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第112話 エピローグ
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邸宅に戻ってきてから一週間が経過し――、予定よりも長い期間、王都に滞在したあと、私はカーネルさんやフェンリルさんと共に、フェルベール地方へ戻ることとなった。
「それでは、留守の間、王都の邸宅の方は任せたわね」
「分かりました。エリーゼ様も、お体には気を付けてください」
「ええ。また来るわ」
書類の整理や、精霊の加護などを王都に来て国中に広く浅く祝福という形で与えないと不作になってしまうので、来ないという選択はない。
「ではいくぞ。主」
「はい。フェルシアさん」
私は、フェルシアさんの背中にカーネルさんと一緒に乗り、そのまま王都を後にした。
王都を出たあとは、私はフェルシアさんもモフモフな毛並みに身体を預けながら目を閉じる。
そして――、意識を手放した。
気が付いたのは、数時間後。
メレンドルフ公爵家が所有するフェルベール地方に到着してから。
「よっと」
私は、屋敷前に到着したあと。フェルシアさんから降りる。
すると、少ししてから館の扉が開いた。
「エリーゼ様! おかえりなさいませ!」
「ただいま、ウルリカ。イオス村の皆さんは元気?」
「はい。本日は、ロマネスクとアルさんが商談をしています。王都に送る野菜の値段について色々とあるようです」
「そうなのね」
商談に関しては、私よりも中央の役人として働いていたアルさんに任せておいた方が確実だと思う。
「エリーゼ。全ての仕事をアルに任せようと考えてはいないよな?」
「そんな事ないですよ?」
カーネルさんが、後ろから問いかけてきた。
まるで、私が長い期間、仕事をさせられた休みをとってダラダラと暮らそうとしていたことを見抜いているかのように!
「それならいいんだがな……」
「あはは……。とりあえず貧困街から来られる方の住まいと仕事の手配が必須ですね」
「そうだな」
「話には聞いていましたが、受け入れの人数は300人ほどでしたか?」
「ううん」
ウルリカの質問に、私は首を振る。
「教会側と、各地の領主の領地からも、食い詰めた方を受け入れて欲しいと要請があったの」
「――と、なりますと……どのくらいの……」
「えっと2000人くらい?」
「小規模の町並ですか!?」
クラリと、倒れ込むウルリカ。
「だ、大丈夫?」
「は、はい。それよりも現在の住民の数の7倍近い人数を受け入れると言う事は、食料は問題無いと思いますが、仕事の振り分けと住民が暮らす家々の確保が必要になってきます」
「そうね」
「早めに連絡しておいてくだされば、こちらの方としても下準備くらいは……」
「ウルリカ。それがな……」
「何でしょうか? カーネル殿」
「貴族達からの頼み事は、一昨日、嘆願があったばかりだ」
「つまり……」
「ああ、報告が間に合わなかった。とりあえず、すぐには到着しないはずだから、急いで住まいを建てる必要があるな」
「そのへんはカーネルさんとアルさんに任せるという感じで大丈夫でしょうか?」
「ここの領主はエリーゼだろう? お前が区分け整理しないと始まらない」
「そうですよね……」
私は、心の中で溜息をつく。
どうやら、私の辺境の地でのスローライフは中々始まりそうにないですね。
「それでは、留守の間、王都の邸宅の方は任せたわね」
「分かりました。エリーゼ様も、お体には気を付けてください」
「ええ。また来るわ」
書類の整理や、精霊の加護などを王都に来て国中に広く浅く祝福という形で与えないと不作になってしまうので、来ないという選択はない。
「ではいくぞ。主」
「はい。フェルシアさん」
私は、フェルシアさんの背中にカーネルさんと一緒に乗り、そのまま王都を後にした。
王都を出たあとは、私はフェルシアさんもモフモフな毛並みに身体を預けながら目を閉じる。
そして――、意識を手放した。
気が付いたのは、数時間後。
メレンドルフ公爵家が所有するフェルベール地方に到着してから。
「よっと」
私は、屋敷前に到着したあと。フェルシアさんから降りる。
すると、少ししてから館の扉が開いた。
「エリーゼ様! おかえりなさいませ!」
「ただいま、ウルリカ。イオス村の皆さんは元気?」
「はい。本日は、ロマネスクとアルさんが商談をしています。王都に送る野菜の値段について色々とあるようです」
「そうなのね」
商談に関しては、私よりも中央の役人として働いていたアルさんに任せておいた方が確実だと思う。
「エリーゼ。全ての仕事をアルに任せようと考えてはいないよな?」
「そんな事ないですよ?」
カーネルさんが、後ろから問いかけてきた。
まるで、私が長い期間、仕事をさせられた休みをとってダラダラと暮らそうとしていたことを見抜いているかのように!
「それならいいんだがな……」
「あはは……。とりあえず貧困街から来られる方の住まいと仕事の手配が必須ですね」
「そうだな」
「話には聞いていましたが、受け入れの人数は300人ほどでしたか?」
「ううん」
ウルリカの質問に、私は首を振る。
「教会側と、各地の領主の領地からも、食い詰めた方を受け入れて欲しいと要請があったの」
「――と、なりますと……どのくらいの……」
「えっと2000人くらい?」
「小規模の町並ですか!?」
クラリと、倒れ込むウルリカ。
「だ、大丈夫?」
「は、はい。それよりも現在の住民の数の7倍近い人数を受け入れると言う事は、食料は問題無いと思いますが、仕事の振り分けと住民が暮らす家々の確保が必要になってきます」
「そうね」
「早めに連絡しておいてくだされば、こちらの方としても下準備くらいは……」
「ウルリカ。それがな……」
「何でしょうか? カーネル殿」
「貴族達からの頼み事は、一昨日、嘆願があったばかりだ」
「つまり……」
「ああ、報告が間に合わなかった。とりあえず、すぐには到着しないはずだから、急いで住まいを建てる必要があるな」
「そのへんはカーネルさんとアルさんに任せるという感じで大丈夫でしょうか?」
「ここの領主はエリーゼだろう? お前が区分け整理しないと始まらない」
「そうですよね……」
私は、心の中で溜息をつく。
どうやら、私の辺境の地でのスローライフは中々始まりそうにないですね。
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