婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫

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第67話 ダンジョン探索(17)

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 階段を降りた場所は、壁にランタンが掛けられてはいるけれど、4階層までの人の手入れがされた場所とは明らかに違っていて、壁に苔などが生えていた。

「4階層と5階層は、まったく違うのですね」
「そうだな。一応、20階層まではランタンが壁にかけられているが、出てくる魔物の強さが跳ねあがるから定期巡回して魔物を討伐する事も容易ではない」
「つまり、この階層から魔物が出てくる可能性が高いと!?」

 エリザさんが、笑みを浮かべてカグラさんを見つめている。
 その瞳はキラキラと光っていて、ようやく戦えるという高揚感に満ち溢れているようで……。

「あ、ああ。だが――、5階層はゴブリンとかだが……」
「ゴブリンですか……」

 私はランタンで照らされている通路の先を見て呟く。
 とくに魔物の気配も感じない。

「エリザさん。距離に気を付けて進みましょう」
「分かっている!」
「お、おい! 無造作に進むと脇道から潜んでいた魔物が襲ってくるかも知れないぞ!」

 歩き出したエリザさんを止めようとしてカグラさんが手を伸ばす。
 ただ、そのカグラさんの手は空を切ってしまい「え?」と、言うカグラさんの声が迷宮内に木霊する。

 すでにエリザさんは距離として10メートルほど先を歩いていたから。

「一体、何が!?」
「カグラさん、エリザさんなら大丈夫だと思います」
「だが――、今回はダンジョンの下見というか見学が主だったはずだ。何かあれば――」
「ギャアアアア」

 途中までカグラさんが言いかけたところで、断末魔というか苦しみを訴えかけてくる声が聞こえてきた。

「これが迷宮のゴブリンか」

 そう呟きながら、エリザさんがゴブリンの首を掴みながら空中に放り投げ――、腰から抜き放った両刃の剣を一閃。
 襲ってきたであろうゴブリンを上下から切り分ける。

「さて、いくとするか」

 私が魔法文字で強化した両刃の剣を鞘に納め乍ら、何事も無かったようにエリザさんは歩き出す。

「エリザ! ここはパーティで動くことが原則になっているはずだぞ!」
「……分かった」

 気分を害されたからなのか、エリザさんはブスッとした口調で呟くとゆっくりと歩きだす。
 そのあとを私とカグラさんは付いていく。
 しばらく歩くと、ゴブリンが大軍で襲い掛かってくるけど、全てのゴブリンを刹那の時間でエリザさんが斬り伏せる。

「30匹近く襲ってきたゴブリンを瞬殺だ……と……!?」
「まぁ、とりあえず先に進みましょう」

 驚いているカグラさんの腕を掴み、私はエリザさんの後をついていく。
 もちろんエリザさんが歩いたあとはゴブリンの屍の山が築かれている。

「到着したぞ!」
「ボス部屋ってやつですね」
「もうボス部屋か!? ここのボスはゴブリンロードだ。今までの――」

 ――ゴゴゴゴゴ

 カグラさんの話を聞かずにエリザさんがボス部屋へ通じる両開きの――、高さ5メートル近い扉を開けていく。
 中に入ると扉は閉まる。

「少しは私の話を聞け!」
「グルルルル。人間! 女! おか――ぐへっ」

 ゴブリンよりも二回りほど大きな2メートル近い巨漢の魔物の頭を、エリザさんの白銀の両刃剣が斬り飛ばす。

「――さて、5階層は攻略したな」
「そうですね。さっさとクーラーなる魔道具を手に入れるために、とりあえず20階層まで向かいましょう」
「なんなんだ……お前達は……」



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