王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

第30話 豊作です。

　お父様と、お母様が王都に戻ってから、はやくも一ヵ月が経過し――、私は……。

「えいっ！」

　畑の土に向けて、鍬を振り下ろす。
　ザクッ！　と、言う音と共に、畑の土が掘り起こされる。
　そして――、手の皮膚が農具と擦れて痛むけど、回復魔法で治し、再度、鍬を振り下ろす。
　
　回復魔法で治療。
　鍬を畑に向けて振り下ろす。
　回復魔法で治療。
　鍬を畑に向けて振り下ろす。
　回復魔法で治療。
　鍬を畑に向けて振り下ろす。
　回復魔法で治療。
　鍬を畑に向けて振り下ろす。

「はいっ！　はいっ！　はいっ！」

　せっせと、畑を耕していく。
　さすがに、一ヵ月も畑を耕しているとタイミングも慣れてきて、テンポよく畑を耕すことが出来るようになる。

「エリーゼ様……」
「どうしたの？　ウルリカ」
「もう、そろそろお休みなられては？」
「――え？」

　振り返ると、広大な草原が、耕し終わっており――、村の方々が種まきをしてくれて手伝ってくれていた。

「皆様！　休憩にしましょう！」

　手を洗ってから、休憩に入り、ウルリカが用意してくれたお茶を嗜む。

「それにしても、エリーゼ様はすごいですな」

　そこで相席をしていた村長のアルさんが話しかけてきた。

「そうですか？」
「そうですな。一人で村の住民が総出で土地を耕す速度よりも早いですからの」
「皆様が、私に色々とご指導をして下さるからだと思います」
「ほっほっほっ。エリーゼ様は、奥ゆかしいですな」

　さすがに、本当のことは言えない。
　何かあった時に国外に脱出して自活する時に備えて農民の仕事を教えて貰っているなんて……。

「あの、種まきの時期についてですけど――」

　私は、採取方法と種まきについて村長のアルさんを質問攻めした。
　――そして、半年が経過し……、村の畑の広さは、従来の10倍まで広がっていた。

「エリーゼ様、大変な事になりました」
「大変なこと？」

　私は、フェルシアさんに身体を預けながら、アルさんの話に耳を傾ける。

「はい。思ったよりと言うか――、畑の大きさが広がった事もありますが、エリーゼ様が、この村に来られてから豊作が続いておりまして――」
「それは良かったです」
「豊作事態は良い事なのですが、消費しきれませんので――」
「あ……」

　自重せずに畑を広げ続けたから……。

「それにしても、私が来てから豊作続きというのは――」
「主」
「どうしたの？　フェルシアさん」
「植物の育成には精霊の力が大きく左右する。全ての精霊から愛されている主が居る土地は、精霊の祝福を大きく受けることになる。つまり、豊作になるのは当然の帰結だ」
「そうなの！？」

　つまり、豊作が続いているのは私が居るからという事になる。
　それって……。

「あの！　アルさん」
「なんですかな？」
「余った野菜は売りに出しましょう！」
「――ですが、ここは辺境の地。近くに町や村があっても、自給は……」
「大丈夫です！　私には考えがありますので！」

　フェルシアさんの移動速度は、とても速い。
　つまり、フェルシアさんに荷馬車を引いてもらって移動すれば、短時間で遠い町まで移動して販売してお金を稼ぐことができます！