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第56話 王都へ行きましょう(1)

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「それって初耳だけど……」
「主が聞かずに、すぐに寝たからだと言っておったぞ」
「そうなのね……。――でも、どうして私が居ないと農作物の実りが悪くなるの?」
「その事については、おそらく精霊の愛し子だからという理由であろうな」
「そうなの……。それって、重大な問題よね」
「うむ」

 つまり、私が辺境の地にいると特に北側の領地の収穫量が大変になるという事。
 何かしら問題が起きていることは、辺境から近いイスタンブールへ野菜を売りに行った時に気がついていたけど……、まさか国全体で発生しているとは思いもしなかった。

「――で、どうするのだ。主」
「そうね……。それって、ずっと王都に居ないといけないの?」
「いや、一ヵ月に一日いれば問題ないらしいな」
「そうなのね。それなら一ヵ月に一日だけ王都に滞在するとしましょう。幸い、王都には公爵家の別邸がありますから」
「ふむ」
「では、その時に、フェルシアさん、お願いしますね」
「主の頼みだ、仕方ない」

 王都までの移動でしたら一日までとは言いませんけど、それなりの時間、モフモフに触ってられますので、特に問題ないですね。
 むしろ、ご褒美とも言えるわね・

「それでは、フェルシアさん! いまから王都に行きましょう!」
「それは、主の従者に言わなくていいのか?」
「うっ!?」

 ウルリカに話したら、もれなく王都までウルリカが付いてきてしまって、私がゆっくりとお昼寝する時間が無くなってしまう。

「フェルシアさん、善は急げっていいますよね?」
「そんな話は聞いたことがない。それより主が居なくなった時に迷惑がかかるであろう? なら事前に通達しておいた方が良いと思うぞ?」

 そのフェルシアさんの言葉に、私はお風呂場での出来事を思い出す。
 たしかに何も言わずに王都に向かったらウルリカやカーネルさんに迷惑をかけてしまう。
 それは理解できる。
 理解はできるけど…………。

「主」
「分かったわ。言ってくるわね」

 仕方なく、私は下着と洋服を着てから、執務室へ戻る。
 扉を開けると、そこには笑顔を顔に貼り付けたウルリカが!

「ご、ごきげんよう」
「それは挨拶でございます。エリーゼ様」
「そ、そうね……」
「それでは、エリーゼ様。領内の仕事を放置して何処に行っていたのでしょうか?」
「もしかして……ウルリカ」
「何でしょうか?」
「かなりお怒り気味なのかしら?」
「――いえ。怒っておりませんが、しばらくお昼寝の時間は無しにしようと思っております」
「そんな!?」

 お昼寝は、私の大事なライフラインなのに!


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