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第55話:ガルネット宝玉
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サラの買い物に付き合って、高級魔道具店にやってきた。
だが薄汚れたローブ姿のサラのことを、店員と客は蔑んで見てくる。
「くっ……サラ!」
もう見ていられない。ボクは彼女の元に駆け付ける。
「ねぇ、サラ。よかった他の店に行かない? ここじゃない店にもガルネット宝玉はあるんじゃない?」
サラの手を取り、男性店員に聞かれないように移動を提案する。
正直なところ、これ以上この店にいてもサラが気分を悪くするだけ。それなら別の店でガルネット宝玉を買った方が、何倍もいいだろう。
「ありがとう、ハルク君。でもマーズナルお婆様は『王都のこの店で買ってきて欲しい』って言っていたの。この店のガルネット宝玉は昔から質が高くて、燃えるような赤色で、お婆様の次に作る魔道具に、どうしても必要みないなの。だから……」
そうか……そんな特別な事情があったのか。サラが気分を害してまで、この店にこだわっていた理由が分かった。
でも、この店で買うことは難しい。男性店員の視線は更に悪くなっているし、守衛もこちらに近づいてきた。
このままでは間違いなくボクたちは、店の外に摘み出されてしまう。
(どうすればいんだろう……この店のガルネット宝玉を買わないといけないし……燃えるような真っ赤な宝玉を……ん?)
そんな時だった。
ボクは“あること”に気がつく。
――――『燃えるような真っ赤な宝玉』を、見たことがあるのだ。
ちょっとサラに確かめてみよう。
(【収納】!)
ボクはこっそり収納スキルを発動。収納から取り出した原石を、リュックから取り出すふりをする。
「ねぇ、サラ。もしかしてガルネット宝玉って、これに似た石かな?」
「えっ⁉ そ、それは⁉ はい、そうです! というか、それがガルネットです! ハルク君、いったい、どこで、それを⁉」
おお、良かった。どうやらボクの勘は当たっていたようだ。
周りに聞かれないように、サラにだけ説明をしよう。
「実はミカエル城の地下の鉱脈を採掘していた時、この原石があったんだ。用途は知らなかったけどキレイだったから、採掘して収納しておいたんだ」
ミスリス鉱脈では色んな金属や鉱石が、見つかることもあった。
ボクは金属の専門家だけど、宝石や宝玉は素人。だからキレイな石は採掘して、収納したまにしておいたのだ。
「そうだったんですね、ハルク君。相変わらず凄いですね」
「あっ、そうだ。そういえば“綺麗にしたガルネット”もあるから、ちょっと待っていてね!」
先ほどと同じように、こっそり収納を発動。リュックサックから取り出すフリをして、違うガルネットを取り出す。
「はい、どうぞ。これは魔道具に使えそうか?」
「えっ⁉ す、すごい……こんな大きくて、透明度が高いガルネット宝玉は、生まれて初めてみました……」
サラは先ほど以上に驚く。目を丸くして、宝玉を見つめている。
「えっ、そうなの? 宝玉は専門外なんで、適当に研磨して、カットしただけなんだね、これは」
ガルネット宝玉の大きさは、両手でも掴むのが精いっぱいなサイズ。
先ほどの原石とは違い、“ミスリスカッター”で形を整え、“ミスリスやすり”で極限まで研磨してある。
サラに言われて気がついたけど、この店の売り物のどの宝玉よりも、ボクの宝玉の方が何倍も綺麗に輝いていた。
もしかしたら宝玉の原石を何回か研磨している内に、本職の宝石職人を超える技術を、ボクは習得していた可能性ある……かもしれない?
ざわざわ……ざわざわ……
ん?
気がつくと、店内が異様にざわついていた。
全ての客と店員が、ボクとサラに注目していたのだ。
……「あ、あれを見て⁉ な、なんて美しい宝玉なの⁉」
……「あ、あの、燃えるような真紅は、まさかガルネット宝玉⁉」
……「た、たしかに! でも、あんな大きなガルネット宝玉なんて、今まで見たこともないわ!」
……「あれだけ大きくて輝くガルネット宝玉なら、小国家も買える価値があるわよ⁉」
……「ど、どうして、あんなみすぼらしい二人が持っているの⁉」
……「も、もしかて、あの二人は、どこかの大国の御曹司か、大貴族だったの⁉」
先ほどまでサラのことを馬鹿にしていた貴族客は、目を丸くして注目してくる。宝玉とボクたちの格好を何度も見直し『信じられない!』という表情をしていた。
一方で先ほどの悪態男性店員は、顔を真っ青にしていた。
おそらくボクとサラがこんな価値のあるガルネット宝玉を所有している客だとは、夢にも思っていなかったのだろう。
『とんでもない超上客に、大変失礼な悪態をついてしまった。このままではクビになってしまう……』と先ほどの態度を思い出し、顔が真っ青になっていたのだろう。
ざわざわ……ざわざわ……ざわざわ……ざわざわ……
とにかく全ての客と店員は、ボクたちを注目しながらざわついていた。高級魔道具店の中は、異様な雰囲気だ。
「ど、どうしよう、ハルク君……」
「とりあえず、店を出ようか?」
気まずくなったのでガルネット宝玉をしまって、店を出て行こうとする。
――――そんな時だった。
「お、お待ち下さい、お客様! そちらのお客様!」
いきなり男の人に声をかけられる。
声をかけてきたのは、店の奥の部屋から飛び出してきた中年男性。豪華で派手な服を着ている、どう見ても金持ちな人だ。
男性は息を切らしながら、ボクたちの目の前にやってきた。
「ど、どうやら当店の従業員が、大変失礼なことをしてしまったようで……本当に申し訳ございませんでした、お客様!」
「いえ、いえ、気になさらず。ボクたちも気を付けるべきでした。ん? “ウチの従業員が”?」
物凄く腰を低く謝ってきた男性の、口から出た言葉が引っかかる。普通の店員はそんな言い方はしない。
「申し遅れました。私はこの魔道具店を経営者マルキンと申します! よかったら奥の特別応接室で、お話をいたしませんか、お客様? さぁ、こちらへどうぞ!」
「へっ? はい。えっ?」
こうして高級魔道具店の経営者に、かなり強引に特別室へと案内されるのであった。
だが薄汚れたローブ姿のサラのことを、店員と客は蔑んで見てくる。
「くっ……サラ!」
もう見ていられない。ボクは彼女の元に駆け付ける。
「ねぇ、サラ。よかった他の店に行かない? ここじゃない店にもガルネット宝玉はあるんじゃない?」
サラの手を取り、男性店員に聞かれないように移動を提案する。
正直なところ、これ以上この店にいてもサラが気分を悪くするだけ。それなら別の店でガルネット宝玉を買った方が、何倍もいいだろう。
「ありがとう、ハルク君。でもマーズナルお婆様は『王都のこの店で買ってきて欲しい』って言っていたの。この店のガルネット宝玉は昔から質が高くて、燃えるような赤色で、お婆様の次に作る魔道具に、どうしても必要みないなの。だから……」
そうか……そんな特別な事情があったのか。サラが気分を害してまで、この店にこだわっていた理由が分かった。
でも、この店で買うことは難しい。男性店員の視線は更に悪くなっているし、守衛もこちらに近づいてきた。
このままでは間違いなくボクたちは、店の外に摘み出されてしまう。
(どうすればいんだろう……この店のガルネット宝玉を買わないといけないし……燃えるような真っ赤な宝玉を……ん?)
そんな時だった。
ボクは“あること”に気がつく。
――――『燃えるような真っ赤な宝玉』を、見たことがあるのだ。
ちょっとサラに確かめてみよう。
(【収納】!)
ボクはこっそり収納スキルを発動。収納から取り出した原石を、リュックから取り出すふりをする。
「ねぇ、サラ。もしかしてガルネット宝玉って、これに似た石かな?」
「えっ⁉ そ、それは⁉ はい、そうです! というか、それがガルネットです! ハルク君、いったい、どこで、それを⁉」
おお、良かった。どうやらボクの勘は当たっていたようだ。
周りに聞かれないように、サラにだけ説明をしよう。
「実はミカエル城の地下の鉱脈を採掘していた時、この原石があったんだ。用途は知らなかったけどキレイだったから、採掘して収納しておいたんだ」
ミスリス鉱脈では色んな金属や鉱石が、見つかることもあった。
ボクは金属の専門家だけど、宝石や宝玉は素人。だからキレイな石は採掘して、収納したまにしておいたのだ。
「そうだったんですね、ハルク君。相変わらず凄いですね」
「あっ、そうだ。そういえば“綺麗にしたガルネット”もあるから、ちょっと待っていてね!」
先ほどと同じように、こっそり収納を発動。リュックサックから取り出すフリをして、違うガルネットを取り出す。
「はい、どうぞ。これは魔道具に使えそうか?」
「えっ⁉ す、すごい……こんな大きくて、透明度が高いガルネット宝玉は、生まれて初めてみました……」
サラは先ほど以上に驚く。目を丸くして、宝玉を見つめている。
「えっ、そうなの? 宝玉は専門外なんで、適当に研磨して、カットしただけなんだね、これは」
ガルネット宝玉の大きさは、両手でも掴むのが精いっぱいなサイズ。
先ほどの原石とは違い、“ミスリスカッター”で形を整え、“ミスリスやすり”で極限まで研磨してある。
サラに言われて気がついたけど、この店の売り物のどの宝玉よりも、ボクの宝玉の方が何倍も綺麗に輝いていた。
もしかしたら宝玉の原石を何回か研磨している内に、本職の宝石職人を超える技術を、ボクは習得していた可能性ある……かもしれない?
ざわざわ……ざわざわ……
ん?
気がつくと、店内が異様にざわついていた。
全ての客と店員が、ボクとサラに注目していたのだ。
……「あ、あれを見て⁉ な、なんて美しい宝玉なの⁉」
……「あ、あの、燃えるような真紅は、まさかガルネット宝玉⁉」
……「た、たしかに! でも、あんな大きなガルネット宝玉なんて、今まで見たこともないわ!」
……「あれだけ大きくて輝くガルネット宝玉なら、小国家も買える価値があるわよ⁉」
……「ど、どうして、あんなみすぼらしい二人が持っているの⁉」
……「も、もしかて、あの二人は、どこかの大国の御曹司か、大貴族だったの⁉」
先ほどまでサラのことを馬鹿にしていた貴族客は、目を丸くして注目してくる。宝玉とボクたちの格好を何度も見直し『信じられない!』という表情をしていた。
一方で先ほどの悪態男性店員は、顔を真っ青にしていた。
おそらくボクとサラがこんな価値のあるガルネット宝玉を所有している客だとは、夢にも思っていなかったのだろう。
『とんでもない超上客に、大変失礼な悪態をついてしまった。このままではクビになってしまう……』と先ほどの態度を思い出し、顔が真っ青になっていたのだろう。
ざわざわ……ざわざわ……ざわざわ……ざわざわ……
とにかく全ての客と店員は、ボクたちを注目しながらざわついていた。高級魔道具店の中は、異様な雰囲気だ。
「ど、どうしよう、ハルク君……」
「とりあえず、店を出ようか?」
気まずくなったのでガルネット宝玉をしまって、店を出て行こうとする。
――――そんな時だった。
「お、お待ち下さい、お客様! そちらのお客様!」
いきなり男の人に声をかけられる。
声をかけてきたのは、店の奥の部屋から飛び出してきた中年男性。豪華で派手な服を着ている、どう見ても金持ちな人だ。
男性は息を切らしながら、ボクたちの目の前にやってきた。
「ど、どうやら当店の従業員が、大変失礼なことをしてしまったようで……本当に申し訳ございませんでした、お客様!」
「いえ、いえ、気になさらず。ボクたちも気を付けるべきでした。ん? “ウチの従業員が”?」
物凄く腰を低く謝ってきた男性の、口から出た言葉が引っかかる。普通の店員はそんな言い方はしない。
「申し遅れました。私はこの魔道具店を経営者マルキンと申します! よかったら奥の特別応接室で、お話をいたしませんか、お客様? さぁ、こちらへどうぞ!」
「へっ? はい。えっ?」
こうして高級魔道具店の経営者に、かなり強引に特別室へと案内されるのであった。
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