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第2章 恋星
王様とデート
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リラには、自分がどうしてここにいるのかさっぱりわからなかった。
今日の授業を終え部屋へ戻ると、侍女たちにあれよあれよとドレスに着替えさせられ、どういうわけかサリウスがやってきたのだ。
そして気がつけば豪華な料理が運ばれ、何故だかサリウスとお酒を乾杯している。
リラは最初、お酒は飲めないと主張したが聞き入れてもらえず、仕方なく少しずつ飲んでいた。
「最近どうだ?勉強は進んでいるが?」
「はい。丁寧に教えてくださってます。」
「それで、決意は定まったのか?」
「え…あの、まだです」
「そうか」
会話があったとしてもそれは一瞬で終わってしまう。しかも内容は、例によって王妃になるか否かの話なので、リラには料理の味がよくわからなくなっていた。
とはいえ、最近自分が星の民の末裔だと知ったリラは、始祖の1人であるフィーニティアの記憶があるので王妃にならない、とは言い切れないでいる。
フィーニティアの、ここにいる星の民とわかり合いたいという強い想いが感じられるリラには、ここに残った方がいいという考えがあった。
「王様、わたし…星の民の為にならあなたと結婚してもいいと思います。」
「それはまた、どういう風の吹き回しだ?」
「自分でも不思議なんです。あなたのことを何とも思っていないのに…。でも、他人事には感じられなくて…」
サリウスは食事の手を止めた。
彼もリラがフィーニティアの子孫ではないかという推測は立てていた。
だからより自分の一族にフィーニティアの血を残せないか考えているのだが、最近、エルグラードから勉強をする彼女の様子を聞くうち、頑張っているのだから強要するべきではないと思い始めていた。
「最近、お前に強要をするのはよくないと思い始めたのだ。何も血を残すのは王族でなくともいいと」
「え?」
「王宮から出すわけにはいかぬが、城内にいるならばお前の好きなように過ごすといい」
「…何かあったのですか?」
「何故そう思うのだ」
「あ…えと、何だか少し元気がないように思えたので」
「…よくわかったな。それ程顔に出ているだろうか?実は、妹と喧嘩をしてしまってな。王妃になることを強要するなど、最低な男だど言われてしまった。」
サリウスの話にリラは目を丸めた。
妹というとミーシャのことだとすぐにわかったが、見るからにショックを受けているサリウスの姿に、らしくないと感じた。
よほどミーシャが大事なのだな、と思った。
「あいつに嫌いなどと言われたのは初めてなのだ…」
「…っ…ふふふ」
「何がおかしい」
「いえ、ごめんなさい…ふふふ、王様もちゃんと血の通った人なんだなと思ったんです。妹に言われた言葉でショックを受けるなんて、いいお兄さんじゃないですか。可愛いですね」
「なっ…」
ショックを受けるサリウスを見て可愛いと笑うリラに、サリウスは恥ずかしくなって顔を赤らめた。
黙れ、といいながら外方を向き何食わぬ顔で食事を再開している。
「ねぇ、王様」
「なんだ」
「今度デートしませんか?わたし、順序が大事だと思うんですよね。やっぱり、結婚する前には恋人という手順を踏まなきゃならないと思いますし、それならデートをしたいんです」
「デートとはなんだ?」
若干ふて腐れた顔をしているサリウスはそう返した。リラはその返しに驚き本当に知らないか確認したのだが、本当らしかった。
だから簡単に説明する。
2人で買い物をしたり遊びに行ったり、ごはんを食べに行くのもありだし、のんびりお茶をするだけでもいいし、と話を弾ませる。
「それはつまり、城から出るということか?」
「必ず外というわけじゃないですよ?お茶をするならお城の中でもできますし」
「なるほど」
「でもやっぱり難しいですよね。王様は、忙しい人ですし…」
思えば本当の王様にデートする暇などないはずだ、とリラは自分で言って1人沈んでいる。
「いいぞ」
「そうですよね、やっぱり駄目ですよね…え、今何ていいましたか?」
「デート、してやると言ったのだ。ただし、城外は無理だ。城の中にしてほしい。
」
「いいんですか?」
「あぁ」
「ではお茶会をしましょう!わたし、時々お茶をしてるんですけど、侍女ばかりで一緒に相手をしてくれる人がいないので、嬉しいです。」
「わかった」
そんなこんなでサリウスとデートをすることが決まったリラは、相手がサリウスということよりも1人でお茶をしなくていい、という喜びが強く食事の最中ずっとニヤついていたのだった。
ーーー
「この庭、そんなに気に入っているのか?」
「はい!あれ、ご存知なんですか?」
「ミーシャから報告を受けている」
あの食事会から3日後、サリウスは約束通り時間を作りリラとデートと称したお茶会をしていた。
場所はあの庭園である。
今日はフィーニティアの花園の前にテーブルと椅子を用意し、そこでお茶をしている。
この庭は王族しか立ち入れないとはいわれているが、当の本人達も滅多に足を踏み入れない場所だ。
サリウス自身も何十年かぶりだった。
「王様、この焼き菓子わたしが作ったんですよ。食べてみてください」
「………」
「そんな目でみなくても、毒なんて入ってませんよ?」
「サリウスだ。」
「へ?」
「デートというのは恋人同士がするものなのだろう?ならば、私の呼び方は王様ではなくサリウスと呼べ。私も、リラと呼ぶ」
「え、あ…はい。」
「堅苦しい言葉使いもなしだ。」
「ええっ」
確かにデートの場で堅苦しい呼び方をする人は少数だ。
もっともな意見だけに、リラは渋々と従った。
「ではいただく」
「どう?」
「うまいぞ」
リラが焼いたクッキー、フィナンシェ、スコーンを1種類ずつ食べていくサリウス。
紅茶を飲む姿もなかなか絵になっていた。
「(やっぱり、顔立ちはいいなぁ。王様だからかしら?)」
1つ1つの動作に無駄がないサリウスに、リラは見惚れた。
「なんだ?じっとみて」
「…サリウスってやっぱり綺麗な顔立ちだなって」
「そうか?生まれつきこんなだ」
「ずるいなー」
「お前も可愛らしい顔だぞ」
「な、な、な」
「ふっ」
コイのように口をパクパクするリラ。
サリウスはそんな彼女をみて、楽しそうに唇を吊り上げたのだった。
今日の授業を終え部屋へ戻ると、侍女たちにあれよあれよとドレスに着替えさせられ、どういうわけかサリウスがやってきたのだ。
そして気がつけば豪華な料理が運ばれ、何故だかサリウスとお酒を乾杯している。
リラは最初、お酒は飲めないと主張したが聞き入れてもらえず、仕方なく少しずつ飲んでいた。
「最近どうだ?勉強は進んでいるが?」
「はい。丁寧に教えてくださってます。」
「それで、決意は定まったのか?」
「え…あの、まだです」
「そうか」
会話があったとしてもそれは一瞬で終わってしまう。しかも内容は、例によって王妃になるか否かの話なので、リラには料理の味がよくわからなくなっていた。
とはいえ、最近自分が星の民の末裔だと知ったリラは、始祖の1人であるフィーニティアの記憶があるので王妃にならない、とは言い切れないでいる。
フィーニティアの、ここにいる星の民とわかり合いたいという強い想いが感じられるリラには、ここに残った方がいいという考えがあった。
「王様、わたし…星の民の為にならあなたと結婚してもいいと思います。」
「それはまた、どういう風の吹き回しだ?」
「自分でも不思議なんです。あなたのことを何とも思っていないのに…。でも、他人事には感じられなくて…」
サリウスは食事の手を止めた。
彼もリラがフィーニティアの子孫ではないかという推測は立てていた。
だからより自分の一族にフィーニティアの血を残せないか考えているのだが、最近、エルグラードから勉強をする彼女の様子を聞くうち、頑張っているのだから強要するべきではないと思い始めていた。
「最近、お前に強要をするのはよくないと思い始めたのだ。何も血を残すのは王族でなくともいいと」
「え?」
「王宮から出すわけにはいかぬが、城内にいるならばお前の好きなように過ごすといい」
「…何かあったのですか?」
「何故そう思うのだ」
「あ…えと、何だか少し元気がないように思えたので」
「…よくわかったな。それ程顔に出ているだろうか?実は、妹と喧嘩をしてしまってな。王妃になることを強要するなど、最低な男だど言われてしまった。」
サリウスの話にリラは目を丸めた。
妹というとミーシャのことだとすぐにわかったが、見るからにショックを受けているサリウスの姿に、らしくないと感じた。
よほどミーシャが大事なのだな、と思った。
「あいつに嫌いなどと言われたのは初めてなのだ…」
「…っ…ふふふ」
「何がおかしい」
「いえ、ごめんなさい…ふふふ、王様もちゃんと血の通った人なんだなと思ったんです。妹に言われた言葉でショックを受けるなんて、いいお兄さんじゃないですか。可愛いですね」
「なっ…」
ショックを受けるサリウスを見て可愛いと笑うリラに、サリウスは恥ずかしくなって顔を赤らめた。
黙れ、といいながら外方を向き何食わぬ顔で食事を再開している。
「ねぇ、王様」
「なんだ」
「今度デートしませんか?わたし、順序が大事だと思うんですよね。やっぱり、結婚する前には恋人という手順を踏まなきゃならないと思いますし、それならデートをしたいんです」
「デートとはなんだ?」
若干ふて腐れた顔をしているサリウスはそう返した。リラはその返しに驚き本当に知らないか確認したのだが、本当らしかった。
だから簡単に説明する。
2人で買い物をしたり遊びに行ったり、ごはんを食べに行くのもありだし、のんびりお茶をするだけでもいいし、と話を弾ませる。
「それはつまり、城から出るということか?」
「必ず外というわけじゃないですよ?お茶をするならお城の中でもできますし」
「なるほど」
「でもやっぱり難しいですよね。王様は、忙しい人ですし…」
思えば本当の王様にデートする暇などないはずだ、とリラは自分で言って1人沈んでいる。
「いいぞ」
「そうですよね、やっぱり駄目ですよね…え、今何ていいましたか?」
「デート、してやると言ったのだ。ただし、城外は無理だ。城の中にしてほしい。
」
「いいんですか?」
「あぁ」
「ではお茶会をしましょう!わたし、時々お茶をしてるんですけど、侍女ばかりで一緒に相手をしてくれる人がいないので、嬉しいです。」
「わかった」
そんなこんなでサリウスとデートをすることが決まったリラは、相手がサリウスということよりも1人でお茶をしなくていい、という喜びが強く食事の最中ずっとニヤついていたのだった。
ーーー
「この庭、そんなに気に入っているのか?」
「はい!あれ、ご存知なんですか?」
「ミーシャから報告を受けている」
あの食事会から3日後、サリウスは約束通り時間を作りリラとデートと称したお茶会をしていた。
場所はあの庭園である。
今日はフィーニティアの花園の前にテーブルと椅子を用意し、そこでお茶をしている。
この庭は王族しか立ち入れないとはいわれているが、当の本人達も滅多に足を踏み入れない場所だ。
サリウス自身も何十年かぶりだった。
「王様、この焼き菓子わたしが作ったんですよ。食べてみてください」
「………」
「そんな目でみなくても、毒なんて入ってませんよ?」
「サリウスだ。」
「へ?」
「デートというのは恋人同士がするものなのだろう?ならば、私の呼び方は王様ではなくサリウスと呼べ。私も、リラと呼ぶ」
「え、あ…はい。」
「堅苦しい言葉使いもなしだ。」
「ええっ」
確かにデートの場で堅苦しい呼び方をする人は少数だ。
もっともな意見だけに、リラは渋々と従った。
「ではいただく」
「どう?」
「うまいぞ」
リラが焼いたクッキー、フィナンシェ、スコーンを1種類ずつ食べていくサリウス。
紅茶を飲む姿もなかなか絵になっていた。
「(やっぱり、顔立ちはいいなぁ。王様だからかしら?)」
1つ1つの動作に無駄がないサリウスに、リラは見惚れた。
「なんだ?じっとみて」
「…サリウスってやっぱり綺麗な顔立ちだなって」
「そうか?生まれつきこんなだ」
「ずるいなー」
「お前も可愛らしい顔だぞ」
「な、な、な」
「ふっ」
コイのように口をパクパクするリラ。
サリウスはそんな彼女をみて、楽しそうに唇を吊り上げたのだった。
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