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第16話 モフモフには勝てなかったです。
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朝は、まだ肌寒い季節です。
私は、フェルシアさんの艶やかな毛の中で仔犬たちと一緒に寝るのが日課になってます。
「エリーゼ様っ! エリーゼ様っ!」
そして、朝になると何時ものように、ウルリカが私を探して、見つかり怒られます。
こんなに気持ちのいい寝床があるのに、モフモフもあるのに、どうして……。
「エリーゼ様! また、こんなところで寝ていて! しかも、また下着姿で!」
「朝は肌寒いから……」
「布団を用意したと思いますが?」
「それは分かっているのよ」
「貴族の令嬢として、もう少し慎みのある行動をですね!」
くどくどと小言を言われる毎日。
だって、婚約破棄されたから、この身は自由!
人前では貴族としての振る舞いと、言葉遣いは忘れないけど、モフモフには勝てないの。
「すやー」
「エリーゼ様!」
ウルリカが、私の名前を呼んでいるけど、朝が弱い私は、そのままフェルシアさんの毛の中に、モフッと倒れ込んで、瞬時に夢の世界へと旅立った。
「まったく! エリーゼ様は、最近、たるんでいます!」
「そんなことはないわよ。ウルリカも、モフモフされたら一瞬で堕ちちゃうから」
「ルーカス様と、ルアナ様が、今のエリーゼ様を見られたら、たぶん怒ると思いますよ?」
「そんな!? つまり、もっとモフモフしないと駄目ってことなのね!」
「モフモフからは離れてください!」
朝の恒例の行事が終わり、無理矢理起こされ朝食を摂った後、綺麗になったお庭へと移動。
ウルリカにお茶を淹れてもらい、私は一人、物思いに耽っている。
時々、真正面でお茶を淹れてくれたウルリカに視線を向けるけれども、貴族の令嬢に仕えるかのように毅然としたメイドの雰囲気を醸し出して立っていた。
「何かありましたか?」
「いえ、とくには――」
それにしても、ウルリカは少し真面目すぎる気がします。
フェルシアさんの毛の中で、仔犬を抱きしめながら寝るという素晴らしさを知ってもらいたい。
そうすれば、きっと朝を少しだけ長く眠れるかも知れない。
どうすれば……、どうすれば!
私の頭の中は、かつてない程にフル回転し――。
「ハッ!」
「どうかなさいましたか? エリーゼ様」
「私、真実に気がつきましたの」
「真実とは?」
「お父様に、精霊さんに導かれて、私の護衛になってくださったフェルシアさんが居ることを伝えたらどうかしら?」
「それは必要かも知れませんね。何せ、エリーゼ様の護衛なのですから」
「そうよね? そう思うわよね?」
「はい。不測の事態に備えることは必要不可欠ですので」
「それで、国王様に許可を頂くわよね?」
「そうですね。国を滅ぼす力を持つフェンリルを従えているとなると報告はしておいた方がいいでしょう」
「そうよね! そしたら、モフモフの素晴らしさを国中に広げることが出来るわよね?」
「それは、どういうことでしょうか?」
唐突に冷たい視線を私に向けてくるウルリカ。
怒られる5秒前な気がしてならないわ。
「ウルリカ。私、考えたの」
「何をですか?」
怖い! 怖いから! そんな低い声を出さないで!
だけど、私は負けられない!
「皆に、フェルシアさんの素晴らしさを――、モフモフの至高を知ってほしいって! そうすれば、私が長く寝ていても!」
「無理矢理起こしますから。それとコレとは話は別です。いいですね? エリーゼ様」
「――あ、はい……」
有無を言わさない物の言いようで、私は思わず頷いていた。
たぶんウルリカは少し素直になれないところがあるのかも知れない。
私は足元で駆けまわっている仔犬3匹を抱き上げてギュッと抱きしめる。
このモフモフは、いいモフモフです。
「主、少しは自重というのを覚えた方がいいのではないのか?」
「フェルシアさんまで……」
「ですが、メレンドルフ公爵家の当主ルーカス様と国王陛下への報告はしておいた方がいいですね。何かあった時に困りますから」
「よく考えてみれば、報告はしておかないと不味いわよね」
私は仔犬を下ろしながら答える。
私は、フェルシアさんの艶やかな毛の中で仔犬たちと一緒に寝るのが日課になってます。
「エリーゼ様っ! エリーゼ様っ!」
そして、朝になると何時ものように、ウルリカが私を探して、見つかり怒られます。
こんなに気持ちのいい寝床があるのに、モフモフもあるのに、どうして……。
「エリーゼ様! また、こんなところで寝ていて! しかも、また下着姿で!」
「朝は肌寒いから……」
「布団を用意したと思いますが?」
「それは分かっているのよ」
「貴族の令嬢として、もう少し慎みのある行動をですね!」
くどくどと小言を言われる毎日。
だって、婚約破棄されたから、この身は自由!
人前では貴族としての振る舞いと、言葉遣いは忘れないけど、モフモフには勝てないの。
「すやー」
「エリーゼ様!」
ウルリカが、私の名前を呼んでいるけど、朝が弱い私は、そのままフェルシアさんの毛の中に、モフッと倒れ込んで、瞬時に夢の世界へと旅立った。
「まったく! エリーゼ様は、最近、たるんでいます!」
「そんなことはないわよ。ウルリカも、モフモフされたら一瞬で堕ちちゃうから」
「ルーカス様と、ルアナ様が、今のエリーゼ様を見られたら、たぶん怒ると思いますよ?」
「そんな!? つまり、もっとモフモフしないと駄目ってことなのね!」
「モフモフからは離れてください!」
朝の恒例の行事が終わり、無理矢理起こされ朝食を摂った後、綺麗になったお庭へと移動。
ウルリカにお茶を淹れてもらい、私は一人、物思いに耽っている。
時々、真正面でお茶を淹れてくれたウルリカに視線を向けるけれども、貴族の令嬢に仕えるかのように毅然としたメイドの雰囲気を醸し出して立っていた。
「何かありましたか?」
「いえ、とくには――」
それにしても、ウルリカは少し真面目すぎる気がします。
フェルシアさんの毛の中で、仔犬を抱きしめながら寝るという素晴らしさを知ってもらいたい。
そうすれば、きっと朝を少しだけ長く眠れるかも知れない。
どうすれば……、どうすれば!
私の頭の中は、かつてない程にフル回転し――。
「ハッ!」
「どうかなさいましたか? エリーゼ様」
「私、真実に気がつきましたの」
「真実とは?」
「お父様に、精霊さんに導かれて、私の護衛になってくださったフェルシアさんが居ることを伝えたらどうかしら?」
「それは必要かも知れませんね。何せ、エリーゼ様の護衛なのですから」
「そうよね? そう思うわよね?」
「はい。不測の事態に備えることは必要不可欠ですので」
「それで、国王様に許可を頂くわよね?」
「そうですね。国を滅ぼす力を持つフェンリルを従えているとなると報告はしておいた方がいいでしょう」
「そうよね! そしたら、モフモフの素晴らしさを国中に広げることが出来るわよね?」
「それは、どういうことでしょうか?」
唐突に冷たい視線を私に向けてくるウルリカ。
怒られる5秒前な気がしてならないわ。
「ウルリカ。私、考えたの」
「何をですか?」
怖い! 怖いから! そんな低い声を出さないで!
だけど、私は負けられない!
「皆に、フェルシアさんの素晴らしさを――、モフモフの至高を知ってほしいって! そうすれば、私が長く寝ていても!」
「無理矢理起こしますから。それとコレとは話は別です。いいですね? エリーゼ様」
「――あ、はい……」
有無を言わさない物の言いようで、私は思わず頷いていた。
たぶんウルリカは少し素直になれないところがあるのかも知れない。
私は足元で駆けまわっている仔犬3匹を抱き上げてギュッと抱きしめる。
このモフモフは、いいモフモフです。
「主、少しは自重というのを覚えた方がいいのではないのか?」
「フェルシアさんまで……」
「ですが、メレンドルフ公爵家の当主ルーカス様と国王陛下への報告はしておいた方がいいですね。何かあった時に困りますから」
「よく考えてみれば、報告はしておかないと不味いわよね」
私は仔犬を下ろしながら答える。
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