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第7話 新しい制服ですか!?
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朝食が終わったころには時刻は、午前7時半を指している。
「あっ! 急がないと!」
私は、急いで食器やお箸を洗う。
そのあとは食器の水を切る為に籠に立て掛けておく。
「あの、私!」
「分かっている。学業にまで口を出すつもりはない。一応は外には嫁入りという事にしてあるからな」
どうやら学校は普通に通わせてくれることで安心する。
私はすぐに2階の自室として宛がわれている部屋に入りバックを片手に母屋を出ると、石階段の下には車が停まっていることに気が付く。
そして、そこには櫟原さんも立っていて――、
「櫟原さん達もお出かけですか?」
その割には車の後部座席には高槻さんは居ないみたいだけど。
「いいえ。高槻様より宮内さんを学校までお送りするようにと指示を受けておりますので」
「いえいえ。大丈夫ですから!」
私は両手を突き出すような形で丁重にお断りする。
そんな、どこぞの大企業の御曹司に嫁入りした女子高生のように車で学校まで送ってもらう訳にはいかない。
だって、学校では家が貧乏だというのは皆が知っていることだし――、
「宮内さん。高槻様のご婚約者であり嫁入りするという事になっているのですから、それなりの身嗜みをして頂かなくては困ります。これも仕事という事で割り切ってください」
「あ、はい……」
どうやら私に決定権はないようで――、櫟原さんが開けてくれた後部座席のドアから車に乗る。
そこで私は、ふと気になっていたことを聞くことにする。
「櫟原さん」
「何でしょうか?」
「この車って昨日、乗っていた車とは別ですよね?」
「はい。昨日はベンツです。学校にベンツですと存在が浮いてしまうという高槻様の指示によりロールスロイスをご用意致しました」
「……そ、そうですか」
ロールスロイスは高級外車だという事は貧乏な私でも知っているんだけど? と、いう突っ込みはしないことにする。
余計な波風を立てるのは、また高槻さんに何かを言われそうと思ったから。
「それと、新しい制服をご用意しておきました。車の中でお着換えください」
たしかに後部座席には茶色い大きな紙袋がポツンと置かれている。
「着替えですか?」
「はい。下着は別と致しまして2年間も同じ制服やシャツ、靴下を使っていてはという事でしたので」
「それも高槻さ……総司さんからの指示ですか?」
「はい。そうなります。高槻様が、宮内さんの下着などを袋に詰めておりましたので」
「……」
ちょっとというか、かなりのドン引き……。
それと共に、その場面を思い出すと、少しシュールな場面を思い出して、思わずふふっと笑ってしまう。
「――あ、いまのは!」
「分かっております。学校まではすぐですので、お早目に」
「はい」
頷くと、運転手と後部座席の間に黒いフィルムが張られた敷居が下りてきて後部座席は密室みたいになる。
私は、それを見たあと一つ溜息をつく。
そして、くたびれた制服と靴下を脱いだあと、紙袋に入っていた新品に着替える。
さらに新品のローファも入っていたので履く。
最後に、着ていた制服などを折りたたんで紙袋に入れようとしたところで、もう一個箱が入っていることに気が付く。
「これって……」
ずいぶんと高そうな白い箱。
箱を開けると中には銀色のバレッタが入っていて、金色の花細工がバレッタにアクセントをつけている。
その花は――桜で……。
「すごく高そう……」
どうしようか迷っているところで、車は高校の校門前に到着した。
車の外からドアをノックする音が聞こえてきたところで、私は後部座席の窓も何時の間にかスモーク硝子になっている事に気が付く。
きっと運転手側からも外からも見えない状態になっていて、それで櫟原さんはノックをしてきたのかも知れない。
私は、後部座席側のドアの窓をボタンを押して少しだけ下げる。
「着替えは終わりましたか?」
「はい。あっ! えっと……、髪留めが入っていたんですけど……」
「それは、高槻様が用意したものです。長い髪は巫女服に映えるので切らないようにという事で用意されたとのことです」
「そうですか……。あの此れも借金にプラスされたりは……」
「どうでしょうか?」
曖昧な返事をしてくる櫟原さん。
その様子に、私の借金が増えるような予感がするけど、雇い主が着けろというなら、路頭に迷わない為にも素直につけておくしかない。
私は、腰まで伸びている黒髪を纏めると後ろでバレッタを使い纏める。
「宮内さん、どうでしょうか?」
「終わりました」
「それでは、ドアを開けます」
ガチャ! と、言う音と共に、車の後部側のドアが櫟原さんの手で開く。
車から出たところで――、
「それでは、宮内様。いってらっしゃいませ」
そう――、うやうやしく頭を下げてくる櫟原さんに私は苦笑いで返し校門へと向かう。
もちろん私が車で初登校するという前代未聞の珍事件を学校の学友が黙っているはずもなく――、
「莉緒!」
教室に到着して、席に座ると同時に友人である美穂が話しかけてきた。
「あっ! 急がないと!」
私は、急いで食器やお箸を洗う。
そのあとは食器の水を切る為に籠に立て掛けておく。
「あの、私!」
「分かっている。学業にまで口を出すつもりはない。一応は外には嫁入りという事にしてあるからな」
どうやら学校は普通に通わせてくれることで安心する。
私はすぐに2階の自室として宛がわれている部屋に入りバックを片手に母屋を出ると、石階段の下には車が停まっていることに気が付く。
そして、そこには櫟原さんも立っていて――、
「櫟原さん達もお出かけですか?」
その割には車の後部座席には高槻さんは居ないみたいだけど。
「いいえ。高槻様より宮内さんを学校までお送りするようにと指示を受けておりますので」
「いえいえ。大丈夫ですから!」
私は両手を突き出すような形で丁重にお断りする。
そんな、どこぞの大企業の御曹司に嫁入りした女子高生のように車で学校まで送ってもらう訳にはいかない。
だって、学校では家が貧乏だというのは皆が知っていることだし――、
「宮内さん。高槻様のご婚約者であり嫁入りするという事になっているのですから、それなりの身嗜みをして頂かなくては困ります。これも仕事という事で割り切ってください」
「あ、はい……」
どうやら私に決定権はないようで――、櫟原さんが開けてくれた後部座席のドアから車に乗る。
そこで私は、ふと気になっていたことを聞くことにする。
「櫟原さん」
「何でしょうか?」
「この車って昨日、乗っていた車とは別ですよね?」
「はい。昨日はベンツです。学校にベンツですと存在が浮いてしまうという高槻様の指示によりロールスロイスをご用意致しました」
「……そ、そうですか」
ロールスロイスは高級外車だという事は貧乏な私でも知っているんだけど? と、いう突っ込みはしないことにする。
余計な波風を立てるのは、また高槻さんに何かを言われそうと思ったから。
「それと、新しい制服をご用意しておきました。車の中でお着換えください」
たしかに後部座席には茶色い大きな紙袋がポツンと置かれている。
「着替えですか?」
「はい。下着は別と致しまして2年間も同じ制服やシャツ、靴下を使っていてはという事でしたので」
「それも高槻さ……総司さんからの指示ですか?」
「はい。そうなります。高槻様が、宮内さんの下着などを袋に詰めておりましたので」
「……」
ちょっとというか、かなりのドン引き……。
それと共に、その場面を思い出すと、少しシュールな場面を思い出して、思わずふふっと笑ってしまう。
「――あ、いまのは!」
「分かっております。学校まではすぐですので、お早目に」
「はい」
頷くと、運転手と後部座席の間に黒いフィルムが張られた敷居が下りてきて後部座席は密室みたいになる。
私は、それを見たあと一つ溜息をつく。
そして、くたびれた制服と靴下を脱いだあと、紙袋に入っていた新品に着替える。
さらに新品のローファも入っていたので履く。
最後に、着ていた制服などを折りたたんで紙袋に入れようとしたところで、もう一個箱が入っていることに気が付く。
「これって……」
ずいぶんと高そうな白い箱。
箱を開けると中には銀色のバレッタが入っていて、金色の花細工がバレッタにアクセントをつけている。
その花は――桜で……。
「すごく高そう……」
どうしようか迷っているところで、車は高校の校門前に到着した。
車の外からドアをノックする音が聞こえてきたところで、私は後部座席の窓も何時の間にかスモーク硝子になっている事に気が付く。
きっと運転手側からも外からも見えない状態になっていて、それで櫟原さんはノックをしてきたのかも知れない。
私は、後部座席側のドアの窓をボタンを押して少しだけ下げる。
「着替えは終わりましたか?」
「はい。あっ! えっと……、髪留めが入っていたんですけど……」
「それは、高槻様が用意したものです。長い髪は巫女服に映えるので切らないようにという事で用意されたとのことです」
「そうですか……。あの此れも借金にプラスされたりは……」
「どうでしょうか?」
曖昧な返事をしてくる櫟原さん。
その様子に、私の借金が増えるような予感がするけど、雇い主が着けろというなら、路頭に迷わない為にも素直につけておくしかない。
私は、腰まで伸びている黒髪を纏めると後ろでバレッタを使い纏める。
「宮内さん、どうでしょうか?」
「終わりました」
「それでは、ドアを開けます」
ガチャ! と、言う音と共に、車の後部側のドアが櫟原さんの手で開く。
車から出たところで――、
「それでは、宮内様。いってらっしゃいませ」
そう――、うやうやしく頭を下げてくる櫟原さんに私は苦笑いで返し校門へと向かう。
もちろん私が車で初登校するという前代未聞の珍事件を学校の学友が黙っているはずもなく――、
「莉緒!」
教室に到着して、席に座ると同時に友人である美穂が話しかけてきた。
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