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第100話 後宮の噂話(1)
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「それは仕方ないですね」
「大丈夫なのか?」
心配そうな表情のカーネルさん。
ただ、私としては王城では5歳の頃から暮らしてきたこともあるので、勝手知った場所とも言えますので、特に問題ないは無いと思う。
逆に貴族の令嬢としての立ち振る舞いに厳しいアディーさんが居た方が大変なので、私としては別にいいかなと。
「はい。私のことは心配なさらないでください。それと、私が戻るまでは、館での待機をお願いします」
「それは構わないが……」
「あとチロちゃんの世話もお願いします」
「分かった」
「分かりました」
「それでは、ベル」
「はい」
「後宮に案内してもらえるかしら? すでに部屋の用意も済ませているのよね?」
「もちろんです」
カーネルさん達と別れ案内された後宮は、壁も窓も綺麗に掃除が行き届いていて、長い間、使われていなかったというのが嘘のよう。
「ベル。後宮は、封鎖されていると聞いていましたが、利用されていたのですか?」
私は、前の方で歩く女騎士ベルへ問いかける。
それは、単純な好奇心であったからですけど。
「一応、何かあった時の為ということで後宮の清掃は、行っていたようです」
「そうなのね」
その何かあった時のためというのが、私が起こした問題というのは、王宮側からしても皮肉だったのかも知れない。
「エリーゼ様、こちらがお部屋になります」
そう私に説明しながら、ベルさんが扉をノックすると、少しだけ扉が開くと、室内の人物とベルさんが小さな声で会話を始めていて――。
「私だ。準備は終わっているか?」
「いま終わったところです。もうエリーゼ様は、起こしになられて?」
「ああ。後ろで待っておられる」
小声で話していても、そんなに距離は離れていないので、会話の内容は筒抜け。
でも、私は聞いてないフリをする。
そして――、扉が開き二人のメイドが出てくる。
「エリーゼ様、お待ちしておいました」
「お久しぶりね。テレーゼ」
「お久しぶりでございます。エリーゼ様」
「それで、そちらの子は?」
私はテレーゼの後ろで、おどおどしながら此方を見てきている少女へと視線を向ける。
一応、後宮で働く子なのだから、身分は確かなはず。
そのわりには、怯えた様子に見えるのだけど。
「こちらは、本日付けでエリーゼ様の傍使いになります。」
「イーナ・フォン・ラムセスと言います。エリーゼ様、宜しくお願い致します」
「ええ。よろしくね。それよりもラムセスって、子爵家の?」
「はい! お父様が、王宮で作法を見習ってきなさいと」
「そうなのね」
子爵家の令嬢が、王宮に女中として来る事は珍しい。
何か事情があるのかも知れないわね。
「大丈夫なのか?」
心配そうな表情のカーネルさん。
ただ、私としては王城では5歳の頃から暮らしてきたこともあるので、勝手知った場所とも言えますので、特に問題ないは無いと思う。
逆に貴族の令嬢としての立ち振る舞いに厳しいアディーさんが居た方が大変なので、私としては別にいいかなと。
「はい。私のことは心配なさらないでください。それと、私が戻るまでは、館での待機をお願いします」
「それは構わないが……」
「あとチロちゃんの世話もお願いします」
「分かった」
「分かりました」
「それでは、ベル」
「はい」
「後宮に案内してもらえるかしら? すでに部屋の用意も済ませているのよね?」
「もちろんです」
カーネルさん達と別れ案内された後宮は、壁も窓も綺麗に掃除が行き届いていて、長い間、使われていなかったというのが嘘のよう。
「ベル。後宮は、封鎖されていると聞いていましたが、利用されていたのですか?」
私は、前の方で歩く女騎士ベルへ問いかける。
それは、単純な好奇心であったからですけど。
「一応、何かあった時の為ということで後宮の清掃は、行っていたようです」
「そうなのね」
その何かあった時のためというのが、私が起こした問題というのは、王宮側からしても皮肉だったのかも知れない。
「エリーゼ様、こちらがお部屋になります」
そう私に説明しながら、ベルさんが扉をノックすると、少しだけ扉が開くと、室内の人物とベルさんが小さな声で会話を始めていて――。
「私だ。準備は終わっているか?」
「いま終わったところです。もうエリーゼ様は、起こしになられて?」
「ああ。後ろで待っておられる」
小声で話していても、そんなに距離は離れていないので、会話の内容は筒抜け。
でも、私は聞いてないフリをする。
そして――、扉が開き二人のメイドが出てくる。
「エリーゼ様、お待ちしておいました」
「お久しぶりね。テレーゼ」
「お久しぶりでございます。エリーゼ様」
「それで、そちらの子は?」
私はテレーゼの後ろで、おどおどしながら此方を見てきている少女へと視線を向ける。
一応、後宮で働く子なのだから、身分は確かなはず。
そのわりには、怯えた様子に見えるのだけど。
「こちらは、本日付けでエリーゼ様の傍使いになります。」
「イーナ・フォン・ラムセスと言います。エリーゼ様、宜しくお願い致します」
「ええ。よろしくね。それよりもラムセスって、子爵家の?」
「はい! お父様が、王宮で作法を見習ってきなさいと」
「そうなのね」
子爵家の令嬢が、王宮に女中として来る事は珍しい。
何か事情があるのかも知れないわね。
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