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第33話 迷宮都市グラナド(5)
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「それにしても、迷宮内で穀物が取れるとは思いませんでしたね」
他国の情勢や政治体制などは、妃教育の一貫として習ってはいたけれど、食料自給率に関しては、教えて貰ってはいなかった。
ただ、砂漠の国なのだから輸入に頼っているのであろうと漠然と思ってはいたけれど、自給自足が出来るのなら、話は変わってくる。
「そうだな。私も、迷宮内はモンスターを倒して報酬を得るものとしか習っていなかった」
「エリザさんは、迷宮都市に来る前にある程度、調べたりしてきたのでは?」
「強い魔物が出ることくらいしか興味はなかったからな」
エリザさんらしいと言えば、エリザさんらしい。
細かいことはいいと言ったところなのかも知れない。
「そうですか」
「うむ。とりあえず、これでも食べるか?」
エリザさんが差し出してきたのは、何かしらの肉を串に刺して焼いたもの。
「何時の間に……、購入したんですか?」
「アリーシャが、露店のおっちゃんと話している時だが?」
「なるほど……」
差し出してきた串を一本、手に取り口にする。
皮は香ばしく焼き上げられていてカリカリ。
口に入れてから噛むと、サッパリとした食感からして、おそらくは鶏肉の胸の部分。
「鶏も迷宮で採れるのですね」
「コカトリスだぞ、それ」
「ぶーっ」
私は思わず、その場で噴出してしまった。
「コカトリスって、石化能力のある魔物ですよね?」
「そうだが?」
むしゃむしゃと串肉を頬ぼって食べているエリザさん。
「コカトリスって猛毒があるって、魔物に関しての講義で教えてもらった事があります」
「私も、そう思ったんだが、どうやら迷宮都市では普通に食べられている食材みたいだな」
「そうなの?」
「ほら、あの串焼きやで買ったんだが――」
エリザさんが指差した先に見える屋台。
たしかに串肉が売っている。
そして、様々な香辛料が使われているからなのか様々な色の串肉が区分けされている。
さらに、露店の横には【迷宮都市名物! 串焼き! 日本人直伝レシピ!】と、書かれている。
「日本人直伝?」
「どうした? アリーシャ」
「いえ。日本人って聞いた事がないので――。エリザさんは、日本人って聞いた事がありますか?」
「いや、ないな」
「そうですか……。エルフやドワーフみたいな感じなのでしょうか? それにしても……、食べたら即死するような鳥をレシピだけで食べられるようにするとか……、ちょっと意味不明ですね。そんな危険な物を食べようとするなんて……日本人ってどんな人なのでしょう?」
「聞いてみたら早いんじゃないのか? 日本人直伝レシピって書いてあるってことは、聞けば教えてもらえるんじゃないのか?」
「それもそうですね」
他国の情勢や政治体制などは、妃教育の一貫として習ってはいたけれど、食料自給率に関しては、教えて貰ってはいなかった。
ただ、砂漠の国なのだから輸入に頼っているのであろうと漠然と思ってはいたけれど、自給自足が出来るのなら、話は変わってくる。
「そうだな。私も、迷宮内はモンスターを倒して報酬を得るものとしか習っていなかった」
「エリザさんは、迷宮都市に来る前にある程度、調べたりしてきたのでは?」
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エリザさんらしいと言えば、エリザさんらしい。
細かいことはいいと言ったところなのかも知れない。
「そうですか」
「うむ。とりあえず、これでも食べるか?」
エリザさんが差し出してきたのは、何かしらの肉を串に刺して焼いたもの。
「何時の間に……、購入したんですか?」
「アリーシャが、露店のおっちゃんと話している時だが?」
「なるほど……」
差し出してきた串を一本、手に取り口にする。
皮は香ばしく焼き上げられていてカリカリ。
口に入れてから噛むと、サッパリとした食感からして、おそらくは鶏肉の胸の部分。
「鶏も迷宮で採れるのですね」
「コカトリスだぞ、それ」
「ぶーっ」
私は思わず、その場で噴出してしまった。
「コカトリスって、石化能力のある魔物ですよね?」
「そうだが?」
むしゃむしゃと串肉を頬ぼって食べているエリザさん。
「コカトリスって猛毒があるって、魔物に関しての講義で教えてもらった事があります」
「私も、そう思ったんだが、どうやら迷宮都市では普通に食べられている食材みたいだな」
「そうなの?」
「ほら、あの串焼きやで買ったんだが――」
エリザさんが指差した先に見える屋台。
たしかに串肉が売っている。
そして、様々な香辛料が使われているからなのか様々な色の串肉が区分けされている。
さらに、露店の横には【迷宮都市名物! 串焼き! 日本人直伝レシピ!】と、書かれている。
「日本人直伝?」
「どうした? アリーシャ」
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「いや、ないな」
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「聞いてみたら早いんじゃないのか? 日本人直伝レシピって書いてあるってことは、聞けば教えてもらえるんじゃないのか?」
「それもそうですね」
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