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第78話 王都事件(3)
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――翌日になり、久しぶりのというか貴族の令嬢としての仕事というか身だしなみというか嗜みチェックをアディ―さんにされる。
それは、もちろんティータイムの時間であっても。
「エリーゼ様」
「何かしら?」
お昼の時間を過ぎ、ティータイムの時間帯。
私は、邸宅の中庭でアディ―さんの勧めでお茶をする事になり、久しぶりの貴族としての立ち振る舞いと言うこともあり、上手くできるか心配ごとではあったけれど幼少期から王家で妃見習いとして英才教育を施されたおかげからなのか、体が覚えていたようで小言を言われることもなく問題なく立ち振る舞いが出来ていた。
「いえ。ウルリカから、エリーゼ様が貴族らしからぬ立ち振る舞いが非常に多いと報告を受けておりましたので、心配しておりましたが……、杞憂のようでしたのご安心いたしました」
「そうなの?」
「はい」
今度、フェルベール地方の屋敷に戻ったらウルリカにそれとなく釘を刺したいところだけど、そんな事をしたら間違いなくアディ―さんに話が筒抜けしてしまうので、私は溜息をつきながら諦めることにする。
それにしても、飛び地のメレンドルフ公爵家が所有している辺境の地フェルベール地方からメレンドルフ公爵家までは、徒歩だと一ヵ月近い時間を要するというのに、そんなに頻繁に情報の行き来がしているとなる事の方が私としては驚き。
一人考え事をしていると、ジッと私を見てきているアディ―さんの目。
その様子から、何か私に聞きたいことがありそうなのは、分かったけれど……、聞いていいかどうか迷ったところで結局聞くことにする。
だって、あとで詮索されても困るし。
「アディ―」
「はい」
「私に何か、尋ねたいことがあるのではなくて?」
「……申し訳ありません。かように心遣いをして頂きまして――」
「いいのよ。それよりも何かあったのかしら?」
「実は、カーネルの事に関してですが……」
言い難そうに言葉を紡ぐアディ―さん。
昨日のいざこざを目の前で見せていたことを、使用人の立場として悔いているのか、それともカーネルさんとの関係性について思ったことなのか分からないけど、たぶん後者な気がする。
そして――、詳しいことを知らない私が口を出すのは違っていると思う。
ただ問題は……。
ここでアディ―さんの弱みを握っておけば、ある程度は配慮というか忖度してくれるかも? と、いう打算だったりするわけで……。
でも、下手に刺激してアディ―さんから貴族の淑女の礼儀作法の勉強と言うことで、室内に缶詰めにされる刑を執行されると面倒だし……。
「カーネルと、アディ―に関しての話は聞いていないわ。彼も、そういう事を大っぴらに公言するような方ではないでしょう?」
「……そうですね」
カーネルさんの事を嫌ってはいるみたいだけど、変な信頼はあるみたい。
「それでは、エリーゼ様」
「何かしら?」
「フェンリル――、いえ。フェルシアという名前の魔物のことですが……」
「何か問題でも?」
「あれは、エリーゼ様が手懐けたというのは本当でしょうか?」
「そうね。お父様やお母様も手懐けているのを見たことがあるわよね?」
「……え? ――そ、それって……、あの白い仔犬の事でしょうか?」
それは、もちろんティータイムの時間であっても。
「エリーゼ様」
「何かしら?」
お昼の時間を過ぎ、ティータイムの時間帯。
私は、邸宅の中庭でアディ―さんの勧めでお茶をする事になり、久しぶりの貴族としての立ち振る舞いと言うこともあり、上手くできるか心配ごとではあったけれど幼少期から王家で妃見習いとして英才教育を施されたおかげからなのか、体が覚えていたようで小言を言われることもなく問題なく立ち振る舞いが出来ていた。
「いえ。ウルリカから、エリーゼ様が貴族らしからぬ立ち振る舞いが非常に多いと報告を受けておりましたので、心配しておりましたが……、杞憂のようでしたのご安心いたしました」
「そうなの?」
「はい」
今度、フェルベール地方の屋敷に戻ったらウルリカにそれとなく釘を刺したいところだけど、そんな事をしたら間違いなくアディ―さんに話が筒抜けしてしまうので、私は溜息をつきながら諦めることにする。
それにしても、飛び地のメレンドルフ公爵家が所有している辺境の地フェルベール地方からメレンドルフ公爵家までは、徒歩だと一ヵ月近い時間を要するというのに、そんなに頻繁に情報の行き来がしているとなる事の方が私としては驚き。
一人考え事をしていると、ジッと私を見てきているアディ―さんの目。
その様子から、何か私に聞きたいことがありそうなのは、分かったけれど……、聞いていいかどうか迷ったところで結局聞くことにする。
だって、あとで詮索されても困るし。
「アディ―」
「はい」
「私に何か、尋ねたいことがあるのではなくて?」
「……申し訳ありません。かように心遣いをして頂きまして――」
「いいのよ。それよりも何かあったのかしら?」
「実は、カーネルの事に関してですが……」
言い難そうに言葉を紡ぐアディ―さん。
昨日のいざこざを目の前で見せていたことを、使用人の立場として悔いているのか、それともカーネルさんとの関係性について思ったことなのか分からないけど、たぶん後者な気がする。
そして――、詳しいことを知らない私が口を出すのは違っていると思う。
ただ問題は……。
ここでアディ―さんの弱みを握っておけば、ある程度は配慮というか忖度してくれるかも? と、いう打算だったりするわけで……。
でも、下手に刺激してアディ―さんから貴族の淑女の礼儀作法の勉強と言うことで、室内に缶詰めにされる刑を執行されると面倒だし……。
「カーネルと、アディ―に関しての話は聞いていないわ。彼も、そういう事を大っぴらに公言するような方ではないでしょう?」
「……そうですね」
カーネルさんの事を嫌ってはいるみたいだけど、変な信頼はあるみたい。
「それでは、エリーゼ様」
「何かしら?」
「フェンリル――、いえ。フェルシアという名前の魔物のことですが……」
「何か問題でも?」
「あれは、エリーゼ様が手懐けたというのは本当でしょうか?」
「そうね。お父様やお母様も手懐けているのを見たことがあるわよね?」
「……え? ――そ、それって……、あの白い仔犬の事でしょうか?」
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