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第20話 一つ屋根の下での事情(5)
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翌朝、高槻さんが帰ってきていない事を確認したあと、私は仕事着に着替えて新調されたばかりの物置小屋から竹箒を手に境内に向かう。
たった一日で、物置小屋が新しくなっている事には驚いた。
ただ、櫟原さんの話だと業者さんにお金を払って迅速な対応をお願いしたらしい。
「やっぱり春先だから寒いよね……」
しかも、高槻神社の裏手は手つかずの山。
林業の人が時々、戸沢村周辺の無駄な木を伐採しているので、そこまで鬱葱はしていないけれど、やっぱり寒さの原因の一つにはなっていると思う。
境内を、竹箒で掃き掃除したあとは、高槻神社と書かれている鳥居の手前に置かれている石柱に水をかけて綺麗にする。
そのあとは、手水舎と呼ばれる参拝前に手を洗う設備――、主に柄杓が汚れていないかを確認。
念のために水で洗ったあとは家事をするために母屋へと戻ろうとしたところで、社務所が目に止まる。
今の社務所は、使われていない。
何より掃除などをしようにも素人の私では、先代の神主が亡くなり5年間も神社が放置された事で荒れている社務所をどうにもできない。
「昔は、あそこで――」
私が、まだ小学生の頃。
お母さんが存命だった時に、私は高槻神社の巫女の仕事を手伝っていた事がある。
理由は、簡単。
お母さんが、昔は若い頃に高槻神社で巫女のアルバイトをしていたから。
私の場合はアルバイトではなくお手伝いだったのでお金も発生しなかったけど……。
「たしか、あの時は巫女舞ができる人がいなくて私がやったんだよね……。先代神主の奥さんの千代さんに、すっごく鍛えられたっけ……。指導が厳しかったから、結局残ったのは、お母さんに紹介もとい押し付けられた私だけだけど……」
思わず笑みが零れてしまう。
「そういえば、あの時って巫女舞をしたのは私だけだよね……」
懐かしい思い出が胸中を満たすと共に社務所では、以前はお守りとかも渡していたっけと思い出す。
「そういえば、お守りとかは置かないのかな?」
一応、神社として活動するのなら、その辺はシッカリとしておいた方がいいと思うんだけど……、高槻さんは仕事があって高収入らしいから神社のお仕事とかはあまり気にしないのかも知れない。
「でも神社って、お守りとか御神籤とか無いと神社って感じしないよね」
あくまでも私の意見の一つだけど。
それでも社務所は何とかしてもらいたいかも……。
そんなことを思いつつ、母屋へと戻る。
部屋に戻り巫女服から高校のブレザーに着替えたあとリボンをキチンと結ぶ。
そのあとは、カバンを持ち携帯電話に手を伸ばしたところで着信ランプが点滅している事に気が付く。
「あれ? 着信ランプが……」
画面を起動させると、そこには着信が3件と表示されていて、全てが高槻総司さんの電話番号だった。
「これは……、電話に出なかったら怒られるパターン?」
――でも、電話しなかったら余計に怒られそう。
少し、気持ちが沈みそうになりながらも折り返し電話をすると、しばらくトゥルルルとなったあと――、
「高槻だ。莉緒か!?」
「――え? あ、はい……」
「そうか……、よかった……」
「――え?」
「いや、なんでもない。それより、何か問題とか無かったか?」
「はい。特に何もありませんでした」
「コホンっ! そ、そうか……。何も無ければいい」
「えっと……総司さん……もしかして私のことを心配して――」
「そんな事あるわけがないだろう? 勘違いするなよ? お前は、俺に借金がある。つまり、お前が逃げたら借金返済をする奴がいなくなる。つまり、そういうことだ!」
「ですよねー」
一瞬、私のことを心配してくれたのかと思ったけど、やっぱり私の勘違いだったみたい。
翌朝、高槻さんが帰ってきていない事を確認したあと、私は仕事着に着替えて新調されたばかりの物置小屋から竹箒を手に境内に向かう。
たった一日で、物置小屋が新しくなっている事には驚いた。
ただ、櫟原さんの話だと業者さんにお金を払って迅速な対応をお願いしたらしい。
「やっぱり春先だから寒いよね……」
しかも、高槻神社の裏手は手つかずの山。
林業の人が時々、戸沢村周辺の無駄な木を伐採しているので、そこまで鬱葱はしていないけれど、やっぱり寒さの原因の一つにはなっていると思う。
境内を、竹箒で掃き掃除したあとは、高槻神社と書かれている鳥居の手前に置かれている石柱に水をかけて綺麗にする。
そのあとは、手水舎と呼ばれる参拝前に手を洗う設備――、主に柄杓が汚れていないかを確認。
念のために水で洗ったあとは家事をするために母屋へと戻ろうとしたところで、社務所が目に止まる。
今の社務所は、使われていない。
何より掃除などをしようにも素人の私では、先代の神主が亡くなり5年間も神社が放置された事で荒れている社務所をどうにもできない。
「昔は、あそこで――」
私が、まだ小学生の頃。
お母さんが存命だった時に、私は高槻神社の巫女の仕事を手伝っていた事がある。
理由は、簡単。
お母さんが、昔は若い頃に高槻神社で巫女のアルバイトをしていたから。
私の場合はアルバイトではなくお手伝いだったのでお金も発生しなかったけど……。
「たしか、あの時は巫女舞ができる人がいなくて私がやったんだよね……。先代神主の奥さんの千代さんに、すっごく鍛えられたっけ……。指導が厳しかったから、結局残ったのは、お母さんに紹介もとい押し付けられた私だけだけど……」
思わず笑みが零れてしまう。
「そういえば、あの時って巫女舞をしたのは私だけだよね……」
懐かしい思い出が胸中を満たすと共に社務所では、以前はお守りとかも渡していたっけと思い出す。
「そういえば、お守りとかは置かないのかな?」
一応、神社として活動するのなら、その辺はシッカリとしておいた方がいいと思うんだけど……、高槻さんは仕事があって高収入らしいから神社のお仕事とかはあまり気にしないのかも知れない。
「でも神社って、お守りとか御神籤とか無いと神社って感じしないよね」
あくまでも私の意見の一つだけど。
それでも社務所は何とかしてもらいたいかも……。
そんなことを思いつつ、母屋へと戻る。
部屋に戻り巫女服から高校のブレザーに着替えたあとリボンをキチンと結ぶ。
そのあとは、カバンを持ち携帯電話に手を伸ばしたところで着信ランプが点滅している事に気が付く。
「あれ? 着信ランプが……」
画面を起動させると、そこには着信が3件と表示されていて、全てが高槻総司さんの電話番号だった。
「これは……、電話に出なかったら怒られるパターン?」
――でも、電話しなかったら余計に怒られそう。
少し、気持ちが沈みそうになりながらも折り返し電話をすると、しばらくトゥルルルとなったあと――、
「高槻だ。莉緒か!?」
「――え? あ、はい……」
「そうか……、よかった……」
「――え?」
「いや、なんでもない。それより、何か問題とか無かったか?」
「はい。特に何もありませんでした」
「コホンっ! そ、そうか……。何も無ければいい」
「えっと……総司さん……もしかして私のことを心配して――」
「そんな事あるわけがないだろう? 勘違いするなよ? お前は、俺に借金がある。つまり、お前が逃げたら借金返済をする奴がいなくなる。つまり、そういうことだ!」
「ですよねー」
一瞬、私のことを心配してくれたのかと思ったけど、やっぱり私の勘違いだったみたい。
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