おっさんの異世界建国記

なつめ猫

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第一章 辺境の村 開拓編

第5話 ケモミミ姉妹と出会ったぞ。(2)

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「――ん?」
 
 俺は、自分で言いながら首を傾げる。
 
「やられた――」
 
 俺は額に手を当てながら溜息をつく。
 どうやら、俺は冒険者ギルドの人間に一杯食わされたらしい。
 というかリムルが、契約内容の詳細をわざと知らせなかったと考えるのが妥当だろう。
 
 契約を重視して依頼に嘘をつかないのが冒険者ギルドの特徴であった。
 それを破るとは、やはりリムルは、追放しておくべきだった。
 今後、カルーダに戻ったら男女平等パンチで殴ろう。
 
 この世界は、男女平等だからな。
 女でも男でも悪いことをすれば普通に殴る。
 
「……それにしても……」
 
 やはり、膝を怪我とパーティを抜けたことが思ったより、判断を鈍らせていたのだろう。
 冒険者ギルドとの契約確認をすることを怠ってしまった。
 
「今度から気をつけないとな……」
 
 まぁ、今度があるかどうかは分からないが……。
 自分の軽挙な行いを反省していると「もう、お腹いっぱい……むにゃむにゃ――」という声が聞こえてきた。
 声がした方へ視線を向けると、出会ったばかりの幼女が、毛布の上で丸くなり熟睡していた。
 幼女の様子を見ていて俺はふと気になったことがあった。
 それは、幼女の頭の上に生えているキツネ耳が、どんな手触りかということだ。
 おそらく万人が気になることだと思う。
 俺は、好奇心に駆られて自然と狐耳に手が伸びていた。
 
「暖かくて、ふにゃふにゃしているんだな……」
 
 俺は金髪の幼女――その狐耳を触っていく。
 なんとも言えない不思議な感覚だ。
 一言で言い表すなら、これはいいものだ。
 
「――おっと!」
 
 気がつけば、かなりの時間、狐耳を触っていた。
 
 少しだけ貴族が獣人を狙った気持ちが分かってしまった。
 それと同時に獣人狩りをしていた貴族に対しての苛立ちが募ってくる、
 もしかしたら、同族嫌悪かもしれないな。
 
「……さて、手触りも堪能したし外に出て食事でもするとするか」
 
 俺は、テントから出る。
 そして火元に視線を向けると15歳くらいの銀髪の美少女が鍋に入っているスープを飲んでいた。
 
「……どちら様で?」
「ふがふが――」
「飲み込んでから話せ」
 
 俺の言葉に、銀髪狐耳美少女は頷くと喉を鳴らして口の中の物を飲み込んでいた。
 
「あの……私……」
「俺の名前は、エイジと言う。君は、保護している金髪狐耳の子と知り合いなのか?」
「――あ、妹はここに来ていたのですね! あ、はい! 私はリルカといいます。ずっと追われていて、ここに家を発見して隠れて暮らしていたのですけど……食べるものも冬で減ってきて、最後には食料も尽きて途方に暮れていたのです。森から戻ってきたところで妹が居ないことに気がついて、周囲を探していましたら良い匂いが……」
 
 途中から声のトーンが下がっていき萎んでいく。
 どうやら、自分が悪いことをしたという自覚はあるようだ。
 まぁ俺も、腹が減ったときの辛い気持ちは分かるからな……。
 
「別にいい、腹が減っていたのだろ? なら、仕方ない」
 
 俺は袋の中からパンを数個出して、リルカの方へ放り投げる。
 彼女はパンを受け取ると呆けた表情を俺に見せてきた。
 
「……あ、あの、これは……」
 
 俺は肩を竦める。
 どうせ、冒険者ギルドが開拓民(おれだけ)に置いていった物だ。
 なら、俺がどうしようと文句を言われる謂れは無い。
 
「スープとパン1個じゃ、育ち盛りには足りないだろ? 干し肉も食べるか?」
「ううっ……わたし、私……人間にずっと追い回されていて……」
「人間に?」
 
 俺の言葉に、リルカが頷いてくる。
 おかしい。
 いくらなんでも……。
 エルダ王国は、融和政策を取ると冒険者ギルドからの受領書には書かれていた。
 それなのに、獣人が追われるはずが……。
 
「それは、本当に人間だったのか?」
「はい、エルダ王国の旗を持った人たちでした」
「そうか……、まあ、話は後だ。まずは腹ごしらえでもしておけ」
 
 俺は干し肉をリルカに渡しながら考える。
 エルダ王国の旗を持った連中が本当に、リルカを追い回していたとしたら、それは大問題だ。
 融和政策を取るということは国としての決定だ。
 それを蔑ろにするような行為は、反逆罪と言っても過言ではない。
 問題は、わざわざ旗を掲げてリルカを追いかけまわしていた理由だが、いくつか想像がつく。
 一つは、国が融和政策と嘘をついて獣人狩り活動していること。 
 一つは、貴族が勝手に行動していること。
 そして最悪なパターンが、犬猿の仲である隣国のテラン王国が動いていた場合だ。
 どちらにせよ、お偉方が関わっていることは間違いない。
 
「水でも飲むか?」
 
 急いで食べたのか喉に食べ物を詰まらせた銀髪狐耳美少女のリルカに、白湯を入れたマグカップを渡す。
 彼女は、俺からマグカップを受け取ると一気に飲んでいた。
 不思議なものだ。
 動物というのは基本、猫舌ではないのか?
 
「ありがとうございます。助かりました。それより、妹に会わせてもらってもいいですか?」
「ああ――」
 
 俺は、リルカをテントの中に案内する。
 テントの中では、いまだに金髪狐耳幼女が寝ていた。
 
「エルナ……。よかった無事で……」
 
 安心したのだろう。
 リルカが、自身の妹を見た途端、エルナと名前を呼んで近づくと、座り込んで泣いていた。
 俺は、その様子を見ながら頭を掻く。
やれやれ……。
 
「膝が痛いな……」
 
 俺はテントをリルカという銀髪キツネ耳美少女と、その妹のエルナに貸して外で夜を明かしたのだが、さすがに毛布一枚だと冬も近づいていることもあり寒かった。
 おかげで、矢を受けた膝の痛みが酷い。
 
 それでも、安心した顔で寝ている金髪ケモミミ幼女を起こすわけにはいかなかった。
 困っている人間が居たら、なるべく助け合うのが冒険者の生き様って奴だからだ。
 
 それに……。
 そういうのがあるからこそ、俺も今まで生きてこられたようなものだからな。
 
「とりあえずは、朝食の準備のために枝でも集めるとするか……」
 
 俺は、一人呟く。
 そして、毛布を畳んだあと立ち上がる。
 
「あの……」
「――ん? リルカか? どうかしたのか?」
 
 振り返ると、そこには銀髪赤眼のキツネ耳美少女のリルカが立っていた。
 昨日の夜は星も殆ど出ておらず暗かったこともあり、彼女の容姿を確認することはできなかったが、日本でいうところの16歳くらいの美少女だ。
 俺が、あと20歳くらい若かったら意識して、話もままなかっただろう。
 
 そんな彼女は、何か思いつめたような表情で俺を見たあと、視線を足元に移していく。
 俺も彼女の視線を追ってリルカの足元をみると、そこには昨日、俺の食事を遠慮なく食べつくした金髪のキツネ耳を持った美幼女が居て、リルカの麻色の服裾を掴んで俺を見てきていた。
 怯えている感じはしないが、どこか遠慮がちな瞳で俺を見てきているように感じる。
 
「ほら、エルナ」
 
 リルカは、妹であるエルナの背中を軽く叩いていた。
 主語が無いということは、事前に姉であるリルカから何か言われたのだろう。
 まぁ、だいたい言いたいことは分かる、
 
「あ、あの! カンダしゃん! 昨日は、ありがとうございましゅ わたしゅ、お腹がしゅいていて……」
 
 言葉足らずなのか、所々、話し方がおかしな箇所はあるが、言いたいことは伝わった。
 おそらく昨日の食事に関してだろう。
 
「食事くらいは問題ない。それよりも朝食にしないか? 昨日の夜は、殆ど食べていなかったから腹が減っているんだ」
 
 俺は肩を竦めながら、彼女らに話かける。
 実のところ、人間に追われていたという話を詳しく聞きたいが、いきなり聞いていても昨日の今日だからな。
 答えにくいものもあるだろうし、それにお互い、まったく知らない仲だ。
 そんな状態で、これからの立ち回りに必要な判断材料である情報を求めても意味がない。
 
 信憑性のある情報が欲しいなら、まずは信頼を少しは獲得しないとな。
 それには、食事を提供するのが一番の近道だ。
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