独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下

文字の大きさ
上 下
42 / 46

第73話:怪しげな場所

しおりを挟む
現ミカエル国王のヒニクンを調査するため、王城の地下の鉱脈に潜っていた。
赤髪の女剣士ケンセイ=エルザを案内人として、ミスリル鉱脈の第二階層を探索。

彼女の案内で怪しい人影を見た場所にたどり着く。

「ハルク、この先の空間よ。わたしが人影を見たのは」

ボクを探すために、エルザはミスリル鉱脈を探索していたという。その道中の第二階層で、第三者の存在を確認していたのだ。

「ん、この先なの? この先はたしか、採掘済みの広い坑道があったはずだけど」

このミスリル鉱山はボクが一人で採掘した場所。中は細部に至るまで覚えている。

だが、エルザが示した場所は、既にミスリル鉱石を掘りつくした場所。
だから万が一金目当てで採掘する人は、いない場所なのだ。

「ふむ。小僧、気を付けるんじゃぞ。つまり相手は金目当てじゃないかもしれん」

「金目当て以外で……了解です」

経験豊富なドワーフ職人のドルトンさんの忠告に、運転する気を引き締める。
相手が何者か知らない。だが金目の物意外な目的なら、危険な思考の持ち主の可能性があるのだ。

周囲を警戒しながら“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”をゆっくり前進させていく。

「あっ、ハルク君。開けた場所です!」

細い坑道から視界が、一気に開けてきた。前方を警戒していたサラが声をあげる。

「ん? アレはなんじゃ?」

次に声をあげたのはドルトンさん。開けた空洞の奥に、何かの建造物を発見したのだ。

「アレも小僧が作ったものか?」

「いえ、違います。ボクが掘った時は、あんな物はありませんでした」

建造物は明らかに人工的な物だった。遠目でよく分からないが、何かの神殿のようにも見える。
詳しく調べるためにはもう少し近づいて、荷馬車から降りる必要がある。

「もしかして、あれがヒニクン国王の秘密かもしれません。調べてみましょう!」

周囲を警戒しながら建造物に、荷馬車を近づけていく。今のところ周囲に動く物の気配はない。

「それじゃ、降りて、皆で調査をしてみましょう!」

荷馬車に乗って見ただけだと、細かい部分まで調べることができない。経験と知識な豊富な搭乗者たちに、ボクは調査の協力を依頼する。

「おい、小僧、無茶を言うな。この外の魔素の濃さだと、ドワーフのワシですら動けなくなる。剣聖の嬢ちゃんでもギリギリ。サラの嬢ちゃんに至っては命の危険もあるぞ!」

ドルトンさんの指摘は当たっている。慣れない人たちにとって、このミスリル鉱脈の空気と強めの重力は、かなり身体に毒となる。
特に第二階層は、先ほどの上の階層よりも過酷な環境なのだ。

「あっ、そうでしたね。でも心配はありません。皆さんは、この服を着てください!」

ボクが【収納】から取り出したのは、三着の全身服。サイズに合わせて、三人に手渡していく。

「ん? いきなり服を出して、どうつもりじゃ? こんな服を着たところで、どうなるんだ?」

ドルトンさんをはじめ、三人とも首を傾げてきた。これは説明をしないで渡したボクの失態。ちゃんと説明しないと。

「あっ、失礼しました。それは《対環境服ノーマル・スーツ》といます。劣悪な環境でも活動できる機能が付いています!」

対環境服ノーマル・スーツ》はボクが出発前に作っておいた超魔具。主な素材は生地のように薄く加工したミスリス金属だ。

形的には頭から全身まで覆っているので、魔素の悪影響を受けない。
また服の背中の箱には、簡易型の《空気清浄器プラズマ・エアクラスター》と《重力制御装置グラビティー・コントロール》が内蔵されている。
そのため着用者は魔素が濃くて、重力か強い階層の中でも活動が可能となるのだ。

「……という訳で、その《対環境服ノーマル・スーツ》があれば、荷馬車の外でも活動可能なんです!」

全員に機能の説明をする。少し複雑な説明だったけど、理解してくれたかな?

「ふう……こんなコンパクと背負い箱の中に、そんな機能を内蔵したとは。しかも全身を包む服とは……あいかわらず、小僧の発想力は、とんでもないのう。さて、着てみるとするか」

「よく分かりませんでしたが、さすがですハル君! さっそく着てみますね!」

「えっ? 二人とも何の疑問もなく、この怪しい服を着るの⁉ ちょ、ちょっと待ってよ!」

三人とも《対環境服ノーマル・スーツ》の説明を理解してくれた。
早速、今までの服を脱いで下着姿になろうとする。その上から《対環境服ノーマル・スーツ》を着込んでいくのだ。

「あっ、このカーテンで隠すね!」

サラとエルザは年頃の女の子。下着姿を直視する訳にはいかない。
荷馬車の中に設置しておいたカーテン機能で、二人は見えないように着替えをしてもらう。
男性のドルトンさんは、ボクの隣で着替えていく。

「ふむ。これでいいのか、小僧?」

「はい、大丈夫です! この腰のベルトに、今までの道具や武器も付けられます」

「なるほど、こうか。ふむ、想像以上に動きやすいし、これなら外に出ても問題はないのう」

「そうですね。機能はもちろん、着用性も重視しているので!」

対環境服ノーマル・スーツ》をメインとなるミスリス金属を、今回は極限まで薄く加工している。
お蔭でかなり身体にフィットしたデザインになってしまった。だが、その分だけ身体の動きを阻害することはない。

着用者は下着感覚で《対環境服ノーマル・スーツ》を装備できるのだ。

「ハルク君、こっちも終わりました!」

カーテンの向こう側の女性陣も、着替えが終わったようだ。サラはカーテンを開けて確認作業にしてもらう。

「うん、二人も大丈夫だよ。それによく似合っているよ!」

対環境服ノーマル・スーツ》は個人に合わせて、デザインと色を少し変えている。
女性陣は赤やピンク、黄色を基調とした色。男性のドルトンさんは黒と茶色を基調とした色だ。

「たしかに信じられないくらいに動きやすい服だけど、ちょっと体のラインが出すぎで、少し恥ずかしいわね、これ。特に胸が……」

着用感に満足しながらも、エルザは何やら顔を赤くしている。

「大丈夫ですよ、エルザさん。可愛らしくて、すごく似合っていますよ」

「あ、ありがとう、サラ。それにしてもローブ姿だと分かなかったけど、サラはそんなに胸が大きかったのね。うらやましいわ」

「えっ……そ、そんなことないですよ! エルザさんのスレンダーな体型も女性らしくて、うらやましいですよ!」

何やら女性陣同士で盛り上がっている。おそらく《対環境服ノーマル・スーツ》のデザインの話だろう。服飾の話を女の子は好きなのだ。

「えーと、とりあえず全員、問題はなさそうだね。それじゃ、外に出て調査をしてみよう!」

対環境服ノーマル・スーツ》の装着は完璧。頭の部分も兜のようにスッポリかぶるタイプなので、空気も自動的に吸えるのだ。

「それじゃ、扉を開けて、調査に行くよ!」

「ええ、こっちは大丈夫だけど。ねぇ、さっきから気になっていたけど、ハルクはまだ着替えいの、この《対環境服ノーマル・スーツ》に?」

「え、ボク? “慣れている”から大丈夫だよ」

「えっ、慣れている⁉ この《剣聖》であるわたしですら、加護を最大級に発動しても、苦しかったこの外の環境を⁉」

「あっはっはっは……この辺は子どもの頃からの遊び場だからね。それじゃ、開けるよ!」

プシュー!

荷馬車の密閉扉を解放する。
こうして怪しげな神殿風の建造物を、ボクたち四人で調査するのであった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...