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第44話 迷宮都市グラナド(16)
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「ダンジョンなら、あるんじゃないのか?」
「たしかに……」
各種、穀物や物品が回収というか採取できるダンジョンなら、手に入れることが出来るかも知れない。
だけど、問題は採取場所だけでは……。
「――なら、今からダンジョンに、ひとっ走りして手に入れてくる!」
「まってください。エリザさん」
「まだ何か欲しいモノがあるのか?」
「いえ。そうではなくて……」
途中まで言いかけた所で、咳が出てくる。
完全に症状は風邪に近い。
「なら――、他に何かあるのか?」
「私の症状は見た目が風邪かも知れませんが。それは素人が見ただけに過ぎないという事です。つまり、本当に普通の風邪かどうかの判断は、私達では見分けが付かないという事になります」
「つまり、どの薬草が必要なのか分からないという事か?」
「はい」
最後まで説明するまでもなくエリザさんが理解してくれた。
いつも、短絡的というか実直すぎる彼女ではあるけれど、危機的状況に陥った時の判断力が非常に高い。
「そうなると、医師を探してくるのが先決だな」
「そうなります」
「分かった! 町の人間に手当たり次第聞いてくる!」
それだけ言うと、エリザさんは部屋から出ていく。
そして、少しして玄関の開く音と閉まる音が聞こえてきた。
「お医者の方が見つかればいいのですが……」
私が以前に回復魔法を習った時に、外傷などの傷は回復魔法で治す事が出来ると教えられた。
ただし、病に関しては医療に携わった知識を持つ専門職でないと適切な処置が出来ず回復魔法で治そうとした場合、病を悪化させる可能性があると説明を受けた。
実際、妃教育を受けている時に熱っぽいと思った時に回復魔法を使い症状を悪化させて寝込む事態に発展した事があるので、私は、それ以降、病に罹った時に回復魔法で治すような事はしていない。
「エリザさん。大丈夫でしょうか」
迷宮都市グラナドに滞在して数日。
この町の事に関して、私やエリザさんは知らない事の方が非常に多い。
そんな中で、医療を専門としている人物を探して連れてくるのは大変だと思う。
「一人では、対処が出来なかったですね」
思わずエリザさんと知り合って良かったと少し思いながら、薄れていく意識の中で私は気を失った。
――何か人が話をしているような声が聞こえてきた。
私は、混濁している意識の中で、耳元で会話の内容を聞き取ろうと必死に考える。
「それでは、薬は飲ませましたので、数日は安静にしておいてください」
「ありがとうございます」
「いえ、お礼を言われるほどでは――」
「無理を言ってしまって来てもらったので……」
「無理どころか脅しに近かったですけどね!?」
何か、エリザさんと聞いた事がない女性の声が聞こえてくる。
会話の中で脅しに近いという内容が、耳に入ってきたけど……、エリザさんは一体? 何をしたのか?
少し問い詰めてあげたい所ですけど、すぐに睡魔が襲ってきた。
「たしかに……」
各種、穀物や物品が回収というか採取できるダンジョンなら、手に入れることが出来るかも知れない。
だけど、問題は採取場所だけでは……。
「――なら、今からダンジョンに、ひとっ走りして手に入れてくる!」
「まってください。エリザさん」
「まだ何か欲しいモノがあるのか?」
「いえ。そうではなくて……」
途中まで言いかけた所で、咳が出てくる。
完全に症状は風邪に近い。
「なら――、他に何かあるのか?」
「私の症状は見た目が風邪かも知れませんが。それは素人が見ただけに過ぎないという事です。つまり、本当に普通の風邪かどうかの判断は、私達では見分けが付かないという事になります」
「つまり、どの薬草が必要なのか分からないという事か?」
「はい」
最後まで説明するまでもなくエリザさんが理解してくれた。
いつも、短絡的というか実直すぎる彼女ではあるけれど、危機的状況に陥った時の判断力が非常に高い。
「そうなると、医師を探してくるのが先決だな」
「そうなります」
「分かった! 町の人間に手当たり次第聞いてくる!」
それだけ言うと、エリザさんは部屋から出ていく。
そして、少しして玄関の開く音と閉まる音が聞こえてきた。
「お医者の方が見つかればいいのですが……」
私が以前に回復魔法を習った時に、外傷などの傷は回復魔法で治す事が出来ると教えられた。
ただし、病に関しては医療に携わった知識を持つ専門職でないと適切な処置が出来ず回復魔法で治そうとした場合、病を悪化させる可能性があると説明を受けた。
実際、妃教育を受けている時に熱っぽいと思った時に回復魔法を使い症状を悪化させて寝込む事態に発展した事があるので、私は、それ以降、病に罹った時に回復魔法で治すような事はしていない。
「エリザさん。大丈夫でしょうか」
迷宮都市グラナドに滞在して数日。
この町の事に関して、私やエリザさんは知らない事の方が非常に多い。
そんな中で、医療を専門としている人物を探して連れてくるのは大変だと思う。
「一人では、対処が出来なかったですね」
思わずエリザさんと知り合って良かったと少し思いながら、薄れていく意識の中で私は気を失った。
――何か人が話をしているような声が聞こえてきた。
私は、混濁している意識の中で、耳元で会話の内容を聞き取ろうと必死に考える。
「それでは、薬は飲ませましたので、数日は安静にしておいてください」
「ありがとうございます」
「いえ、お礼を言われるほどでは――」
「無理を言ってしまって来てもらったので……」
「無理どころか脅しに近かったですけどね!?」
何か、エリザさんと聞いた事がない女性の声が聞こえてくる。
会話の中で脅しに近いという内容が、耳に入ってきたけど……、エリザさんは一体? 何をしたのか?
少し問い詰めてあげたい所ですけど、すぐに睡魔が襲ってきた。
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