婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫

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第81話 各々の休日(4)

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「ところで話ってのは昨日の件か?」
「ああ」

 カグラが頷くと木製の板を差し出してきた。
 受け取り、文字を読んでいくと金貨600枚と書かれている。

「これは?」
「昨日の報酬だ。昨日、君達が壊したマジック・テントだが、1割だけ補償させて貰う事になった。本来なら3割なのだが、こちらの職員が一番の問題だからな」
「つまり、そちらに非がある事を認めた上で1割補償しろと?」
「ああ、私としても、ここまで交渉するので精一杯だった。すまないな」
「……分かった」

 まぁ、アリーシャのことだから、そこまで気にすることはないだろう。
 それに、迷宮都市で冒険者ギルドと敵対することは好ましくない。
 何せ、総督府と繋がっているのだから。
 やれやれ、ラッセル王国で騎士の真似事をしていた時と何も変わらないか。

「ずいぶんと素直に承諾してくれるな」
「断られるのも想定の内だったのか?」
「――いや。何とか頼もうとしていた」
「何とかね……」
「それは当然だろう? 君達、二人の実力は私の見立てでは迷宮都市の冒険者ギルドに所属している冒険者の中でも5本の指に入る強さだからな。そんなのと事を構えるなんて、自殺行為もいいところだ」

 カグラが肩を竦める。

「もしかして、交渉材料として持ち出したのは私達の強さなのか?」
「それ以外に何がある? 冒険者の強さがあれば、ある程度の融通は利く。それが冒険者だ」
「力が全てってことか」
「全てとは言わないが、強ければ、それだけ危険な依頼をこなしてくれるからな。期待を込めて他の冒険者とは違う対応をとることはある」
「総督府お抱えの組織とは思えないが……」

 冒険者ギルドというのは、そもそも国お抱えの組織。
 個人が経営しているように見えて、その実は市民の最終セーフティネットであり仕事を斡旋する場所。

「ある程度は優遇をしないと別の国に行かれたら困るからな」
「なるほど……だが、それなら無料にしてほしかったが……」
「それは国が管理している組織だからな。そこまで融通してしまったら、他の冒険者から不平不満が出てしまう。ここらが落としどころだと思ってくれ」
「分かっている。言ってみただけだ」

 私はカグラから羊皮紙を受け取る。
 そこには直筆でカグラの名前が書かれている。
 そして羊皮紙には、テントを破壊した補償のために一部をクエスト達成金から払うと書かれていた。

「それじゃな」
「ああ、君達のダンジョンでの指導は終わったが、くれぐれも無理をしないようにな。優秀な冒険者を失うのは迷宮都市グラナドにとっても大きな損失だからな」
「あいよ」

 手を振り答えながら、私はカグラの部屋を後にした。



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