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第59話:新しい道具作り

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マルキン魔道具店で人助けをして、《マルキングループ一生無料買い物権利》を貰った。

好意に甘えて欲しい魔道具を購入。新しい道具を製造するために屋敷に帰宅する。

サラは魔術の勉強のために、自分の魔術工房へ。仕事中のドルトンさんの工房へと、ボクは挨拶にいく。

「ただいまです、ドルトンさん!」

「ん? どこかに行っていたのか」

「はい、街の魔道具店で買い物をしてきました!」

ちょうどドルトンさんは休憩中だった。
ボクは【収納】を発動。買ってきた魔道具を、工房の床の上に並べていく。

「なっ⁉ な、なんじゃ、この大量の、しかも高価な魔道具は⁉」

「実は…………ということで、無料で買ってきたんです!」

マルキン魔道具店での経緯を説明する。
マルキンさんは等価交換と言っていたけど、自然に埋まっているガルネット宝玉を採掘しただけのボクにとっては、無料にも近い買い物だったのだ。

「なんと、ガルネット宝玉をゲームの景品で渡して、その対価に高級魔道具を一生無料じゃと⁉ 相変わらずとんでもない買い物をしてきたのう、オヌシは」

「あっはっはっは……なにぶん慣れてないので」

五歳の時から地下鉱脈に籠っていたから、普通の買い物の経験がない。だから今回も流れに任せて買い物してきた感じだ。

「まぁ、そんな中でも人助けするのが、オヌシの良いところだが。とろこで、こんなに大量の魔道具を買い物して、いったい何をするつもりじゃ? まさか魔道具作りにでも挑戦するつもりか?」

「いえ、ボクは鍛冶師なので魔道具は作れません。だから作るのも鍛冶製品です。“マリエル護衛をもっと安全に行うための道具”を作ろうと思います!」

王都でマリエルの護衛をして、気がついたことがある。
それは『影ながら護衛するのは大変で、万が一の時は間に合わない危険性がある!』ということだ。

今回ボクたちが王都に付いてきたことは、マリエルには内緒にしてある。そのため護衛にも色々と制限がかかってしまう。

コッソリ馬車を尾行や、王城や王宮の隠し通路を移動。ミスリル・マジックミラー越しでの観察。
とにかく姿を現せないようにするために、遠まわしな護衛方法しかできない。
今後、マリエルの命に危機が会った時、どうしてタイムロスで間に合わない危険性がある。
だから道具作りで解決をしたいのだ。

「ふむ。その気持ちは分かるが、お姫さんが出向き先は、貴族の館や王宮とかの、普通の市民が出入りできない、厳重な場所じゃぞ? 近くで警護するのは難しく、お姫さんにオヌシの顔を割れておるんじゃろ?」

「はい、そうですね。たしかにマリエルと護衛騎士に、ボクは顔が知られています。だから魔道具の助けを借りて、新しい道具を作るんです!」

「うーむ。よく分からが、気を付けて作るんじゃぞ。魔道具は繊細な仕組みで、分解したら直すのは難しいかならな。特に“あのマルキン”の奴の店の品なら、なおさじゃ」

「はい、気を付けます! ん? マルキンさんのことを知っているんですか?」

「まぁな。昔の顔見知りじゃ。それじゃワシは仕事に戻るぞ」

ドルトンさんは深く説明をせずに、立ち去っていく。
マルキンさんは若い修行時代に、魔道具作りもしていた。おそらく同じ物作り関係で、二人は顔見知りだったのだろう。

「よし、ボクも取りかかるとするか」

ボクも自分の作業場所に向かう。今回必要な魔道具だけ、作業台の上に並べていく。

「さて。何から作ろうかな? そうだ、最初は『マリエルになるべき気がつかれない道具』から作ろう!」

最優先で作りたいのは、顔バレを防止する道具にした。マジックミラーよりも、もう少しだけ近くで彼女を見守りたい。そのための新しい道具が必要なのだ。

「えーと、そのためには、この魔道具と……これも使おう!」

頭の中でイメージを固めて、ボクは作業を開始する。
買い物の時に、ある程度はイメージをして、魔道具は選んできた。だから材料的には問題はない。

「これを、こう使って……ん? でもこの大きさと形だと邪魔だな。よし! 魔道具を“分解”して……必要な機能とパーツを取り出して……こっちのボクの道具に組み込んで……」

ボクは魔道具を分解していき、自分の道具に組み込んでいく。
ドルトンさんの先ほどのアドバイスが、作業に熱中するあまり頭から消えていたのだ。

でも分解しても大丈夫そう。何故なら魔道具と鍛冶作業は同じ物作り系で、基本的な原理は一緒なのだ。
ボクは感覚的に分解した魔道具を、自分なりに再構築していく。

「……よし、できぞ!」

試行錯誤して目的の道具が完成した。試しに動かしてみると、無事に起動する。

「よし、動いたぞ。あっ……でもこの道具は『自分だと効果が分かり辛い』な。どうしよう? あっ、そうだ! ドルトンさんで実験してみよう!」

新しい道具を実戦で使う前には、必ず実験が必須。

事前に準備をして道具を装着。ドルトンさんを驚かせにいくのであった。
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