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至れり尽くせり

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 虚ろなまま瞼を開けると、そこは見慣れない天井。
 ボーッと、考え事をしていると、ようやく自分が寝ていることに気が付き辺りを見渡す余裕が出来てくる。

「ここは……」

 掠れた声。
 腕には針が刺さっていて、それが点滴だと気が付き、ようやく自分が倒れた事に気が付く。

「病院?」
「――ん? 莉緒、起きたのか?」

 そこで、ようやく高槻さんが部屋にいる事に気が付いた。
 彼は、私が寝ているベッドから少し離れた位置にある椅子に座っていて、立ち上がると私の傍までくると額に置かれていたタオルを手に取ると氷が入っているであろう水にタオルを浸けた後、タオルを絞ると私の額に乗せてきた。

「どうだ? 具合の方は――」
「もう、大丈夫です」
「…………はぁ」

 高槻さんは小さく溜息をつくと、私の喉元に指先を当てると眉間に皺を寄せる。

「まだまだ熱があるな。苦しいんだろう? スポーツ飲料だ。飲めるか?」
「今は、何も――」
「飲んでおかないと身体に悪い。ほら――」

 彼は、そう言うと私の身体を支え――、飲料を飲みやすいように体勢を整えてくれる。
 
「病人が無理をするな」

 そう高槻さんは言うと、スポーツ飲料を飲ませてくる。
 ずっと高温の状態で体温を維持していた弊害からなのか、スポーツ飲料がすごく美味しく感じる。
 500mlを一気に飲んだあとは、私は疲れてしまい、そのままベッドの上に寝かせてもらった。

「ごめんなさい」
「何がだ?」
「仕事が出来なくて……、高つ――、総司さんに御迷惑をかけて」
「気にすることはない。それに櫟原から聞いたが巫女服というのは寒いのだろう? それならそうと言って欲しい。今回のような事が起きたら気が気ではないからな」
「心配しているんですか?」
「当たり前だ。第一、お前はすぐに自分で物事を抱え込む癖がある。もう少し俺を頼ってくれ。今回のような事が何度も起きるようだと俺の心臓がもたない」
「はい……」
「分かったならいい。とりあえず、ゆっくり寝ろ。学校の方には、俺から連絡を入れておくから」

 私は頷くけど、すぐに眠気に負けてしまい意識を失った。
 それから3日間、病院に入院することになり――、誰もお見舞いには来ないと思っていたけれど、高槻さんは病院にこれでもか! という程、入り浸り私の面倒を見てくれた。

 ――4日目の病室での往診。

「熱は下がったようだね」
「先生ありがとうございます」
「いや、それより今日で退院も大丈夫だと思いますがどうしますか?」
「念のために今日も入院をお願いします」

 病院の先生と会話をしているのは、高槻さん。

「分かりました。それでは、そのように手続きを行っておきます」

 医者の言葉に高槻さんは頭を下げる。
 俺様風の高槻さんが、そんな殊勝な態度を取るとは思っていなかったので少し以外。

「少し外す。何か、あったら櫟原に頼れよ?」
「はい」

 すでに熱も引いているので、そこまで心配しなくてもいいと思うのにと思いつつ、ベッドに横になると――、「宮内さん」と、櫟原さんが話しかけてきた。

「はい?」
「ありがとうございます」

 櫟原さんの方へと視線を向けると同時に彼は頭を下げてきた。


 

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