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第38話 野菜が売れまくりです。

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「すごいです。野菜が飛ぶように売れていきます」

 市場で空いている場所を見つけて販売を開始したところ、野菜があっと言う間に売れていきます。
 
「エリーゼ」
「はい。どうかしましたか?」
「今、市場を見てきたが野菜などが高騰していたぞ」
「そうなのですか?」
「ああ、うちは半額以下の価格で販売している」
「――え? 以前に、フェルベール地方へ向かっている途中で野菜を買った事がありますけど、どこも、今、私達が販売している価格だったような……」
「どうやら不作らしい」
「そうなのですか……。それでは――」
「価格を上げるか?」
「いえ! たくさん持ってきます!」
「だが、ここで購入して倍の価格で売っている奴もいるんだぞ?」
「転売という奴ですか?」
「ああ、だから――」
「つまり、それだけ需要があるという事ですね?」
「まぁ、そうなるな」
「それならいい案があります!」
「良い案?」
「はい!」
「アネットさん」
「何でしょうか? エリーゼ様」
「ここでの販売をお願いできますか? 私は、カーネルさんと商業ギルドへ行ってきます」
「商業ギルドですか? 先ほど、場所を借りるのに場所代を払ったばかりですが……」
「いえ、そうではないのです。困っている方がいたら、助けてあげないと! 美味しいご飯が食べられなくなります!」
「そういうことですか……。それなら、あと少しで売り切れると思いますので、私も一緒に行きます」
「分かりました」

 アネットさんの言葉通り、すぐに持ってきた野菜は完売。
 惜しまれながらも出店を片付けて、その足で商業ギルドへと向かいます。
 商業ギルドは、煉瓦作りの建物で白いペンキで外装が塗られていることもあり、茶色い煉瓦作りの建物が多いイスタンブールの町の中では比較的に目立っている。

「すいません」
「はい。先ほど、市場での場所代をお支払いされた方ですね。何か問題でもありましたか?」

 カウンターの女性が、私達のことを覚えてくれていたみたいで話は早く進みそう。

「じつは、商業ギルドの一番偉い人と会いたいのですが……」
「アポイントなどはとっておられますか?」
「――いえ、とってはおりません」
「それでは……、今からアポイントを取りますと……二週間後となりますが……」
「2週間……」

 それだと野菜の収穫時期も考えると……。

「エリーゼ、ロマネスクに会いたいのか?」
「もしかして、カーネルさんは、ここの責任者の方と知り合いなのですか?」
「ああ、昔の冒険者仲間だ」
「そうなのですか! それでは、私と同じ冒険者なのですね!」
「そうだな」

 なるほど、そう言うことなのですね。
 つまり、冒険者としては私の先輩ということ。
 そんな話をしていると、私とカーネルさんの話を聞いていた受付の女性は、恐る恐るカーネルさんの方を見ると口を開き――、

「あの、あなたは……」
「俺か? カーネルという。ロマネスクは、俺の友人だ。すぐに話を通してくれ」
「――は、はい。すぐに確認して参ります」

 受付の女性は慌てた様子で建物の奥へと向かっていく。
 そして、しばらくすると恰幅のいい身なりの整ったダンディなおじさまが歩いてきた。

「おう、久しぶりだな。カーネル」
「貴様こそ、無事で何よりだ。ところで商業ギルドに何の用だ? ここは冒険者ギルドじゃないぞ?」
「じつはな、こっちのエリーゼが、お前に話があるらしくてな」
「エリーゼ? どこかで聞いたような……」

 そう呟きながら、ロマネスクさんの視線は私の方へ。
 すると大きく目を見開く。

「こ、こここ、これは――、カーネル!」
「落ち着け。とりあえず、静かな場所を用意してくれ」
「当然だ」

 すぐに、私達は商業ギルドの中でも一番奥の豪奢な部屋へ通される。

「お久しぶりでございます。エリーゼ様。それより、このようなむさ苦しいところへ何故に――」
「じつは、お願いがあって……」

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