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第一章 辺境の村 開拓編
第24話 エンゲル係数が高い。
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俺は立ち上がり後ろからエルナが必死に両手で持ち上げていた毛皮を代わりに持った。
するとエルナが「――あっ!?」と、驚いた声色で俺を見てきた。
リルカも俺の行動に驚いた表情を見せてくる。
「どうかし――あっ!?」
彼女達に問いかけようとしたところで、どうして彼女達が驚いた表情を見せてきたのか分かった。
エルナが以前に説明してくれたことが本当なら、狐族の習慣は極めてライオンの社会形態に近い。
そしてライオンの雄の仕事は、雌が捕ってきた食料を食べて危険が迫ったら雌や子供を守るのが仕事。
つまり、危機感がない状態での仕事――つまり、毛皮を届けるという仕事は女の仕事かもしれないのだ。
そこまで考えたところで下手に手を出してしまった事に内心溜息をつく。
「すまない。余計なことをしてしまったな。ただ、見ていられなくてな……」
「カンダしゃんは悪くないでしゅ……」
「そうか。エルナ、扉を開けておいてくれ」
「分かったでしゅ……」
しぶしぶと言った感じでエルナが扉を開けてくれた。
俺は扉から出る。
「私もついていきます!」
扉から出るとリルカが、慌てて近づいてきた。
「大丈夫だ、魔物などが居ても膝の痛みはないからな。ある程度までは、対処できるから」
「――いえ、そうではなくて……分かりました。エルナ、カンダさんを守るのよ?」
「分かったでしゅ!」
別にエルナに守られるほど俺は弱くないんだが、まぁ心配してくれているのは伝わってきた。
毛布を俺が届けた時、山猫族と狼族は尻尾を千切れんばかりに振って俺に近づいてきた。
ログハウスの床が乾いていない木の板だと不都合があるのだろう。
帰り道にエルナが「何事もなくてよかったでしゅ。今日は姉妹でエイジ丼でしゅ!」と意味不明な言葉を言っていた。
何か不吉な言葉な気がした。
遅くまでおきていたら駄目だと! 本能が俺に語りかけてきた。
俺は夕食後、リルカとエルナが木の器を洗っている間に夢の中へと旅立つことに成功したが、翌朝に目が覚めるとリルカとエルナが二人して怒っていた。
やはり昨日の夜は何かやろうとしていたのだろう。
果たして姉妹でエイジ丼とは何なのか? 謎は深まるばかりだ!
「宿場町エンパスに行ってくる!」
朝から不機嫌だったリルカは、俺が購入してきたロール巻き状態の布を洋服に加工しており、エルナも手伝っていたこともあり二人して驚いた顔で俺を見てきた。
その表情は、不機嫌だったのはどこへやら、不安そうな顔をしている。
「エイジさん、どうしてですか?」
「いや、ちょっと種籾を購入しに行こうと思っていたんだ。それに……いや、なんでもない」
さすがに言えない。
13人の人間が20日間は生きていけるだけの食料を購入してきたはずなのに、獣人女性の食料消費速度が速すぎて3日で半分を消費しているとは……。
早めに買い足しにいかないと、食糧難になってしまう。
「怪しいです! 私も着いていきます!」
「エルナも! エルナも!」
「いや――、別に怪しいことは何もないんだが……」
「ますます怪しいです! 絶対についていきますから!」
「いや、獣人が着いてきたらやばいだろ?」
「フードを作りますから大丈夫です! エルナはお留守番ね!」
「ええー……」
どうやら、俺が何を言っても納得してくれないようだ。
仕方ないな。
「分かった。エルナも一緒にいくか?」
「いくでしゅ!」
「エイジさん!」
「まぁ獣人が一人増えようが2人増えようが同じだからな。それなら3人でエンパスまで行ったほうがいい」
「うう……分かりました。エイジさんが、そこまで言うなら仕方ないですね」
リルカが肩を落とすとしぶしぶと言った感じで納得するとフードを作り始める。
二人分のフードができたのはお昼頃を少し回ったくらいであった。
昼食を食べると俺とリルカにエルナは村のことを山猫族と狼族の女性に任せると宿場町エンパスに向かって歩き出した。
辺境も辺境、開拓村エルを出て翌日の朝には目の前に宿場町エンパスが姿を現した。
「カンダしゃん! 大きな壁があるでしゅ!」
エルナが、前方の壁を指差している。
「エルナ、あれは町を囲っている壁だ。あの中に町があるんだよ」
「エイジさん、獣人の村には基本的に柵程度ならありますが、ああいう立派な壁はないのです」
「なるほど……」
俺の説明に、エルナが首を傾げていたが、その理由がなんとなく分かった気がする。
「二人とも、兵士には見られないようにフードを被っておけよ」
俺の言葉に二人はフードを耳で隠すと俺の後を着いてきた。
門前に近づくと知り合いの兵士が俺に気がつくと「カンダか? ずいぶんと早い出戻りだな」と、話かけてきた。
「ブレージか。まぁな……獣人たちの食料消費がやばいんだ」
「ああ、獣人はよく食べるって聞いたからな。やり手の奴隷商人は、商品に獣人は扱わないらしいぞ?」
「……な、なるほど……」
そういうことなら、獣人の奴隷を連れて出て行く際に教えてほしかった。
おかげ様で3日しか経ってないのに宿場町エンパスへ来ることになった。
少し文句を言いたいと思ったが、まぁ八つ当たりはお門違いだろう。
目の前のブレージは、俺の後方に立っているリルカやエルナを見ると「ほう、獣人か……しかも狐族か?」と、一目で見抜いてきた。
「なんのことだ?」
「いや、その二人は狐族の獣人だろ?」
「……」
俺は驚くと同時に危機感を持つ。
リルカとエルナは人間に追い回されていたと聞いたからだ。
「どうして、二人が狐族だと……わかった?」
そう、リルカとエルナは耳を隠すためのフードを作って被っていたのだ。
一目では分からないはず。
伊達に門を守っている兵士ではないということだろうか?
「いや……だって……尻尾が見えるだろ?」
「……」
俺は後ろを振り返る。
するとリルカもエルナも狐族特有の豊富な毛並みの狐の尻尾を振っていた。
思わず無言になってしまった。
頭隠して尻を隠さずというのは、こういうことを言うのだろう。
「それにしても、獣人融和政策だったか? 狐族と友好関係を短期間で築けるとはすごいものだな」
「友好ではありません! 私は、エイジさんの妻です! 家族です!」
「エルナも! 家族でしゅ!」
ブレージの言葉に、どこかスイッチが入ってしまったのか二人とも自分のことを自己表現していた。
「カンダ……、お前……」
ブレージが二人の言葉を聞いて体を振るわせると肩に手を置いてくる。
「やることは、やっているんだな! こんな子供もいるんだからな」
「勘違いすんなよ!」
俺はブレージに思わず突っ込みを入れたが、リルカが結婚前提で付き合っている女性というのは違いない。
それにブレージからは、結婚しているとしているとした方が町中では問題になりにくいだろうと言われ――。
門から入ってすぐに建っていた建物に案内された。
そしてすぐに夫婦用の木札を作らされることになった。
「カンダはこれな」
俺はブレージから木札を渡される。
そこには俺の名前が【カンダ エイジ】と書かれていた。
「えーとリルカさんだったけか? あんたはこれな――」
「えっと……、【カンダ リルカ】……」
リルカが、ブレージから預かった木札を大事そうに両手で胸元で抱きしめると俺に寄り添ってきた。
そんな俺とリルカを見ていたブレージは、「リア充が!」と小さく呟くと、エルナにも木札を渡す。
「【カンダ エルナ】でしゅか?」
「そうだな。一応、カンダとリルカさんの娘ってことにしてある」
ブレージが、気を利かせてくれたようだな。
たしかに、俺とリルカを両親という形にするのが定番だろう。
そしてエルナを娘としておけば回りからへんな風に思われないはずだ。
まぁ、エルナが怒っているように見えるが、そこは納得してもらうしかないな。
「そうそう、カンダ」
「――どうした?」
町へ向かおうとしたところで、背後からブレージが話かけてきた。
「少し前に、お前を尋ねて二人組みの女性が町の中に入っていったぞ?」
「ふむ……」
一瞬、ソフィアとリアの顔が思い浮かんだが、彼女たちは新しい冒険者とパーティを組んだはずだ。
――ということは……、冒険者ギルド職員か何かが俺に用事があって来たのだろうか? と思ってしまう。
「分かった。そんなに広い町でもないからな。手間をかけたな」
俺はブレージに感謝の言葉を返すと、リルカとエルナを伴って町の中へ向かった。
するとエルナが「――あっ!?」と、驚いた声色で俺を見てきた。
リルカも俺の行動に驚いた表情を見せてくる。
「どうかし――あっ!?」
彼女達に問いかけようとしたところで、どうして彼女達が驚いた表情を見せてきたのか分かった。
エルナが以前に説明してくれたことが本当なら、狐族の習慣は極めてライオンの社会形態に近い。
そしてライオンの雄の仕事は、雌が捕ってきた食料を食べて危険が迫ったら雌や子供を守るのが仕事。
つまり、危機感がない状態での仕事――つまり、毛皮を届けるという仕事は女の仕事かもしれないのだ。
そこまで考えたところで下手に手を出してしまった事に内心溜息をつく。
「すまない。余計なことをしてしまったな。ただ、見ていられなくてな……」
「カンダしゃんは悪くないでしゅ……」
「そうか。エルナ、扉を開けておいてくれ」
「分かったでしゅ……」
しぶしぶと言った感じでエルナが扉を開けてくれた。
俺は扉から出る。
「私もついていきます!」
扉から出るとリルカが、慌てて近づいてきた。
「大丈夫だ、魔物などが居ても膝の痛みはないからな。ある程度までは、対処できるから」
「――いえ、そうではなくて……分かりました。エルナ、カンダさんを守るのよ?」
「分かったでしゅ!」
別にエルナに守られるほど俺は弱くないんだが、まぁ心配してくれているのは伝わってきた。
毛布を俺が届けた時、山猫族と狼族は尻尾を千切れんばかりに振って俺に近づいてきた。
ログハウスの床が乾いていない木の板だと不都合があるのだろう。
帰り道にエルナが「何事もなくてよかったでしゅ。今日は姉妹でエイジ丼でしゅ!」と意味不明な言葉を言っていた。
何か不吉な言葉な気がした。
遅くまでおきていたら駄目だと! 本能が俺に語りかけてきた。
俺は夕食後、リルカとエルナが木の器を洗っている間に夢の中へと旅立つことに成功したが、翌朝に目が覚めるとリルカとエルナが二人して怒っていた。
やはり昨日の夜は何かやろうとしていたのだろう。
果たして姉妹でエイジ丼とは何なのか? 謎は深まるばかりだ!
「宿場町エンパスに行ってくる!」
朝から不機嫌だったリルカは、俺が購入してきたロール巻き状態の布を洋服に加工しており、エルナも手伝っていたこともあり二人して驚いた顔で俺を見てきた。
その表情は、不機嫌だったのはどこへやら、不安そうな顔をしている。
「エイジさん、どうしてですか?」
「いや、ちょっと種籾を購入しに行こうと思っていたんだ。それに……いや、なんでもない」
さすがに言えない。
13人の人間が20日間は生きていけるだけの食料を購入してきたはずなのに、獣人女性の食料消費速度が速すぎて3日で半分を消費しているとは……。
早めに買い足しにいかないと、食糧難になってしまう。
「怪しいです! 私も着いていきます!」
「エルナも! エルナも!」
「いや――、別に怪しいことは何もないんだが……」
「ますます怪しいです! 絶対についていきますから!」
「いや、獣人が着いてきたらやばいだろ?」
「フードを作りますから大丈夫です! エルナはお留守番ね!」
「ええー……」
どうやら、俺が何を言っても納得してくれないようだ。
仕方ないな。
「分かった。エルナも一緒にいくか?」
「いくでしゅ!」
「エイジさん!」
「まぁ獣人が一人増えようが2人増えようが同じだからな。それなら3人でエンパスまで行ったほうがいい」
「うう……分かりました。エイジさんが、そこまで言うなら仕方ないですね」
リルカが肩を落とすとしぶしぶと言った感じで納得するとフードを作り始める。
二人分のフードができたのはお昼頃を少し回ったくらいであった。
昼食を食べると俺とリルカにエルナは村のことを山猫族と狼族の女性に任せると宿場町エンパスに向かって歩き出した。
辺境も辺境、開拓村エルを出て翌日の朝には目の前に宿場町エンパスが姿を現した。
「カンダしゃん! 大きな壁があるでしゅ!」
エルナが、前方の壁を指差している。
「エルナ、あれは町を囲っている壁だ。あの中に町があるんだよ」
「エイジさん、獣人の村には基本的に柵程度ならありますが、ああいう立派な壁はないのです」
「なるほど……」
俺の説明に、エルナが首を傾げていたが、その理由がなんとなく分かった気がする。
「二人とも、兵士には見られないようにフードを被っておけよ」
俺の言葉に二人はフードを耳で隠すと俺の後を着いてきた。
門前に近づくと知り合いの兵士が俺に気がつくと「カンダか? ずいぶんと早い出戻りだな」と、話かけてきた。
「ブレージか。まぁな……獣人たちの食料消費がやばいんだ」
「ああ、獣人はよく食べるって聞いたからな。やり手の奴隷商人は、商品に獣人は扱わないらしいぞ?」
「……な、なるほど……」
そういうことなら、獣人の奴隷を連れて出て行く際に教えてほしかった。
おかげ様で3日しか経ってないのに宿場町エンパスへ来ることになった。
少し文句を言いたいと思ったが、まぁ八つ当たりはお門違いだろう。
目の前のブレージは、俺の後方に立っているリルカやエルナを見ると「ほう、獣人か……しかも狐族か?」と、一目で見抜いてきた。
「なんのことだ?」
「いや、その二人は狐族の獣人だろ?」
「……」
俺は驚くと同時に危機感を持つ。
リルカとエルナは人間に追い回されていたと聞いたからだ。
「どうして、二人が狐族だと……わかった?」
そう、リルカとエルナは耳を隠すためのフードを作って被っていたのだ。
一目では分からないはず。
伊達に門を守っている兵士ではないということだろうか?
「いや……だって……尻尾が見えるだろ?」
「……」
俺は後ろを振り返る。
するとリルカもエルナも狐族特有の豊富な毛並みの狐の尻尾を振っていた。
思わず無言になってしまった。
頭隠して尻を隠さずというのは、こういうことを言うのだろう。
「それにしても、獣人融和政策だったか? 狐族と友好関係を短期間で築けるとはすごいものだな」
「友好ではありません! 私は、エイジさんの妻です! 家族です!」
「エルナも! 家族でしゅ!」
ブレージの言葉に、どこかスイッチが入ってしまったのか二人とも自分のことを自己表現していた。
「カンダ……、お前……」
ブレージが二人の言葉を聞いて体を振るわせると肩に手を置いてくる。
「やることは、やっているんだな! こんな子供もいるんだからな」
「勘違いすんなよ!」
俺はブレージに思わず突っ込みを入れたが、リルカが結婚前提で付き合っている女性というのは違いない。
それにブレージからは、結婚しているとしているとした方が町中では問題になりにくいだろうと言われ――。
門から入ってすぐに建っていた建物に案内された。
そしてすぐに夫婦用の木札を作らされることになった。
「カンダはこれな」
俺はブレージから木札を渡される。
そこには俺の名前が【カンダ エイジ】と書かれていた。
「えーとリルカさんだったけか? あんたはこれな――」
「えっと……、【カンダ リルカ】……」
リルカが、ブレージから預かった木札を大事そうに両手で胸元で抱きしめると俺に寄り添ってきた。
そんな俺とリルカを見ていたブレージは、「リア充が!」と小さく呟くと、エルナにも木札を渡す。
「【カンダ エルナ】でしゅか?」
「そうだな。一応、カンダとリルカさんの娘ってことにしてある」
ブレージが、気を利かせてくれたようだな。
たしかに、俺とリルカを両親という形にするのが定番だろう。
そしてエルナを娘としておけば回りからへんな風に思われないはずだ。
まぁ、エルナが怒っているように見えるが、そこは納得してもらうしかないな。
「そうそう、カンダ」
「――どうした?」
町へ向かおうとしたところで、背後からブレージが話かけてきた。
「少し前に、お前を尋ねて二人組みの女性が町の中に入っていったぞ?」
「ふむ……」
一瞬、ソフィアとリアの顔が思い浮かんだが、彼女たちは新しい冒険者とパーティを組んだはずだ。
――ということは……、冒険者ギルド職員か何かが俺に用事があって来たのだろうか? と思ってしまう。
「分かった。そんなに広い町でもないからな。手間をかけたな」
俺はブレージに感謝の言葉を返すと、リルカとエルナを伴って町の中へ向かった。
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