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第39話 迷宮都市グラナド(11)
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それなりの本を読み、グラナドの図書館から出た頃には日は沈みかけていた。
「そろそろ帰りますか」
「そうだな」
エリザさんは、肩を回しながら答えてきます。
「エリザさんは眠そうですね」
「まぁ、私は体を動かしていた方が性に合っているからな」
「そうですね」
「アリーシャは、本を読むのが好きなのか?」
「はい。本は、色々な知識を身に着けることができますし、物語などの読み物は楽しいですから」
妃教育を受けていた時に、気分転換に王宮図書館で目についたのは恋愛系の読み物で、それは幼少期に両親から離された私とって心の支えでもあったこともあり、読み物は大好き。
「そうなのか。私は、両親によく本を読むようにと言われていたが、剣術の方が好きだったからな」
「それは分かります」
いまのエリザさんを見ているだけで、本が嫌いというのは、察してしまいます。
だって、私が図書館内で本を読んでいる間に、エリザさんは暇そうにして本を積んでいたから。
本をダメにしたら幾ら弁償代が発生するのか、私は心配していたけれど。
帰り道は、気温が下がったという事も人通りが増えた道を戻る。
「なあ、アリーシャ」
「どうかしましたか?」
「朝は閉まっていたが武器屋が開いているみたいなんだが見ていかないか?」
「武器屋ですか」
たしかに剣士のエリザさんにとっては武器屋は気になる存在なのかも知れないですね。
「分かりました。それでは武器屋さんを見て回ったあとは、金物屋に寄りたいのですけど……」
「金物屋に何の用があるんだ?」
「自前の調理器具ですと、職人さんが作られたモノよりも扱いがちょっと……」
「飯は食べられればいいんじゃないのか?」
「どうしてもなら、美味しいモノを食べたいですよね?」
「それはそうだが……」
「あと陶器なども見ていきたいです」
「それはお皿ということか?」
「そうですね。調理器具と食器はセットですので」
「まぁ、アリーシャが、それでいいなら付き合うけど」
「ありがとうございます。それでは、武器屋を見てから向かうと致しましょう」
「そうだな」
エリザさんが指差した武器屋に入る。
建物の中は10人ほどの人間が入っても窮屈さを感じないほど広く、壁には100本近い剣が掛けられていた。
店内には、砂漠の都市なのに金属製の鎧を着こんでいる人が何人かいる。
たぶん冒険者の方だと思う。
「あれ冒険者だよな?」
「そうだと思います」
「ふーん」
「どうかしましたか?」
「――別に……。それより、店を出よう」
「え? もういいのですか?」
「まあね」
まだ武器屋に入ったばかりなのに、興味を失ったのかエリザさんはさっさと出ていってしまう。
私も、そのあとを追うようにして建物から出る。
外では、エリザさんが待っていて、彼女は歩き出してしまう。
「どうかしたのですか?」
いつもと違う様子のエリザさんが気になり私は話しかける。
「そろそろ帰りますか」
「そうだな」
エリザさんは、肩を回しながら答えてきます。
「エリザさんは眠そうですね」
「まぁ、私は体を動かしていた方が性に合っているからな」
「そうですね」
「アリーシャは、本を読むのが好きなのか?」
「はい。本は、色々な知識を身に着けることができますし、物語などの読み物は楽しいですから」
妃教育を受けていた時に、気分転換に王宮図書館で目についたのは恋愛系の読み物で、それは幼少期に両親から離された私とって心の支えでもあったこともあり、読み物は大好き。
「そうなのか。私は、両親によく本を読むようにと言われていたが、剣術の方が好きだったからな」
「それは分かります」
いまのエリザさんを見ているだけで、本が嫌いというのは、察してしまいます。
だって、私が図書館内で本を読んでいる間に、エリザさんは暇そうにして本を積んでいたから。
本をダメにしたら幾ら弁償代が発生するのか、私は心配していたけれど。
帰り道は、気温が下がったという事も人通りが増えた道を戻る。
「なあ、アリーシャ」
「どうかしましたか?」
「朝は閉まっていたが武器屋が開いているみたいなんだが見ていかないか?」
「武器屋ですか」
たしかに剣士のエリザさんにとっては武器屋は気になる存在なのかも知れないですね。
「分かりました。それでは武器屋さんを見て回ったあとは、金物屋に寄りたいのですけど……」
「金物屋に何の用があるんだ?」
「自前の調理器具ですと、職人さんが作られたモノよりも扱いがちょっと……」
「飯は食べられればいいんじゃないのか?」
「どうしてもなら、美味しいモノを食べたいですよね?」
「それはそうだが……」
「あと陶器なども見ていきたいです」
「それはお皿ということか?」
「そうですね。調理器具と食器はセットですので」
「まぁ、アリーシャが、それでいいなら付き合うけど」
「ありがとうございます。それでは、武器屋を見てから向かうと致しましょう」
「そうだな」
エリザさんが指差した武器屋に入る。
建物の中は10人ほどの人間が入っても窮屈さを感じないほど広く、壁には100本近い剣が掛けられていた。
店内には、砂漠の都市なのに金属製の鎧を着こんでいる人が何人かいる。
たぶん冒険者の方だと思う。
「あれ冒険者だよな?」
「そうだと思います」
「ふーん」
「どうかしましたか?」
「――別に……。それより、店を出よう」
「え? もういいのですか?」
「まあね」
まだ武器屋に入ったばかりなのに、興味を失ったのかエリザさんはさっさと出ていってしまう。
私も、そのあとを追うようにして建物から出る。
外では、エリザさんが待っていて、彼女は歩き出してしまう。
「どうかしたのですか?」
いつもと違う様子のエリザさんが気になり私は話しかける。
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