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第9話 まるで夫婦みたいですね。

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 森の中で暮らし始めてから早――、2カ月が経過してログハウスは改築に改築を重ねて、2階建ての豪華仕様へと様変わりしていた。
 私は、捌いた羊を鍋で煮ながら、灰汁を取りつつ、夕飯の料理をしている。

「やっぱり、岩塩だけじゃなくて、他の調味料も欲しいわよね」

 最近は、少し離れた小高い丘に岩塩が取れる洞窟を見つけたので、そこから塩を手に入れている。
 そして生活が安定してきた事もあり、そろそろ砂糖とか欲しいと思うのだけれど……。

 ――カランカラン。

「あっ!」

 小さな鐘の音が鳴る。
 それは、家を囲っている煉瓦作りの壁に唯一存在する門が開けられた合図。
 ログハウスの窓から外を見ると、エリザさんがワイバーンの尾を引っ張っている姿が!

「おかえりなさい」
「ああ、ただいま。今日は、大物を仕留めたぞ!」
「ワイバーンも最近は安定して倒せるようになりましたね」
「ああ、アリーシャが私の為に作ってくれた魔剣シルフィードのおかげだ! あと、小さな結界が常時張られている、この服も大きいな。ワイバーンのブレスや攻撃程度じゃ傷一つ付かないし、体力強化も付与されているから、かなり私自身強くなった気がするぞ」
「それは良かったです」

 さすがに魔の森でずっと狩りを続ける以上、死ぬ可能性もあったので、大魔導士の力で武器を作り、聖女の力で防具を作りエリザさんに渡しておいたけど、思ったよりもエリザさんは強くなりすぎました。

 まぁ、ここの魔の森は危険な地域なので特に問題ないでしょう。

「それより風呂に入ってきたいんだが……」
「はい! もうお風呂の用意は出来ています」

 エリザさんの着ていた衣類を預かり、お風呂に入っている間に水の魔法で綺麗にしてから風と火の複合魔法で乾かす。
 そして、きちんと衣類を畳んで籠に入れたあとは夕食を用意し、二人して食事をする。

「なあ。アリーシャ」
「はい、何でしょうか?」

 二人してリビングで、対面で座りながら食事をしていると、エリザさんが私に話しかけてきます。

「こう言ったら何だが……、私達、夫婦みたいだと思うのは気のせいか?」
「そうでしょうか?」
「ああ、間違いなく私が旦那の立場で、アリーシャが妻の立ち位置だと、今日思ったんだが……」
「――でも、私達、二人とも女ですよ?」
「それは知っている。だから夫婦みたいだと言ったんだ」
「そういうことですか……」

 たしかに、今の立ち位置は一般的で言う所の夫婦に近いかも知れない。
 ただ、それで何か問題があるの? って、問われれば、私的には何の問題もない訳で……。

「ああ、生活も安定してきて気がついたんだが、このままだとアリーシャと一緒に老後まで此処で暮らす感じになりそうな気がするんだ」
「別に、それでもいいのでは?」
「いやいや、よくないだろ! そもそも迷宮都市に行くという話はどうなったんだ?」
「そういう話も昔々ありましたね」
「そんなに昔じゃないからな。とりあえず、そろそろ魔の森を積極的に移動した方がいいと思うんだ」
「まぁまぁ、そんなに急がなくても――」

 私としては、別に生活が安定したし、森の中で自生していた大根やじゃがいもなども見つけたので、朝から塀の中の土地を一部耕して畑も作りだしたので、あまり魔の森から出るつもりは、なかったりする。

「駄目だ。このままだと、アリーシャに迷惑を掛けたまま、一生! 魔の森の中で暮らす未来しか見えない!」

 別に私としては、それでもいいのですけど? と、心の中で思いつつも口には出さない。そして鹿のスープを飲みながら、そろそろ迷宮都市に行くプランを立てないと、エリザさんがいくら流れやすいと言っても駄目かな? と考えた。


 

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