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第37話:決戦

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暗黒古代竜エンシェント・ドラゴンバルドスを地上に、引きずり落とすことに成功。

だが相手は竜魔法の【竜闘気ドラゴン・オーラ】で能力を強化。
ボクの狩りの道具は通じなくなってしまう。

「ボクの道具が通じない、か。困ったぞ、これは……」

思わず声を漏らしてしまう。何か打開策を考えないと。
だがバルドスは、そのボクの隙を見逃せない。

『グラァアアアアア! 焼け死ね、ゴミ虫めぇえ!』

その言葉と共に、バルドスの全身が赤く発光。口を大きく開ける。

「あれは、マズイ! “火炎吐ブレス”が来る! 【収納】!」

新しい防具を、即座に取りだす。

直後――――
ヒューーーン、ゴォオオオオオン!

バルドスの口から、一筋の炎が発射される。
ボクの周囲に、大きな火柱が立ち上がる。

ハメルーンの一区画を一撃で消失された、強力な竜の“火炎吐ブレス”攻撃だ。

『ギャッハッハ! 矮小なゴミ虫の分際で、我を手こずらせやがって!』

バルドスは勝利を隠して、高笑いを上げている。
この近距離ではどんな大魔導士や腕利き剣士でも、古代竜エンシェント・ドラゴンの“火炎吐ブレス”は防げないのだ。

「いやー、ビックリしたな。ちょっと熱かったから、汗をかいちゃったよ」

だがボクは無事だった。
何しろ大魔導士や腕利きの剣士でもないから。

『ギャァアアア⁉ な、なぜ、生きている⁉ そ、その巨大な盾は、いったい⁉』

バルドスが驚いている。

ボクは無事だったのは鍛冶師だったから。
収納から“複合式大盾コンポジット・シールド”を取り出して、“火炎吐ブレス”を防御していたのだ。

この大盾はミスリルの板を、複合して張り合わせた特殊な盾。
ミスリル製は耐熱性もあるので、なんとかノーダメージで済んだのだ。

「ん? 相手が硬直している?」

バルドスは動きが固まっていた。
おそらく“火炎吐ブレス”を全力発射した後は、動きが遅くなってしまうのだろう。

「よし、チャンスだ! あっ、でも……」

竜魔法で強化されたバルドスの竜鱗は、今までの狩りの道具では抜けない。
もっと貫通力に特化した道具じゃないと、攻撃は無駄に終わる。
ボクの所有している道具の中で、もっと貫通力があるのは……

「あっ、そうか! 【収納】!」

ボクは瞬時に判断、新しい道具を取り出す。

取り出したのは、螺旋状に鋭く尖った、大きめの槍のようなドリル。
宿屋で温泉を掘削する時に作った、ミスリル製のドリルだ。

ドルトンさん曰く『地獄の岩盤すら貫通しそうな、恐ろしいドリル!』で、

――――その名は《円錐螺旋ハイパー・ドリル》だ!

「いくぞ!」

円錐螺旋ハイパー・ドリル》を構えて、騎士のように突撃していく。
狙うはバルドスの急所らしき部分……正面胴体だ。

ガッ、キーーーン!

だが強化された竜鱗に、《円錐螺旋ハイパー・ドリル》は止められてしまう。
まだ相手の方が防御力は勝っているのだ。

『ギャッハッハ! 矮小なゴミ虫め! 防御力はそこそこあるようだが、肝心の攻撃力が貧弱だなァアアア!』

胴体の正面で受け止めて、バルドスは高笑いを上げる。
好機とみて巨大な前足で、ボクを上から叩き潰そうとしていた。

「いや、まだだ! 改造した《円錐螺旋ハイパー・ドリル・改》は、ここからが本番さ! ミスリル・モーター起動!」

槍状の手元のスイッチを、ボクはオンにする。
円錐螺旋ハイパー・ドリル・改》の持ち手部分に、小型のミスリル・モーターを内蔵していた。
ここ数日間の工房作業で、追加した新しい機能だ。

ウィ――――ン!

金属音が響き渡る。
直後、《円錐螺旋ハイパー・ドリル・改》が凄まじい速度で、高速回転する。
ミスリル・モーターとギアを連動させることで、突撃槍としての攻撃だ。

ガッ、ガッ、ガッ、ズシャアアアア――――!

そのまま一気に、バルドスの竜鱗を貫通していく。まるで軽石のように簡単に穴が開いた。

『ギャァアアア⁉ 我の鱗の中でも、最強の正面が⁉ こうも簡単に⁉ ギャァアアア⁉』

自慢の正面の竜鱗を破られて、バルドスは悲痛な悲鳴を上げていて。
全身を使い暴れ回る。

だがそれは愚行――――さらに隙が生じていた。

「よし、今だ!」

さらなるダメージを与えるチャンスだ。
だが直線的な《円錐螺旋ハイパー・ドリル・改》では、致命傷を与えることは難しい。
違う攻撃手段を出さないと。

「ボクの最高の攻撃力で! ボクが使い慣れた道具で! よし、アレしかない!」

円錐螺旋ハイパー・ドリル・改》から手を放し、腰の剣を抜く。
剣である《ハンマーソード》手元のスイッチを押して、ハンマーモードに変形させる。

「ふう……」

腰だめに《ハンマーソード》を構える。深く深呼吸して、全身の魔力を高めていく。

「頼んだぞ、ハンマーよ……」

鍛冶鉱山用のハンマーを、ボクは五歳の時から振り続けてきた。
正確に数えたことはないが、その総回数は間違いなく一億回以上だ。

自分の中で唯一自信がある道具……いや、自慢の武器なのだ。

「いくぞ……バルドス!」

ボクは一気に《ハンマーソード》を振り切る。
狙うは鱗がえぐれた、バルドスの急所だ。

ピッ、カ――――!

攻撃が当たる瞬間、《ハンマーソード》が黄金色の光を放つ。
まばゆいばかりの閃光だ。

『ナッ! そ、その輝きはァア⁉ ま、まさか、伝説の⁉』

ズッ、シャーーーーーーーーーーーン!

バルドスが何かを叫んだ直後、攻撃が命中。
当たった瞬間、凄まじい衝撃波が発生。

ヒュ――――ン、ザッバ――――ン!

衝撃波によって、荒野の岩が吹き飛んでいく。
たまらずボクも少し吹き飛んでしまう。

「くっ……今の衝撃波は、いったい⁉ はっ、バルドスに追撃を加えないと!」

すぐさま《ハンマーソード》を構え直す。
危険なバルドスは、まだ目の前に健在。

ハメルーンからの援軍が来るまで、何とか少しでもダメージを与えておかないと。

「ん?」

だがバルドスの様子がおかしい。
立ちつくしたまま、ピクリとも動かないのだ。

ボクを油断させるために、動けない演技をしているのだろうか?

――――だが、そして次の瞬間だった。

バッ、シャッ――――――――ン!

巨大なバルドスの身体に、亀裂が走る。
そして木っ端みじんに吹き飛んでいく。

「ん? え?」

いったい何が起きたのだろうか。
突然のことに状況が理解できずにいた。

たしかボクが《ハンマーソード》で攻撃をした後、衝撃波が発生。
そしてバルドスは粉々に砕けてしまったのだ。

「つまり……暗黒古代竜エンシェント・ドラゴンバルドスは、死んだの?」

シャァーーーン

特別な魔物は死んだ後に粒子となり、大地に消える。
巨大なバルドスの死骸も、ゆっくりと粒子になっていく。

消えていく跡に、山のような素材が残っていた。
竜の牙や爪、鱗、骨など膨大な素材だ。

これで間違いない。
バルドスは本当に消滅したのだ。

「えっ……終わり? ボク一人、倒しちゃったの?」

こうして暗黒古代竜エンシェント・ドラゴンバルドス討伐戦は、無事に完了するのであった。

































 ――――あとがき――――


 ◇




読んで頂きありがとうございます!

 同じような痛快ファンタジーもスタートしました。

こちらも是非よろしくお願いします!



 《タイトル》
『大手冒険者ギルドを追放された事務青年、実は《天帝級》支援魔術師で、廃業寸前の冒険者ギルドで支援チートしていたら、剣聖や大賢者級が続々と通い始めて大繁盛。あと本人も周りがドン引きするほど強かった』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/832153235/348381183

《あらすじ》

  山奥出身の青年フィンは大手冒険者ギルド事務員だったが、無能な上司と同僚に「この役立たずめ!」と追放されてしまう。フィンは自分の力不足を嘆きつつ、生活のために廃業寸前の弱小ギルドに再就職。

 しかし元職場の誰も知らなかった。実はフィンが魔神に育てられた《天帝級》の支援魔術師で、元ギルドを密かに繁盛させていたことを。その有能さを知る高ランク冒険者は、彼の元に集い始める。「うちは弱小なので初級クエストしか発注できませんよ?」と言いながらも受け入れ、口コミで顧客はどんどん増えて栄えていく。

 これは世話焼きな青年が、訳あり冒険者や困っているお姫様、貴族を助けて認められ、規格外の支援魔術でギルドを運営。一方で追放した無能な大手ギルドは衰退していく物語である





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