ばれる種族。
彼らは、魔法の源とも言える精神物質の除去のために作られていて、いまもその仕事を無意識ながらもしている。
ただ、世代が交代しすぎたせいで実際の目的は遥か昔に忘れ去られているのが現状で――。
「別にいいよね――」
私は、頭を左右に振る。
正直なところ、いまさら神代文明の記憶を思い出しても仕方ない。
それよりも、今やらないといけないのは他にある。
ログハウスの扉を開けて外へ出る。
そのあと、もう一軒のログハウスの扉を開けて中を物色することにする。
「これは!?」
私は、神田栄治とリルカという小娘が一緒に暮らしている家の中をチェックしながら、とんでもない物を見つけてしまう。
それは――、なんと! まだ洗濯をしていない神田栄治の下着であった。
「くんくん。間違いないわ、これは間違いなく神田栄治の匂い……。まったく、あの小娘は、妻と名乗って起きながら炊事洗濯が不十分なんだからっ」
私は、妻としての仕事をキチンとこなしていないリルカという小娘に少しだけ苛立ちながらも、あとで私が使う物として彼の下着をスカートのポケットの中へと仕舞う。
「本当に駄目な自称妻です。神田栄治が私を大事な人! とか大事な女神! とか言っていたから、将来は私が正妻になるのは決まっているから、今は、目を瞑っておいてあげましょう。そう、正妻の余裕という奴です」
さらにログハウスの中を物色していくと、神田栄治が使っていたと思われる木で作られた歯ブラシや、毛布に小物がお宝のように輝いている。
これは、正妻として将来取り仕切る必要が出てくる私にとって先行投資というか、そんなものでしょう。
とりあえずアイテムボックスを開いて、中に全部入れていく。
神田栄治が戻ってくるまで2週間もある。
つまり、その間、私が色々なことに使っても問題ないということ。
きちんと返すときには綺麗にして返しましょう。
だいたい漁り終わってから、私は額に浮かび上がってきた汗をふき取る。
そしてログハウスを出ると日は、頭上まで昇っていた。
どうやら、かなり一生懸命、色々な物を選別していたこともあり時間を浪費してしまったみたい。
私はスカートのポケットから、種と下着を間違えて取り出してしまう。
「おっと――」
思わす今晩のおかずを土の上に落とすところでした。
反対側のスカートから、小さな種がたくさん入った麻袋を取り出す。
「このへんでいいですか……」
私は、自分自身に語りかけるように袋の中から種を掴んで周りへと均等に投げていく。
「こんなものですね」
私は地面の上に落ちた無数の種を見ながら手を上げる。
「成長促進!」
私は、回復魔法を発動させる。
この世界――、昔の理を忘れたメディデータには使うことが出来ない魔法。
それは魔法とも呼べない単純な細胞増殖を促す物。
私が声をかけると同時に、無数の種は一気に発芽し地面に根を下ろし広げていく。
そして、1分後には開拓村エル周辺には無数の豆やじゃがいもや小麦畑が広がっていた。
私は、その様子を見ながら地面の上に膝をつく。
これで彼が戻ってきたら「ソルティ、すばらしいよ! 愛している! 結婚してくれ! 正妻で!」とか言ってくれるはず。
言ってくれなかったら、膝に抱えている呪いを交渉に持ち出すことにしましょう。
男女の恋愛には、駆け引きが必要とか私を作ったマスターも言っていたし。
それに、私のことを大事と言っていたんだもの。
イエス以外の答えは考えられないし……。
神田栄治が帰ってくるのが楽しみ!
ニードルス伯爵スザンナ嬢の憂鬱
部屋から出ていった神田栄治の後ろ姿を見送ったあと、私は執務室の椅子に座る。
かつては鉱物産出で栄えていたニードルス伯爵家が作らせた豪勢な椅子。
それは、人前で見せる物だからと、時代を経ても輝きを失わない金で作られていた。
金は元々、ニードルス伯爵領で取れていたもの。
それが近年取れなくなってしまい、失業者が大幅に増えている。
そして経済の悪化に伴い、治安も急速に悪くなっていた。
もちろん炊き出しや領内の仕事――警備などの仕事を作ってはいるけど、収入が激減している領内としては、雇用できる人数にも限度がある。
私は、椅子に座りながら考えてしまう。
この椅子を一つ売れば、赤字財政も少しは埋められるのではと――。
それと同時に頭を振る。
ソドムの町に、大小20を超える村を領内で抱えているニードルス伯爵領では、いまさら一つの金で作られた椅子を売ったくらいでは、王都の豪商に借りているお金を返済することもままならない。
「それでも、今回の入金は何とかなりそうです……」
私は、執務室の机に肘をつく。
エルダ王国の王家が、ダンジョンから産出される魔石で収入を得て外貨を得ていたのは誰でも知っている。
でも、多くの冒険者が別大陸から足を伸ばしてきた結果、急速にダンジョンは攻略されてしまい魔石の産出量が激減。
エルダ王家も、20年前から国家運営という観点で見れば、かなり苦しい立場におかれていた。
そのエルダ王家の経済状況が急速に回復し始めたのは、港町カルーダで作られる石鹸のおかげであることは社交界では有名な話であった。
私は、椅子から立ち上がり壁に掛けてある鏡の前に移動する。
そして、鉄仮面を脱ぐと、不吉の象徴とされる黒く長い髪が音もなく腰まで広がり落ちる。
鏡の前には、私の手の平よりも2倍ほど長く白い。
そんな兎の耳が頭から生えていた。
幼少期から興奮すると、兎の耳と臀部に兎の丸い尻尾が生えてきてしまう特異体質な私は、両親から社交界の出入りを禁止されていた。
由緒正しいニードルス伯爵家に、獣人の血が先祖返りだとしても混じっていることは、非常に忌避されたから。
――さらに、私の髪の色。
漆黒の色合いをしていて、太陽の日差しを反射してしまう様は、まるで神々の恩寵を否定するかのようであり、闇の眷属に近いという意味合いで嫌われていた。
「はぁ、どうして――、私の体は貧相なのでしょうか……」
20歳とは思えないほど、胸も腰も殆ど育っていない。
成人女性よりも一回りほど胸も腰も貧相。
それに、鼻の高い女性が多い中――、どうしてか知らないけど私の鼻はそんなに高くない。
一重が美人の証拠と言われているエルダ王国で、両親には似ずに二重で生まれてしまったし睫も眉も細く長い。
まるで、この世界の悪いと思われるものを全て集めて作られたかのような容姿に、私は耐え切れなくなって、鉄仮面をつけた。
「神田栄治さんの連れていた狐族の女性は、とても美人でした……。それに身体つきも、いつ身ごもってもいいようにでしたし――、はぁ……」
思わず溜息が出てしまう。
「それにしても……。人間の男性で獣人の女性を妻にする人がいるなんて……」
私は思わず考えてしまう。
獣人が良いなら、獣人枠で私も妻になれるかもしれないと――。
でも……、私は自分の貧相な体とかわいらしくない。
「スザンナ、駄目よ! 私のことよりも今は神田栄治に定期的に石鹸を卸してもらって、それで領民と伯爵家の赤字を何とかしないと!」
私は椅子に座り、羊皮紙に予定の収支を書いていく。
「えっと……金貨1枚で銀貨10枚だから……、銭貨10枚で石鹸が一つ購入できて……、エルダ王国が石鹸を欲しがっているから――、たしか外国では金貨10枚くらいで売れたはずだから……。金貨5枚くらいなら王家に納品できる? そしたら……、1000個なら金貨5000枚!?」
金貨5000枚あれば――。
半年分のニードルス伯爵の税収に相当する。
それだけあれば、たくさん雇用も出来るけど……。
「……いいのかな? 神田さん、子供達の事とか考えて安く販売してくれると言っていたのに……。いくらなんでも、これは裏切りだよね……」
私は机の上に寝そべる。
両親が、治安が悪化した領内で王都に向かっている途中に職を失った領民に殺された事は、記憶に新しい。
領民の怒りの矛先が、両親に向かったのは分かる。
だって、領地を富ませて運営するのは領主の仕事なのだから。
それでも、当時12歳に過ぎなかった私は、復讐心に駆られてしまい少ない手勢で、両親を殺した領民を探した。
少ない手勢しか用意出来なかったのは、その頃にはニードルス伯爵の経済は破綻寸前だったから。
そして結果として、領民と通じていた兵士に私の身は売られてしまい危機一髪のところで救ってくれたのが、神田栄治であった。
彼は、領民を追い払い兵士を叩きのめすと、ソドムの町まで用事があるからと連れてきてくれた。
もちろん無償で――。
その頃は、まだ突発的に兎耳や尻尾が出ることはなかった。
だから、鉄仮面をつけていなかったけど不細工な顔には変わりは無かった。
その頃に彼は私のことを「日本人形みたいだな――、成長したらヤマトナデシコになりそうだな」と言っていた。
まだ12歳の私には、彼の言っている言葉は理解できなかった。
――でも、どこか懐かしそうな声で私にやさしく語りかけてきたのは今でも覚えている。
そして、無事にソドムの町に送り届けてもらったあと、私は彼を調べた。
彼は、港町カルーダの冒険者ギルドに所属していた。
そのとき、彼は女性2人とパーティを組んでいたらしい。
私と出会った時に、一人だったのは偶々だったのだろう。
しばらくソドムの町で逗留していた彼は多くの知らない物を作っては商業ギルドに無償で提供していた。
それが、後の石鹸と呼ばれるもので――。
汚れがよく落ちて良い匂いがするとすぐに人気になった。
私も一個だけ使っていたから分かった。
――これは、とても良い物だ。
神田栄治という冒険者に石鹸作成の依頼をお願いするついでに、命を助けられたお礼を言おうとしたけど、すでに彼はソドムの町を経った後だった。
どうしても会いたかった私は、石鹸を理由付けに彼が来たら連れてくるように兵士へ命令した。
――それから8年後。
彼と久しぶりにあった私は彼の容姿を見て、一目で心臓が高鳴った。
彼も私も同じ黒い髪を持ちながら、無数の白く高貴な色を持つ髪を生やしていたから。
黒の中に一筋の光明のように存在する白い髪の色は、天空の太陽神が持つ光の色。
それは黒の中に存在するからこそ映える。
彼は、何年も人のために尽くしてきたからこそ、それらを手にすることが出来たのかもしれない。
それは彼の言動からも分かってしまう。
自分が会いたいと思っていた、神田栄治。
感謝の言葉を言いたかっただけなのに。
いざ前にしてしまうと、口から出てきたのは領民を如何にして飢えさせないようにするかということだけだった。
領主としては正しいのかも知れない。
でも……、それは自分自身の思いに対する裏切りだ。
「私は最低の人間です……。助けられたことに対して「ありがとう」と、言う言葉も言わないで彼を利用しようとするなんて――」
8年も思い続けてきたのに、自分の思いを裏切って彼の子供達の衛生面を考えてという優しささえ踏み躙って、嘘をついて彼の思いをお金に換えようとしている。
自分自身が嫌いになりそう――。
――そう。
心の片隅で自責の念に押しつぶされながらも、つい考えてしまう。
彼が、しばらく逗留してくれて、石鹸の生成方法が分かれば、多くの領民を救えるかもしれないと――。
「……私は、最低の人間です……」
私は、声を押し殺しながら言葉を紡いでいた。
「100個で金貨1枚!?」
俺の言葉を聞いたニードルス伯爵が驚きの声を上げていた。
まぁ俺も金貨1枚は高いと思ったが、100個で金貨1枚なら1個あたり銭貨10枚くらいだからな。
銭貨10枚なら日本円で換算すると100円くらいだし、ほぼ大抵の人間なら買えると思う。
「あ、あの――」
「どうかしたのか?」
「それで採算は取れるのですか?」
「だから、採算じゃなくてだな……、石鹸は病気などの予防にも繋がるし体の皮脂を洗い流すことで衛生面にも使える。それは巡り巡って伝染病の予防にも繋がり結果的に俺や身の回りの人間を助けることにもなるから、ボッタクリをしても仕方ないだろ?」
「――そうだったのですね……」
「まぁ、偽善と言えば偽善かも知れないがな」
肩を竦めながら彼女に告げた。
「いえ! とても素晴らしい事だと思います。これは、伴侶としてではなくて……、一人の男性として素晴らしいと思いますよ? そうですね! 石鹸ですが、どのくらいでご用意できるものなのでしょうか?」
「そうだな。一応、作り置きが多少あるからな……、いくつくらい必要なんだ?」
「そうですね。共同井戸にも置いておきたいので……1000個くらいは――」
「わかった。そのくらいなら作り置きがあるから問題ない」
「ありがとうございます。それで御代は――」
彼女の言葉に考え込む。
正直、一週間近い行動で俺はかなり疲れているしエルナやリルカそして獣人達も疲れているだろう。
何せ、重い塩をずっと運んできたのだ。
「そうだな。頼みたいことは二つ」
「二つですか?」
「ああ、俺達が売買するものに対して税金は免除してほしい。代わりに石鹸に関しては優先的にニードルス伯爵に卸すことにする」
「そうですか……、それでもう一つは?」
「実は長旅で疲れているんだ。俺と獣人達と数日間、滞在させてもらえないか?」
「――!? わかりました! ぜひお泊りください! それで石鹸の費用ですが……」
「ああ、冒険者ギルドに卸していた金額で卸す。それがいいだろ?」
「それは――!? よろしいのですか? そんな価格で……」
「ああ、問題ない」
俺達が売買する物に税金が掛からないだけでも十分すぎるほどの価値がある。
なにせ、これから俺達が扱うものはソルティが作る香辛料だからな。
石鹸なんて副産物にすぎない。
「わかりました。すぐにお部屋を用意させて頂きますね」
鉄仮面の下からは、少しくぐもっていたが、弾んだ声が聞こえてきた。
女神ソルティの優雅な一日
――ソドムの町から一週間の距離に存在する開拓村エル。
神田栄治を筆頭に、多くの獣人が出稼ぎに出かけてしまった村は、閑散としていた。
そんな閑散とした村にも、やはり毎日のように夜が来ては太陽が昇る。
太陽が昇れば、職人が建てた訳でもない建築物の隙間からは日差しが入ってくるのだ。
その光は、ログハウス内で寝ていた人物を覚醒させるには十分で――。
「――まぶしい……」
私は、瞼を擦りながら丸太の上に敷かれた毛皮の上で体をゆっくりと伸ばす。
外から見て人間と大差の無い作りをしている私の体は、実際のところ人とはまったく異なったプロセスから作られている。
この世界アガルタ。
その霊長類の万物的頂点として現在、位置づけられているのがメディデータと呼ばれる種族。
彼らは、魔法の源とも言える精神物質の除去のために作られていて、いまもその仕事を無意識ながらもしている。
ただ、世代が交代しすぎたせいで実際の目的は遥か昔に忘れ去られているのが現状で――。
「別にいいよね――」
私は、頭を左右に振る。
正直なところ、いまさら神代文明の記憶を思い出しても仕方ない。
それよりも、今やらないといけないのは他にある。
ログハウスの扉を開けて外へ出る。
そのあと、もう一軒のログハウスの扉を開けて中を物色することにする。
「これは!?」
私は、神田栄治とリルカという小娘が一緒に暮らしている家の中をチェックしながら、とんでもない物を見つけてしまう。
それは――、なんと! まだ洗濯をしていない神田栄治の下着であった。
「くんくん。間違いないわ、これは間違いなく神田栄治の匂い……。まったく、あの小娘は、妻と名乗って起きながら炊事洗濯が不十分なんだからっ」
私は、妻としての仕事をキチンとこなしていないリルカという小娘に少しだけ苛立ちながらも、あとで私が使う物として彼の下着をスカートのポケットの中へと仕舞う。
「本当に駄目な自称妻です。神田栄治が私を大事な人! とか大事な女神! とか言っていたから、将来は私が正妻になるのは決まっているから、今は、目を瞑っておいてあげましょう。そう、正妻の余裕という奴です」
さらにログハウスの中を物色していくと、神田栄治が使っていたと思われる木で作られた歯ブラシや、毛布に小物がお宝のように輝いている。
これは、正妻として将来取り仕切る必要が出てくる私にとって先行投資というか、そんなものでしょう。
とりあえずアイテムボックスを開いて、中に全部入れていく。
神田栄治が戻ってくるまで2週間もある。
つまり、その間、私が色々なことに使っても問題ないということ。
きちんと返すときには綺麗にして返しましょう。
だいたい漁り終わってから、私は額に浮かび上がってきた汗をふき取る。
そしてログハウスを出ると日は、頭上まで昇っていた。
どうやら、かなり一生懸命、色々な物を選別していたこともあり時間を浪費してしまったみたい。
私はスカートのポケットから、種と下着を間違えて取り出してしまう。
「おっと――」
思わす今晩のおかずを土の上に落とすところでした。
反対側のスカートから、小さな種がたくさん入った麻袋を取り出す。
「このへんでいいですか……」
私は、自分自身に語りかけるように袋の中から種を掴んで周りへと均等に投げていく。
「こんなものですね」
私は地面の上に落ちた無数の種を見ながら手を上げる。
「成長促進!」
私は、回復魔法を発動させる。
この世界――、昔の理を忘れたメディデータには使うことが出来ない魔法。
それは魔法とも呼べない単純な細胞増殖を促す物。
私が声をかけると同時に、無数の種は一気に発芽し地面に根を下ろし広げていく。
そして、1分後には開拓村エル周辺には無数の豆やじゃがいもや小麦畑が広がっていた。
私は、その様子を見ながら地面の上に膝をつく。
これで彼が戻ってきたら「ソルティ、すばらしいよ! 愛している! 結婚してくれ! 正妻で!」とか言ってくれるはず。
言ってくれなかったら、膝に抱えている呪いを交渉に持ち出すことにしましょう。
男女の恋愛には、駆け引きが必要とか私を作ったマスターも言っていたし。
それに、私のことを大事と言っていたんだもの。
イエス以外の答えは考えられないし……。
神田栄治が帰ってくるのが楽しみ!
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部屋から出ていった神田栄治の後ろ姿を見送ったあと、私は執務室の椅子に座る。
かつては鉱物産出で栄えていたニードルス伯爵家が作らせた豪勢な椅子。
それは、人前で見せる物だからと、時代を経ても輝きを失わない金で作られていた。
金は元々、ニードルス伯爵領で取れていたもの。
それが近年取れなくなってしまい、失業者が大幅に増えている。
そして経済の悪化に伴い、治安も急速に悪くなっていた。
もちろん炊き出しや領内の仕事――警備などの仕事を作ってはいるけど、収入が激減している領内としては、雇用できる人数にも限度がある。
私は、椅子に座りながら考えてしまう。
この椅子を一つ売れば、赤字財政も少しは埋められるのではと――。
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私は、執務室の机に肘をつく。
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でも、多くの冒険者が別大陸から足を伸ばしてきた結果、急速にダンジョンは攻略されてしまい魔石の産出量が激減。
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そのエルダ王家の経済状況が急速に回復し始めたのは、港町カルーダで作られる石鹸のおかげであることは社交界では有名な話であった。
私は、椅子から立ち上がり壁に掛けてある鏡の前に移動する。
そして、鉄仮面を脱ぐと、不吉の象徴とされる黒く長い髪が音もなく腰まで広がり落ちる。
鏡の前には、私の手の平よりも2倍ほど長く白い。
そんな兎の耳が頭から生えていた。
幼少期から興奮すると、兎の耳と臀部に兎の丸い尻尾が生えてきてしまう特異体質な私は、両親から社交界の出入りを禁止されていた。
由緒正しいニードルス伯爵家に、獣人の血が先祖返りだとしても混じっていることは、非常に忌避されたから。
――さらに、私の髪の色。
漆黒の色合いをしていて、太陽の日差しを反射してしまう様は、まるで神々の恩寵を否定するかのようであり、闇の眷属に近いという意味合いで嫌われていた。
「はぁ、どうして――、私の体は貧相なのでしょうか……」
20歳とは思えないほど、胸も腰も殆ど育っていない。
成人女性よりも一回りほど胸も腰も貧相。
それに、鼻の高い女性が多い中――、どうしてか知らないけど私の鼻はそんなに高くない。
一重が美人の証拠と言われているエルダ王国で、両親には似ずに二重で生まれてしまったし睫も眉も細く長い。
まるで、この世界の悪いと思われるものを全て集めて作られたかのような容姿に、私は耐え切れなくなって、鉄仮面をつけた。
「神田栄治さんの連れていた狐族の女性は、とても美人でした……。それに身体つきも、いつ身ごもってもいいようにでしたし――、はぁ……」
思わず溜息が出てしまう。
「それにしても……。人間の男性で獣人の女性を妻にする人がいるなんて……」
私は思わず考えてしまう。
獣人が良いなら、獣人枠で私も妻になれるかもしれないと――。
でも……、私は自分の貧相な体とかわいらしくない。
「スザンナ、駄目よ! 私のことよりも今は神田栄治に定期的に石鹸を卸してもらって、それで領民と伯爵家の赤字を何とかしないと!」
私は椅子に座り、羊皮紙に予定の収支を書いていく。
「えっと……金貨1枚で銀貨10枚だから……、銭貨10枚で石鹸が一つ購入できて……、エルダ王国が石鹸を欲しがっているから――、たしか外国では金貨10枚くらいで売れたはずだから……。金貨5枚くらいなら王家に納品できる? そしたら……、1000個なら金貨5000枚!?」
金貨5000枚あれば――。
半年分のニードルス伯爵の税収に相当する。
それだけあれば、たくさん雇用も出来るけど……。
「……いいのかな? 神田さん、子供達の事とか考えて安く販売してくれると言っていたのに……。いくらなんでも、これは裏切りだよね……」
私は机の上に寝そべる。
両親が、治安が悪化した領内で王都に向かっている途中に職を失った領民に殺された事は、記憶に新しい。
領民の怒りの矛先が、両親に向かったのは分かる。
だって、領地を富ませて運営するのは領主の仕事なのだから。
それでも、当時12歳に過ぎなかった私は、復讐心に駆られてしまい少ない手勢で、両親を殺した領民を探した。
少ない手勢しか用意出来なかったのは、その頃にはニードルス伯爵の経済は破綻寸前だったから。
そして結果として、領民と通じていた兵士に私の身は売られてしまい危機一髪のところで救ってくれたのが、神田栄治であった。
彼は、領民を追い払い兵士を叩きのめすと、ソドムの町まで用事があるからと連れてきてくれた。
もちろん無償で――。
その頃は、まだ突発的に兎耳や尻尾が出ることはなかった。
だから、鉄仮面をつけていなかったけど不細工な顔には変わりは無かった。
その頃に彼は私のことを「日本人形みたいだな――、成長したらヤマトナデシコになりそうだな」と言っていた。
まだ12歳の私には、彼の言っている言葉は理解できなかった。
――でも、どこか懐かしそうな声で私にやさしく語りかけてきたのは今でも覚えている。
そして、無事にソドムの町に送り届けてもらったあと、私は彼を調べた。
彼は、港町カルーダの冒険者ギルドに所属していた。
そのとき、彼は女性2人とパーティを組んでいたらしい。
私と出会った時に、一人だったのは偶々だったのだろう。
しばらくソドムの町で逗留していた彼は多くの知らない物を作っては商業ギルドに無償で提供していた。
それが、後の石鹸と呼ばれるもので――。
汚れがよく落ちて良い匂いがするとすぐに人気になった。
私も一個だけ使っていたから分かった。
――これは、とても良い物だ。
神田栄治という冒険者に石鹸作成の依頼をお願いするついでに、命を助けられたお礼を言おうとしたけど、すでに彼はソドムの町を経った後だった。
どうしても会いたかった私は、石鹸を理由付けに彼が来たら連れてくるように兵士へ命令した。
――それから8年後。
彼と久しぶりにあった私は彼の容姿を見て、一目で心臓が高鳴った。
彼も私も同じ黒い髪を持ちながら、無数の白く高貴な色を持つ髪を生やしていたから。
黒の中に一筋の光明のように存在する白い髪の色は、天空の太陽神が持つ光の色。
それは黒の中に存在するからこそ映える。
彼は、何年も人のために尽くしてきたからこそ、それらを手にすることが出来たのかもしれない。
それは彼の言動からも分かってしまう。
自分が会いたいと思っていた、神田栄治。
感謝の言葉を言いたかっただけなのに。
いざ前にしてしまうと、口から出てきたのは領民を如何にして飢えさせないようにするかということだけだった。
領主としては正しいのかも知れない。
でも……、それは自分自身の思いに対する裏切りだ。
「私は最低の人間です……。助けられたことに対して「ありがとう」と、言う言葉も言わないで彼を利用しようとするなんて――」
8年も思い続けてきたのに、自分の思いを裏切って彼の子供達の衛生面を考えてという優しささえ踏み躙って、嘘をついて彼の思いをお金に換えようとしている。
自分自身が嫌いになりそう――。
――そう。
心の片隅で自責の念に押しつぶされながらも、つい考えてしまう。
彼が、しばらく逗留してくれて、石鹸の生成方法が分かれば、多くの領民を救えるかもしれないと――。
「……私は、最低の人間です……」
私は、声を押し殺しながら言葉を紡いでいた。
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ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
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※カクヨム、ハーメルンにて掲載
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気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
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どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
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一つは鑑定。
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