1000軒にひとつの奇跡の床屋

トマト

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こんな床屋はじめて

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高校生の道子は、憂鬱だ。

去年から、おかあさんが、病気で入院して、家事も弟たちの世話もしなくちゃいけない。

今は期末テスト期間中。勉強もしなきゃいけない。

しかも所属している新聞部は、学校新聞を終業式の日に配布するため、あろうことか、このテスト期間中に印刷所に原稿をもっていかねばならないのだ。

「ああもう。。『~しなきゃいけない』が多すぎる!」

でも、憂鬱の理由は忙しいからだけじゃない。

この。。。。前髪だ。

普段は美容院にいって切ってもらっていたのだが、忙しくて、予約をできなかった。

たまたま、地下鉄の構内にある1000円カットのお店で、切ってもらったら、慣れない女性客に尻込みしたのか、
1ミリしか、かわってないんじゃないかという仕上がりだった。

「もう、自分できっちゃえー」

右半分をつまんでチョン。左半分をつまんでチョン。

。。。げげげげえーー

猿みたいになってしまった!
ふげええ
慌てて、まん中もチョキン。。

あかん。。オンザまゆげ3センチになってしまった。。。

前髪は、女子高生の命なのに。。。

とりあえず、ピンで強引にとめて学校に行った。

友達は
「おでこ、かわいいじゃん」

とか言ってたけど、あれ、絶対、腹んなかじゃ笑ってるからな。

印刷所からの帰り道、人目を避けて裏道を歩いていた。

すると、突然、めにとびこんできたのは
『あなたにぴったりの素敵なヘアスタイルをお約束します《1000軒にひとつの奇跡の床屋》』
という看板だった。

「前髪がめだたないような、自然なかんじにしてもらえるんかな。」

だめもとで、入ってみた。

「いらっしゃいませ」
温厚そうなおじさまがにっこり笑っている

「あの、実は。。」
といって、ピンをとってみせる

「なるほど、前髪をきりすぎてしまったんですね。はいはい。そういうお客様、おおいんですよ」

「なんか、自然な感じになりますか」

「おまかせください」

道子は、椅子に座ると疲れもあって、うとうと眠ってしまった。

シャキシャキ シャキンシャキ。。。
と、ハサミを使うリズミカルな音が心地よい。

「お客さま、お客さま」
どれぐらい眠っていたのだろう。床屋に起こされて、目をさます。
「いかがでしょう」

鏡を渡されて、ビックリする

「ま、前髪が眉毛のあたりまで、伸びている!」

「お気に召されましたか。」

「え。なんで、伸びちゃったの?すごい」

「それはもう『奇跡の床屋』でございますから」

髪をのばしちゃうなんて、《1000軒にひとつ》どころじゃないよーと、大喜びで家に帰った。

「ただいまー」

「あれ、ねえちゃん、前髪伸びた?」

「ふふふ。奇跡なのだよ。鞄おいたら、ご飯作るね」
と、弟のよこを通りすぎた。

「ね、ねえちゃん?」

「なに?」

「後頭部になべぶた半分ぐらいのハゲができてるよ」

「え?」
後頭部をさわってみると、片手がすっぽりはいるぐらい髪が剃られている。


あいつ。こんなところから取って、植毛しやがった。。。。。。。。。









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