57 / 65
一つ屋根の下での事情4(6)
しおりを挟む
<hr>
翌日は、何時も通り境内の掃除をしたあと朝食を用意し二人で食事を摂り学校へ行き一日の大半が終わる。
帰宅し巫女服に着替えたあとは境内の掃除に向かう。
「莉緒、帰ったか」
「総司さん、ただいま戻りました」
さっきは境内を通った時には姿を見かけなかったけど、よくよく考えればそこまで意識はしていなかったと思い直す。
「おかえり。それで莉緒の意見を聞きたいんだがいいか?」
「はい。――でも、何でしょうか?」
「実は舞いを踊る舞台の修繕に関してなんだが――」
「そういう事ですか」
神社の一角には、巫女が舞いを踊る舞台が用意されていて、そこで奉納を行う事になっている。
その場所も、数年間放置されていた事で土台の部分にかなりガタが来ていたので修繕する必要があるようで、その事に関して色々と聞かれた。
「――で、どのくらいで間に合う?」
「そうですね。夏が終わるくらいまでには――」
「夏に巫女舞を一度行う行事がある。何とか、それまでに終わらせることは出来ないか?」
「何とかしてみましょう」
「莉緒も、それで大丈夫か?」
「えっと、どうして私が?」
「お前が舞うからに決まっているだろう」
あー。そんな話がありましたね。
てっきり忘れていました。
でも、そうすると奉納の舞を行うまで逆算で4ヵ月も無い事になる。
一度、反復練習をしないと不味いかも。
「分かりました。巫女舞の練習をしたいと思いますので本番前に舞台を用意とかは……」
私はチラリと宮大工の親方の方へと視線を向ける。
すると親方は溜息をつきながら――、「奉納の儀は何時行うんだ?」と、聞いてきた。
何とか奉納の儀を行う一週間前に作業を終わらせられるように手配をお願いしたあと、高槻さんと共に母屋に戻る。
「莉緒」
お茶を用意し二人してテーブルの前に着席したところで、彼から話を切り出してきた。
「はい?」
「奉納の儀まで一週間で調整は出来るのか?」
「それまでに、無駄に広い母屋でも練習をしますので大丈夫です。それよりも巫女舞の時には小物が色々と必要ですので用意をして頂けますか?」
「その点に関しては既に手配済みだ。4月末には届く計算だから、大丈夫か?」
「はい。新入生の入学式の用意などもありますから丁度いいと思います」
「そうか。あとは、物が届いた時に足りないものがあったら頼む形だな」
「そうですね」
翌日からは普段どおりに家事を行い学校へ通う日々が続く。
ただ、美穂や大和とは距離が空いたまま。
そして――、3週間が過ぎ――4月の半ばに差し掛かり新入生の入学式が滞りなく終わり、2週間が経った頃に巫女舞で使用する神楽鈴や衣装などが届いた。
翌日は、何時も通り境内の掃除をしたあと朝食を用意し二人で食事を摂り学校へ行き一日の大半が終わる。
帰宅し巫女服に着替えたあとは境内の掃除に向かう。
「莉緒、帰ったか」
「総司さん、ただいま戻りました」
さっきは境内を通った時には姿を見かけなかったけど、よくよく考えればそこまで意識はしていなかったと思い直す。
「おかえり。それで莉緒の意見を聞きたいんだがいいか?」
「はい。――でも、何でしょうか?」
「実は舞いを踊る舞台の修繕に関してなんだが――」
「そういう事ですか」
神社の一角には、巫女が舞いを踊る舞台が用意されていて、そこで奉納を行う事になっている。
その場所も、数年間放置されていた事で土台の部分にかなりガタが来ていたので修繕する必要があるようで、その事に関して色々と聞かれた。
「――で、どのくらいで間に合う?」
「そうですね。夏が終わるくらいまでには――」
「夏に巫女舞を一度行う行事がある。何とか、それまでに終わらせることは出来ないか?」
「何とかしてみましょう」
「莉緒も、それで大丈夫か?」
「えっと、どうして私が?」
「お前が舞うからに決まっているだろう」
あー。そんな話がありましたね。
てっきり忘れていました。
でも、そうすると奉納の舞を行うまで逆算で4ヵ月も無い事になる。
一度、反復練習をしないと不味いかも。
「分かりました。巫女舞の練習をしたいと思いますので本番前に舞台を用意とかは……」
私はチラリと宮大工の親方の方へと視線を向ける。
すると親方は溜息をつきながら――、「奉納の儀は何時行うんだ?」と、聞いてきた。
何とか奉納の儀を行う一週間前に作業を終わらせられるように手配をお願いしたあと、高槻さんと共に母屋に戻る。
「莉緒」
お茶を用意し二人してテーブルの前に着席したところで、彼から話を切り出してきた。
「はい?」
「奉納の儀まで一週間で調整は出来るのか?」
「それまでに、無駄に広い母屋でも練習をしますので大丈夫です。それよりも巫女舞の時には小物が色々と必要ですので用意をして頂けますか?」
「その点に関しては既に手配済みだ。4月末には届く計算だから、大丈夫か?」
「はい。新入生の入学式の用意などもありますから丁度いいと思います」
「そうか。あとは、物が届いた時に足りないものがあったら頼む形だな」
「そうですね」
翌日からは普段どおりに家事を行い学校へ通う日々が続く。
ただ、美穂や大和とは距離が空いたまま。
そして――、3週間が過ぎ――4月の半ばに差し掛かり新入生の入学式が滞りなく終わり、2週間が経った頃に巫女舞で使用する神楽鈴や衣装などが届いた。
2
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
【完結】生贄として育てられた少女は、魔術師団長に溺愛される
未知香
恋愛
【完結まで毎日1話~数話投稿します・最初はおおめ】
ミシェラは生贄として育てられている。
彼女が生まれた時から白い髪をしているという理由だけで。
生贄であるミシェラは、同じ人間として扱われず虐げ続けられてきた。
繰り返される苦痛の生活の中でミシェラは、次第に生贄になる時を心待ちにするようになった。
そんな時ミシェラが出会ったのは、村では竜神様と呼ばれるドラゴンの調査に来た魔術師団長だった。
生贄として育てられたミシェラが、魔術師団長に愛され、自分の生い立ちと決別するお話。
ハッピーエンドです!
※※※
他サイト様にものせてます
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる