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第一章 辺境の村 開拓編
第10話 塩の湖
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「そうか……」
俺は、膝の痛みが無くなったこともあり、お礼を兼ねてリルカの頭を撫でる。
毎日、お風呂に入っていることもあり、リルカの髪は、とても触り心地がいい。
「――んっ……」
リルカの頭を撫でていると、彼女は地面の上に腰を落として瞳を潤ませながら上目遣いで俺を見てきた。すると「カンダさあーん」と俺の腰に抱きついてくると、トランクスに手を掛けようとしてくる。
「お、おい!」
俺は無理矢理、立ち上がりながらリルカを引き剥がすが、俺の脚にまとわりついてくる。
一体、どうしたというのか……。
「――ま、まさか?」
俺は、エルナのほうへと視線を向ける。
すると彼女は「異性に触れられると発情期になるでしゅ!」と、語りかけてきた。
「――ま、マジか?」
俺は声を荒げてエルナに問いかけると「うん、本当でしゅ! お母さんが同じ状態になっていたことがあるでしゅ!」と、答えてきた。
「カンダさん……」
リルカが両腕を広げて俺に抱き着いてこようとする。
俺はリルカの両手を掴みながら、突進を止めるが――。
「この力、女の子とは思えない!」
考えて見れば、リルカとエルナは重さが1トン近くある材木というか丸太を運んでいたという実績がある。
恐らく力は、俺を遥かに凌駕しているだろう。
「カンダさん! カンダさん! カンダさん!」
鼻息を荒くして近づいてくるリルカは美人だが、あまりにも求められると俺としても恐怖を感じてしまう。
「落ち着け!」
「大丈夫です! すぐに済みますから!」
「何が!?」
「何がです!」
力比べをしている様子を見ていたエルナが、興味無さそうに近くの落ち葉の上に寝転がると目を閉じてしまう。
もしかしたら、獣人の村では、こういう男女の問題がよくあることなのかも知れない。
「エルナ! どうにかしてくれ!」
リルカの力が強すぎて、まったく歯が立たない。
このままでは押し切られて押し倒されてしまう。
「発情期の雌は危険でしゅ! 別の雌が近づくと攻撃してくるでしゅ!」
「そ、そう……なのか?」
「うん、だから手伝え――」
「干し肉を、あとでこっそりやるから!」
「手伝うでしゅ!」
エルナが、颯爽と立ち上がるとリルカの背中に向けて走り始めた。
そして……エルナがリルカから2メートルの距離まで近づいたところで「他の雌の匂い!」と振り返ろうとしたところで俺は、エルナを守るために「リルカ!」と叫ぶ。
――すると彼女は動きを止めた!
そして、俺の言葉に反応するかのように言葉を紡いでくる。
そう「カンダしゃー……」と、俺に語りかけている途中で力が抜けるように、その場に座りこんでしまう。
「い、一体!? ――な、何が!?」
じっくりとエルナとリルカの様子を見る。
するとリルカの尻尾を掴んでいた。
それも、かなり強く握っているのか、エルナの手が震えている。
「神田しゃん、獣人は尻尾を強く掴むと力が抜けるでしゅ」
「…………そ、そうなのか……」
俺は溜息をつきながらズボンを履く。
「あれ? 私……一体――」
どうやら、正気に戻ったのかリルカが回りを見渡すと「カンダさん、ずいぶん疲れているようですが何かあったのですか?」と語りかけてきた。
「リルカが発情したから大変だったんだよ……」
「そ、そんな……私ったら……ごめんなさい! 発情期だけは、どうにも出来なくて……」
彼女の言葉に俺は肩を竦めながら「まぁ、俺も獣人の性質をよく知らなかったからな。
今夜にでも獣人の性質を教えておいてくれ、何かあって取り返しがつかなかったら、それこそ大変だからな」と彼女に告げておく。
「分かりました。ご迷惑をおかけしました」
反省しているリルカの頭を一瞬、撫でようとしたが、さっきの襲われたことを思い出し手を止める。
――いかん、また暴走させるところだった。
「カンダしゃん! 約束!」
「分かっている」
「約束ですか?」
「ああ、リルカを止めるのを手伝ってくれたら、干し肉を多くあげると約束したんだ」
「カンダしゃん!? や、約束が!?」
「あっ……すまん、つい……」
つい口が滑ってしまった。
わざとではない。
そう、干し肉は高いから多めにあげたくないという気持ちから合法的に約束を破ろうとしたわけではない。
「そうだったのですか? ……エルナ?」
俺の言葉に、リルカが目を細めてエルナを見る。
「まぁまぁ、今回は俺も悪いんだから約束は約束だからな」
「カンダしゃん!」
俺の言葉にエルナが瞳を輝かせている。
ただ、俺も獣人と人間は同じ分量で渡していいか分からない。だから「とりあえずリルカに渡しておくから、リルカから貰っておいてくれ」と言うと「カンダしゃん……」とエルナが金色のキツネ耳を伏せながら元気なく肩を落としていた。
色々と波乱があったが、膝の痛みが無くなったこともあり俺達一向は5分ほどで、湖に到着することが出来た。
「これは湖というのだろうか……」
見渡す限りの塩の塊が隆起している湖。
そこは、写真で見たことがある南米のウユニ塩湖よりも大きな塩の塊というか山が存在していた。
さらに、湖と思われる大きさは少なくとも東京ドーム10個分はあるだろう。
「これは……かなりの収入源になりそうだな……」
「……しかし……」
俺は一人ごとを呟きながら湖の中に足を踏み入れる。
「思ったよりも深くはないな……」
乾季ではウユニ塩湖は、薄い水の膜が堆積した塩の上に張る程度と本に書いてあった。
それと同じ様相を、獣人が名づけたソルト大森林内に存在する塩の湖は見せている。
ただ、一つ違うのは、塩が隆起して存在していることだ。
地球では、塩は水が蒸発して出来た物であり隆起して存在するようなことはない。
まぁ、そのへんは異世界と言ったところだろう。
「カンダさん! これです!」
俺が塩の湖について考え込んでいると、リルカが話かけてきた。
「――ん?」
声のした方向へ目を向けると、そこには巨大な白い大木が存在している。
その木の枝には無数の花が咲いているのが見えるが、どれも白い花だ。
日本の桜に近いだろうか?
「ずいぶんと大きいな……」
高さは10メートルを超えている。
幹の太さも成人男性5人分が両手を広げて繋いだくらいはありそうだ。
「これは、ソルト大森林の大樹と言われているのです」
「ソルト大森林の大樹?」
「はい」
俺の問いかけに、神妙そうな表情でリルカが頷いてくる。
ふむ……。
彼女の顔から察するに、獣人にとっては神聖な物なのだということが薄々を理解できた。
ただ。一つ気になることがある。
そもそも塩湖の中央部に木が生えることなど普通は不可能だ。
どうして、こんなのが存在しているのか俺には理解を超えすぎていて訳が分からない。
「あれが……シーオの実か?」
大樹の枝には、白い花とは別に俺がリルカから渡された実と同じ物が生っていた。
「はい、あれはシーオの花が枯れた後に出来る実です!」
「……そ、そうか……」
驚きすぎて、どこから突っ込みを入れていいのか分からん。
マングローブみたいな物なのか?
たしかマングローブは海水を根から汲み上げて、海水内に含まれている塩分を葉に蓄えると聞いたことがある。
それと同じことを……出来るわけがないよな……。
海水とは、どう比べても塩分濃度が違いすぎる。
そんなことが出来たら本当にファンタジー世界になってしまう。
いや、ファンタジー世界だが、幾ら何でも常識を無視しすぎだろう。
「そこの者――」
「――ん? リルカ、呼んだか?」
「いえ、特には? どうかされたのですか?」
「気のせいか……?」
最近、矢を受けた膝が痛かったからな。
よく眠れていなかった。
それが、リルカのヒーリングペロペロのおかげで痛みが一時的に消えた。
そして痛みに対する心構えのために張り詰めていた緊張の糸が緩んだのだろう。
「少し疲れているようだな」
「大丈夫ですか? カンダさん」
「ああ……。リルカとエルナには、申し訳ないのだが2人の持ってきた麻袋に周辺に転がっている白い塊を詰め込んでおいてくれるか?」
「分かりました。エルナ! 近くに落ちている白い塊を麻袋に入れましょう!」
「はいでしゅ!」
リルカの言葉にエルナは素直に頷くと塩の塊を麻袋に入れ始めた。
俺は、二人の様子を見たあと、10トン近くありそうな岩塩の上に横になる。
すると急速に眠気に襲われた。
やはり、膝を痛めてから殆ど眠れていなかったのだろう。
すぐに俺の意識は暗闇に飲み込まれた。
「カンダさん、白い塊の回収が出来ました」
どうやらリルカが俺の身体を揺すっていてくれたようだ。
周辺を見ると日が沈みかけていて、かなりの時間寝ていたように見える。
「すまない。結構、寝ていたか?」
「はい、ずいぶんとお疲れのようでしたので……ごめんなさい」
リルカが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「ど、どうかしたのか?」
「カンダさんが足を庇うようにして歩いていたのは知っていたのに、そこまで酷いとは思っていなくて……」
「言わなかった俺も悪いからな。リルカが気にすることはない」
「……はい」
肩を落として落ち込んだ彼女の頭を撫でて元気づけてあげたいが、また発情期モードに入られても困る。
「気にすることはない。リルカのおかげで久しぶりにぐっすりと眠れたからな、こっちがお礼を言うべきところだ」
俺は、リルカに向けて笑顔を見せる。
中年の笑顔なぞ、大して効力はないと思うが……。
「い、いえ! 私のほうこそ!」
塩の塊が入って百キロを越えている麻袋を頬を赤くしながら回しているリルカの姿は俺には恐怖にしか映らなかった。
「と、とりあえず……か、帰るとするか?」
俺はリルカとエルナに語り掛けた。
俺は、膝の痛みが無くなったこともあり、お礼を兼ねてリルカの頭を撫でる。
毎日、お風呂に入っていることもあり、リルカの髪は、とても触り心地がいい。
「――んっ……」
リルカの頭を撫でていると、彼女は地面の上に腰を落として瞳を潤ませながら上目遣いで俺を見てきた。すると「カンダさあーん」と俺の腰に抱きついてくると、トランクスに手を掛けようとしてくる。
「お、おい!」
俺は無理矢理、立ち上がりながらリルカを引き剥がすが、俺の脚にまとわりついてくる。
一体、どうしたというのか……。
「――ま、まさか?」
俺は、エルナのほうへと視線を向ける。
すると彼女は「異性に触れられると発情期になるでしゅ!」と、語りかけてきた。
「――ま、マジか?」
俺は声を荒げてエルナに問いかけると「うん、本当でしゅ! お母さんが同じ状態になっていたことがあるでしゅ!」と、答えてきた。
「カンダさん……」
リルカが両腕を広げて俺に抱き着いてこようとする。
俺はリルカの両手を掴みながら、突進を止めるが――。
「この力、女の子とは思えない!」
考えて見れば、リルカとエルナは重さが1トン近くある材木というか丸太を運んでいたという実績がある。
恐らく力は、俺を遥かに凌駕しているだろう。
「カンダさん! カンダさん! カンダさん!」
鼻息を荒くして近づいてくるリルカは美人だが、あまりにも求められると俺としても恐怖を感じてしまう。
「落ち着け!」
「大丈夫です! すぐに済みますから!」
「何が!?」
「何がです!」
力比べをしている様子を見ていたエルナが、興味無さそうに近くの落ち葉の上に寝転がると目を閉じてしまう。
もしかしたら、獣人の村では、こういう男女の問題がよくあることなのかも知れない。
「エルナ! どうにかしてくれ!」
リルカの力が強すぎて、まったく歯が立たない。
このままでは押し切られて押し倒されてしまう。
「発情期の雌は危険でしゅ! 別の雌が近づくと攻撃してくるでしゅ!」
「そ、そう……なのか?」
「うん、だから手伝え――」
「干し肉を、あとでこっそりやるから!」
「手伝うでしゅ!」
エルナが、颯爽と立ち上がるとリルカの背中に向けて走り始めた。
そして……エルナがリルカから2メートルの距離まで近づいたところで「他の雌の匂い!」と振り返ろうとしたところで俺は、エルナを守るために「リルカ!」と叫ぶ。
――すると彼女は動きを止めた!
そして、俺の言葉に反応するかのように言葉を紡いでくる。
そう「カンダしゃー……」と、俺に語りかけている途中で力が抜けるように、その場に座りこんでしまう。
「い、一体!? ――な、何が!?」
じっくりとエルナとリルカの様子を見る。
するとリルカの尻尾を掴んでいた。
それも、かなり強く握っているのか、エルナの手が震えている。
「神田しゃん、獣人は尻尾を強く掴むと力が抜けるでしゅ」
「…………そ、そうなのか……」
俺は溜息をつきながらズボンを履く。
「あれ? 私……一体――」
どうやら、正気に戻ったのかリルカが回りを見渡すと「カンダさん、ずいぶん疲れているようですが何かあったのですか?」と語りかけてきた。
「リルカが発情したから大変だったんだよ……」
「そ、そんな……私ったら……ごめんなさい! 発情期だけは、どうにも出来なくて……」
彼女の言葉に俺は肩を竦めながら「まぁ、俺も獣人の性質をよく知らなかったからな。
今夜にでも獣人の性質を教えておいてくれ、何かあって取り返しがつかなかったら、それこそ大変だからな」と彼女に告げておく。
「分かりました。ご迷惑をおかけしました」
反省しているリルカの頭を一瞬、撫でようとしたが、さっきの襲われたことを思い出し手を止める。
――いかん、また暴走させるところだった。
「カンダしゃん! 約束!」
「分かっている」
「約束ですか?」
「ああ、リルカを止めるのを手伝ってくれたら、干し肉を多くあげると約束したんだ」
「カンダしゃん!? や、約束が!?」
「あっ……すまん、つい……」
つい口が滑ってしまった。
わざとではない。
そう、干し肉は高いから多めにあげたくないという気持ちから合法的に約束を破ろうとしたわけではない。
「そうだったのですか? ……エルナ?」
俺の言葉に、リルカが目を細めてエルナを見る。
「まぁまぁ、今回は俺も悪いんだから約束は約束だからな」
「カンダしゃん!」
俺の言葉にエルナが瞳を輝かせている。
ただ、俺も獣人と人間は同じ分量で渡していいか分からない。だから「とりあえずリルカに渡しておくから、リルカから貰っておいてくれ」と言うと「カンダしゃん……」とエルナが金色のキツネ耳を伏せながら元気なく肩を落としていた。
色々と波乱があったが、膝の痛みが無くなったこともあり俺達一向は5分ほどで、湖に到着することが出来た。
「これは湖というのだろうか……」
見渡す限りの塩の塊が隆起している湖。
そこは、写真で見たことがある南米のウユニ塩湖よりも大きな塩の塊というか山が存在していた。
さらに、湖と思われる大きさは少なくとも東京ドーム10個分はあるだろう。
「これは……かなりの収入源になりそうだな……」
「……しかし……」
俺は一人ごとを呟きながら湖の中に足を踏み入れる。
「思ったよりも深くはないな……」
乾季ではウユニ塩湖は、薄い水の膜が堆積した塩の上に張る程度と本に書いてあった。
それと同じ様相を、獣人が名づけたソルト大森林内に存在する塩の湖は見せている。
ただ、一つ違うのは、塩が隆起して存在していることだ。
地球では、塩は水が蒸発して出来た物であり隆起して存在するようなことはない。
まぁ、そのへんは異世界と言ったところだろう。
「カンダさん! これです!」
俺が塩の湖について考え込んでいると、リルカが話かけてきた。
「――ん?」
声のした方向へ目を向けると、そこには巨大な白い大木が存在している。
その木の枝には無数の花が咲いているのが見えるが、どれも白い花だ。
日本の桜に近いだろうか?
「ずいぶんと大きいな……」
高さは10メートルを超えている。
幹の太さも成人男性5人分が両手を広げて繋いだくらいはありそうだ。
「これは、ソルト大森林の大樹と言われているのです」
「ソルト大森林の大樹?」
「はい」
俺の問いかけに、神妙そうな表情でリルカが頷いてくる。
ふむ……。
彼女の顔から察するに、獣人にとっては神聖な物なのだということが薄々を理解できた。
ただ。一つ気になることがある。
そもそも塩湖の中央部に木が生えることなど普通は不可能だ。
どうして、こんなのが存在しているのか俺には理解を超えすぎていて訳が分からない。
「あれが……シーオの実か?」
大樹の枝には、白い花とは別に俺がリルカから渡された実と同じ物が生っていた。
「はい、あれはシーオの花が枯れた後に出来る実です!」
「……そ、そうか……」
驚きすぎて、どこから突っ込みを入れていいのか分からん。
マングローブみたいな物なのか?
たしかマングローブは海水を根から汲み上げて、海水内に含まれている塩分を葉に蓄えると聞いたことがある。
それと同じことを……出来るわけがないよな……。
海水とは、どう比べても塩分濃度が違いすぎる。
そんなことが出来たら本当にファンタジー世界になってしまう。
いや、ファンタジー世界だが、幾ら何でも常識を無視しすぎだろう。
「そこの者――」
「――ん? リルカ、呼んだか?」
「いえ、特には? どうかされたのですか?」
「気のせいか……?」
最近、矢を受けた膝が痛かったからな。
よく眠れていなかった。
それが、リルカのヒーリングペロペロのおかげで痛みが一時的に消えた。
そして痛みに対する心構えのために張り詰めていた緊張の糸が緩んだのだろう。
「少し疲れているようだな」
「大丈夫ですか? カンダさん」
「ああ……。リルカとエルナには、申し訳ないのだが2人の持ってきた麻袋に周辺に転がっている白い塊を詰め込んでおいてくれるか?」
「分かりました。エルナ! 近くに落ちている白い塊を麻袋に入れましょう!」
「はいでしゅ!」
リルカの言葉にエルナは素直に頷くと塩の塊を麻袋に入れ始めた。
俺は、二人の様子を見たあと、10トン近くありそうな岩塩の上に横になる。
すると急速に眠気に襲われた。
やはり、膝を痛めてから殆ど眠れていなかったのだろう。
すぐに俺の意識は暗闇に飲み込まれた。
「カンダさん、白い塊の回収が出来ました」
どうやらリルカが俺の身体を揺すっていてくれたようだ。
周辺を見ると日が沈みかけていて、かなりの時間寝ていたように見える。
「すまない。結構、寝ていたか?」
「はい、ずいぶんとお疲れのようでしたので……ごめんなさい」
リルカが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「ど、どうかしたのか?」
「カンダさんが足を庇うようにして歩いていたのは知っていたのに、そこまで酷いとは思っていなくて……」
「言わなかった俺も悪いからな。リルカが気にすることはない」
「……はい」
肩を落として落ち込んだ彼女の頭を撫でて元気づけてあげたいが、また発情期モードに入られても困る。
「気にすることはない。リルカのおかげで久しぶりにぐっすりと眠れたからな、こっちがお礼を言うべきところだ」
俺は、リルカに向けて笑顔を見せる。
中年の笑顔なぞ、大して効力はないと思うが……。
「い、いえ! 私のほうこそ!」
塩の塊が入って百キロを越えている麻袋を頬を赤くしながら回しているリルカの姿は俺には恐怖にしか映らなかった。
「と、とりあえず……か、帰るとするか?」
俺はリルカとエルナに語り掛けた。
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