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第二話 高学歴ニートはフリーターになる
しおりを挟む 私は電車に揺られて児童養護施設に向かっている。
あの日私は、すぐにその施設に電話し、支援したい旨を伝えた。電話の向こうの職員の方は優しそうな中年女性で、嬉しそうに話していたのが印象的だった。
私の両手の紙袋にはパンパンに筆記用具や子供服が詰まっている。前の会社から口止め料としてたっぷりもらっているから問題はない。
目的の駅についた私は電車を降りた。私の住んでいる場所から西に20キロほど行ったそこは、海が近く落ち着いた場所だった。目的地はここからバスに乗って10分程度らしい。私は、バス停でバスを待った。
突然私みたいな見知らぬニートが支援をするのは迷惑ではないだろうか、と不安になってしまう。考え過ぎだろうか。そう思っているとバスが来たので私は席についた。
車窓から見える景色は長閑で、緑豊かな落ち着いた場所なんだと感じる。
目的のバス停に到着した私は220円を払ってバスを降りた。目の前には幼稚園のような建物がそびえている。白を中心とした塗装がされているが、所々剥げたところや錆びたところが見られ、年季を感じさせている。
ゲートの隣のインターフォンを押して応答を待つ。
「はい。西神児童福祉センターです」
「あの。すみません。一昨日お電話させて頂いた神条ですが」
「ああ。すぐ向かいますのでちょっとそこで待っててくださいね」
ガチャコンと音を立ててインターフォンは切れた。この声は一昨日の電話の人かな。
しばらく待っていると、先ほどの女性と思われる人が建物からで出来て、ゲートを開けた。
「こんな辺鄙なところまでありがとうございます」
「いえいえそんな。たまたまニュースで・・・」
「そんなにたくさん荷物を!私が持ちますのでどうぞ中に」
女性は私の手から紙袋を取り、建物の中に入っていった。
女性を追って建物に入る。その中はパソコンと受話器の置かれたいくつかのデスクが並ぶ学校の職員室のような場所だった。しかし、職員はその女性を含めて3人しかおらず、どこか寂しい雰囲気を感じていると、応接間に通された。
話を聞くと、この施設には5歳から大学卒業するまでの年齢の子が住んでいるらしく、寄付や行政からの支援で成り立っているが最近はどちらも少なくなっているとのことだった。
「よかったら子供達に会っていかれますか」女性の提案に戸惑いながらも、はいと答えた。
案内された部屋には5人くらいの児童がブロックで遊んでいた。
「みんな!こっち向いて!このお姉さんがみんなにお洋服を持ってきてくれたわよ」
歓声と共に、子供たちが近づいてくる。どこから来たの。お名前は。質問が止まらない。あまり外部の人は来ないのだろうか。
しかし、部屋の奥で一人ブロック遊びを続けている男の子がいた。
「あの。あの子は」私は女性に話しかける。
「あぁ。あの子ね。ご両親を亡くしてここに引き取られたんだけど、あまり馴染めないみたいでね。いじめとかはないけど、かなり内気みたいで私たちも悩んでるのよねぇ」
「そうなんですか」
私は、目の前の子供達にちょっとごめんねと言って男の子の前まで動いた。
「ぼく、何を作ってるのかな」
しゃがんで話しかけてみる。
「悪い人たちのお城」
そう言いながら男の子は手を止めわた日の顔を見る。しかしすぐプイッと下を向いてしまった。
あれ。嫌われてる私?
あの日私は、すぐにその施設に電話し、支援したい旨を伝えた。電話の向こうの職員の方は優しそうな中年女性で、嬉しそうに話していたのが印象的だった。
私の両手の紙袋にはパンパンに筆記用具や子供服が詰まっている。前の会社から口止め料としてたっぷりもらっているから問題はない。
目的の駅についた私は電車を降りた。私の住んでいる場所から西に20キロほど行ったそこは、海が近く落ち着いた場所だった。目的地はここからバスに乗って10分程度らしい。私は、バス停でバスを待った。
突然私みたいな見知らぬニートが支援をするのは迷惑ではないだろうか、と不安になってしまう。考え過ぎだろうか。そう思っているとバスが来たので私は席についた。
車窓から見える景色は長閑で、緑豊かな落ち着いた場所なんだと感じる。
目的のバス停に到着した私は220円を払ってバスを降りた。目の前には幼稚園のような建物がそびえている。白を中心とした塗装がされているが、所々剥げたところや錆びたところが見られ、年季を感じさせている。
ゲートの隣のインターフォンを押して応答を待つ。
「はい。西神児童福祉センターです」
「あの。すみません。一昨日お電話させて頂いた神条ですが」
「ああ。すぐ向かいますのでちょっとそこで待っててくださいね」
ガチャコンと音を立ててインターフォンは切れた。この声は一昨日の電話の人かな。
しばらく待っていると、先ほどの女性と思われる人が建物からで出来て、ゲートを開けた。
「こんな辺鄙なところまでありがとうございます」
「いえいえそんな。たまたまニュースで・・・」
「そんなにたくさん荷物を!私が持ちますのでどうぞ中に」
女性は私の手から紙袋を取り、建物の中に入っていった。
女性を追って建物に入る。その中はパソコンと受話器の置かれたいくつかのデスクが並ぶ学校の職員室のような場所だった。しかし、職員はその女性を含めて3人しかおらず、どこか寂しい雰囲気を感じていると、応接間に通された。
話を聞くと、この施設には5歳から大学卒業するまでの年齢の子が住んでいるらしく、寄付や行政からの支援で成り立っているが最近はどちらも少なくなっているとのことだった。
「よかったら子供達に会っていかれますか」女性の提案に戸惑いながらも、はいと答えた。
案内された部屋には5人くらいの児童がブロックで遊んでいた。
「みんな!こっち向いて!このお姉さんがみんなにお洋服を持ってきてくれたわよ」
歓声と共に、子供たちが近づいてくる。どこから来たの。お名前は。質問が止まらない。あまり外部の人は来ないのだろうか。
しかし、部屋の奥で一人ブロック遊びを続けている男の子がいた。
「あの。あの子は」私は女性に話しかける。
「あぁ。あの子ね。ご両親を亡くしてここに引き取られたんだけど、あまり馴染めないみたいでね。いじめとかはないけど、かなり内気みたいで私たちも悩んでるのよねぇ」
「そうなんですか」
私は、目の前の子供達にちょっとごめんねと言って男の子の前まで動いた。
「ぼく、何を作ってるのかな」
しゃがんで話しかけてみる。
「悪い人たちのお城」
そう言いながら男の子は手を止めわた日の顔を見る。しかしすぐプイッと下を向いてしまった。
あれ。嫌われてる私?
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