王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫

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第68話 法王様との対談(5)

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 思わず、その言葉に足を止めかけたところで――、私は前と踏み出す。
 聖女という言葉。
 それが、どれだけ重い意味を持つのか、実際に立場になった時にしか理解はできないと思う。
 大勢の方から期待を寄せられて、それは怖いくらいの信仰心で、だけど……。

「エリーゼ」

 その言葉に――、カーネルさんの呼びかけに私は思わず振り返る。

「何か気に障ったことを言ったようなら済まなかったな」
「いえ」

 私は頭を左右に振り、何ともないと呟く。
 
「そうなのか?」
「はい」

 私は気持ちを察せられないように笑みを浮かべ言葉を返すと、どこか浮かない様子でカーネルさんは小さく溜息をつく。

「なんだか、余計なことを言ってしまったな。ほら、法王も待っているようだからな」

 足を止めて話していたのは1分にも満たない時間。
 それでも、先を歩いていたウルリカと法王様とは距離が離れてしまっていて、二人とも此方を見てきていた。
 
「そうですね」

 カーネルさんと共に、応接間へ到着。
 部屋に入り、応接間のソファーへと腰を下ろす。
 
「それでは、何かお飲み物を御持ち致します」

 ウルリカは、それだけ言うとカーネルさんと共に部屋から出ていってしまう。
 すると必然的に法王様と私の二人だけになり。

「あの、おじいさま」
「ん? どうかしたのか?」
「この度、辺境の地までご足労されたのは何か教会の方で問題でも起きたのでしょうか?」
「精霊教会の方では何も問題は起きてはおらぬの」
「そうですか」

 それでは、何のために辺境の地であるフェルベール地方まで来たの? と、心の中で思ってしまう。

「まぁ、端的に言うのなら婚約破棄をされて、このような地で伏せっていると聞き及んだからと言えば、一番分かりやすいであろうか」
「えっと……、それって、つまり……。私が婚約破棄されたことに関して、ご心配頂けたという事でしょうか?」
「うむ。エリーゼ、お前は儂の孫みたいなものだからな」

 幼少期から、両親から離されて王宮で暮らしていた私にとって、私を知らない教会というのは、唯一休める場所だった。
 そして、教会までは、本当に小さな子供だけが通れる抜け道で繋がっていた。

 王妃教育の合間に教会で静かな時間を過ごしていた時に、私が出会ったのが目の前の法王様だった。
 まだ6歳にも満たない私に教会関係者のトップの方とか、そういう理屈は理解できずに居て、しばらくは教会に用事もなく足重に通う方だと思っていたのは内緒。
 だから、私は幼少期から法王様の名前が理解出来るまでは、お爺様と呼んでいた。

「ありがとうございます」
「感謝を告げる必要もない。儂は、エリーゼが心配で気になって来ただけだからの」




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