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第22話 王妃様の逆鱗に触れたようです。
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「母上……」
「王妃様」
私と、レオン様の声が被る。
そして――、「どうしてアデリナが……」と、レオン様は呟いているけれど……。
「話は全て聞かせてもらったわ」
「話?」
私は首を傾げる。
そして考える。
何もおかしな発言はしてないわよね。
うん! どんなに考えてもレオン様を元気付ける話しかしてない。
「レオン。貴方には何度も言い聞かせたわよね? 王族としての責務を――。それと、貴族としての序列と国を運営していく上での注意点に関して、何度も何度も言いましたよね?」
「――で、ですが! 母上! アデリナは!」
「貴方が何を言おうと、それは取るに足らないということを理解しなさい。男爵家の娘との婚約解消? 馬鹿なのですか? 最初から、貴方に婚約を決める権限も破棄することも解消する権利もありません。王家の婚姻には、国王陛下の決定が必要不可欠なのです。その事は、小さい頃から教えたはずです」
有無を言わさない正論。
レオン様は、顔面蒼白で「母上……」としか呟いていない。
「それに何よりレオン! 貴方に失望したのは、このような自分の事しか考えていない男爵風情の娘に言いように利用されたことです。メレンドルフ公爵家の娘との婚約を一方的に社交の場で破棄すること! それが、どれだけ貴族家の名誉を傷つけるのか! 理解しているのですか? しかも国王陛下の許可も得ずに……」
王妃様、かなりの御立腹な様子。
家族同士のゴタゴタなら、王城に帰ってからにしてほしいです。
「あの王妃様……、もう、そのへんで……」
「エリーゼちゃん」
「は、はい――」
何だか、憐れむような目で私を見てきたのだけど。
「優しいのは良い事だけれど、将来の夫――、伴侶であり未来の国王になる者には、ハッキリと間違っていることは間違っていると言わないと駄目なのよ?」
「――え?」
今、なんと……?
「あの、私はレオン様のことは……」
「最後まで言わなくても分かっているわ。さっき、そこの男爵家の娘がレオンの事を愛していないと告げた時に、エリーゼちゃんは必死に怒ってくれたわよね?」
――え? そう見えたの? と、いうよりも、王妃様、何時から、館にいたの?
「もしかして王妃様。最初から最後まで……」
「ええ、見ていたわ。そこのメイドに頼んだの。貴方の真意を確かめるために」
「ど、どうして……」
「だって、貴女。王城に居る時よりも、元気そうにしていたから。だから、息子の事を何とも思っていないと思ってしまったのだけれど、レオンを思って怒ってくれて、先ほどは励ましてもくれたでしょう? 貴族にとっては、自身の失態を晒すことは弱みを曝け出す事であるにも関わらずね」
それは、レオン様が国をきちんと治めてくれないと、私のもふもふ生活が駄目になってしまうからであって……。
「あの、王妃様は勘違いしていると思います」
「どういうことかしたら?」
だけど、真正面からレオン様はいらないです! と、言ったら角が立ってしまうので……。
「私は、レオン様には相応しくないです。もちろん、王妃としてもです。レオン様を諫める事もできませんでしたし、心を繋ぎ止めておくことすらできませんでした。そのような者が、どうしてレオン様の伴侶に相応しいでしょうか――」
少し涙声で話す。
これで……、なんとかなるはず。
「レオン、聞きましたか! エリーゼちゃんは、レオン――、貴方を愛しているけれど、貴方の幸せを願っていたから身を引いたのですよ! そして、そのことすら自らの失態だと言っているのです。これが、どういう事か分かりますか?」
どういうこと?
私の頭の中は完全に、事態についていけてません。
「それは……、まだ自分を愛しているという事ですか」
全然、愛してないから。
どこをどうとったら、そういう発想にいきつくのか私は将来の王国が心配になってきました。
「レオン、そうじゃないわ。エリーゼちゃんは、こう言っているのよ! 私は、レオンに相応しくないから、見ているだけでいいって! 何て健気な子……」
王妃様が扇子を広げて口元を隠しつつ、私を見てくる。
そしてレオン様とは言うと、足元から崩れ膝をつき両手を地面につけて「何と言うことだ……。真実の愛は、ここにあったんだ……」とか言っています。
……もう帰っていいですか?
それよりも、話題を変えた方が良いかも知れない。
コレ以上は流石に変な方向へ話が進みそうな気がしたから。
「王妃様、アデリナさんに縄をかけていますけど――、どうなされるのですか?」
「どうして、そんな事を聞くの? エリーゼちゃん」
「エリーゼでいいです。どうしてですか?」
「決まっているわ。男爵風情のせいで公爵家と王家に泥を塗ったのよ? しかも、王妃としての教育をレオンの懇願で受けさせていたのに、逃げ出したばかりか、私が病気という事にして、穏便に婚約解消をしようとしたにもかかわらず、貴女の所に来たばかりがレオンに近づいた目的は不純。これだけの問題を起こしておいて、何もしないというのはあり得ない話でしょう?」
スウッと、眼が細くなり王妃様はアデリナさんの方を見ると、王妃様に見つめられたアデリナさんは「ヒッ!」と声を上げてしまっていた。
私からは、王妃様の表情は見えなかったけど、逆鱗に触れたみたい。
「それでは……」
「そうね。陛下のお考え次第だけど、良くて貴族籍剥奪、下手をすれば一族全員が死罪も考えられるわね」
「そんな! 母上!」
「王妃様」
私と、レオン様の声が被る。
そして――、「どうしてアデリナが……」と、レオン様は呟いているけれど……。
「話は全て聞かせてもらったわ」
「話?」
私は首を傾げる。
そして考える。
何もおかしな発言はしてないわよね。
うん! どんなに考えてもレオン様を元気付ける話しかしてない。
「レオン。貴方には何度も言い聞かせたわよね? 王族としての責務を――。それと、貴族としての序列と国を運営していく上での注意点に関して、何度も何度も言いましたよね?」
「――で、ですが! 母上! アデリナは!」
「貴方が何を言おうと、それは取るに足らないということを理解しなさい。男爵家の娘との婚約解消? 馬鹿なのですか? 最初から、貴方に婚約を決める権限も破棄することも解消する権利もありません。王家の婚姻には、国王陛下の決定が必要不可欠なのです。その事は、小さい頃から教えたはずです」
有無を言わさない正論。
レオン様は、顔面蒼白で「母上……」としか呟いていない。
「それに何よりレオン! 貴方に失望したのは、このような自分の事しか考えていない男爵風情の娘に言いように利用されたことです。メレンドルフ公爵家の娘との婚約を一方的に社交の場で破棄すること! それが、どれだけ貴族家の名誉を傷つけるのか! 理解しているのですか? しかも国王陛下の許可も得ずに……」
王妃様、かなりの御立腹な様子。
家族同士のゴタゴタなら、王城に帰ってからにしてほしいです。
「あの王妃様……、もう、そのへんで……」
「エリーゼちゃん」
「は、はい――」
何だか、憐れむような目で私を見てきたのだけど。
「優しいのは良い事だけれど、将来の夫――、伴侶であり未来の国王になる者には、ハッキリと間違っていることは間違っていると言わないと駄目なのよ?」
「――え?」
今、なんと……?
「あの、私はレオン様のことは……」
「最後まで言わなくても分かっているわ。さっき、そこの男爵家の娘がレオンの事を愛していないと告げた時に、エリーゼちゃんは必死に怒ってくれたわよね?」
――え? そう見えたの? と、いうよりも、王妃様、何時から、館にいたの?
「もしかして王妃様。最初から最後まで……」
「ええ、見ていたわ。そこのメイドに頼んだの。貴方の真意を確かめるために」
「ど、どうして……」
「だって、貴女。王城に居る時よりも、元気そうにしていたから。だから、息子の事を何とも思っていないと思ってしまったのだけれど、レオンを思って怒ってくれて、先ほどは励ましてもくれたでしょう? 貴族にとっては、自身の失態を晒すことは弱みを曝け出す事であるにも関わらずね」
それは、レオン様が国をきちんと治めてくれないと、私のもふもふ生活が駄目になってしまうからであって……。
「あの、王妃様は勘違いしていると思います」
「どういうことかしたら?」
だけど、真正面からレオン様はいらないです! と、言ったら角が立ってしまうので……。
「私は、レオン様には相応しくないです。もちろん、王妃としてもです。レオン様を諫める事もできませんでしたし、心を繋ぎ止めておくことすらできませんでした。そのような者が、どうしてレオン様の伴侶に相応しいでしょうか――」
少し涙声で話す。
これで……、なんとかなるはず。
「レオン、聞きましたか! エリーゼちゃんは、レオン――、貴方を愛しているけれど、貴方の幸せを願っていたから身を引いたのですよ! そして、そのことすら自らの失態だと言っているのです。これが、どういう事か分かりますか?」
どういうこと?
私の頭の中は完全に、事態についていけてません。
「それは……、まだ自分を愛しているという事ですか」
全然、愛してないから。
どこをどうとったら、そういう発想にいきつくのか私は将来の王国が心配になってきました。
「レオン、そうじゃないわ。エリーゼちゃんは、こう言っているのよ! 私は、レオンに相応しくないから、見ているだけでいいって! 何て健気な子……」
王妃様が扇子を広げて口元を隠しつつ、私を見てくる。
そしてレオン様とは言うと、足元から崩れ膝をつき両手を地面につけて「何と言うことだ……。真実の愛は、ここにあったんだ……」とか言っています。
……もう帰っていいですか?
それよりも、話題を変えた方が良いかも知れない。
コレ以上は流石に変な方向へ話が進みそうな気がしたから。
「王妃様、アデリナさんに縄をかけていますけど――、どうなされるのですか?」
「どうして、そんな事を聞くの? エリーゼちゃん」
「エリーゼでいいです。どうしてですか?」
「決まっているわ。男爵風情のせいで公爵家と王家に泥を塗ったのよ? しかも、王妃としての教育をレオンの懇願で受けさせていたのに、逃げ出したばかりか、私が病気という事にして、穏便に婚約解消をしようとしたにもかかわらず、貴女の所に来たばかりがレオンに近づいた目的は不純。これだけの問題を起こしておいて、何もしないというのはあり得ない話でしょう?」
スウッと、眼が細くなり王妃様はアデリナさんの方を見ると、王妃様に見つめられたアデリナさんは「ヒッ!」と声を上げてしまっていた。
私からは、王妃様の表情は見えなかったけど、逆鱗に触れたみたい。
「それでは……」
「そうね。陛下のお考え次第だけど、良くて貴族籍剥奪、下手をすれば一族全員が死罪も考えられるわね」
「そんな! 母上!」
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