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第51話:死の瞬間
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私が不思議な感覚に陥った後、バルマンの民は覚醒。
狂戦士となり形勢が逆転する。
『見つけた。我らが神の器よ』
だが私の前に、真紅の槍の異質な妖魔が出現。
槍はよって、お父様はダメージを受けてしまう。
「妖魔が……喋った⁉」
妖魔が人語を話した記録はない。
だが相手は明らかに意思をもって、言葉を口にしてきた。
「くっ……そうか。狙いは城ではなく、マリアだったのか……」
お父様の傷は深くはない。
剣先で相手をけん制しながら、お父様は私をかばう。
バルマン騎士剣術の守り構えをとる。
今の“司令の間”には、他の誰もない。
つい先ほど数人の従者たちがいた。だが彼らはすでに息をしていない。
恐らくこの槍の妖魔の仕業。
音も無く殺されてしまったのだろう。
頼りの他の騎士たちは、総動員で妖魔に攻撃をしかけている。
城内の残るは、警備の正規兵たちだけであろう。
(まずい状況ね……)
目の前の槍の妖魔は“普通”ではない。正規兵では援軍にもならない。
何故ならお父様に気配も感知させずに、コイツは奇襲してきたのだ。
父は歳を取ったとはいえ、腕利きの騎士。上級妖魔となら互角以上に戦える。
(つまり、こいつは上級よりも、更に上の妖魔なの?)
妖魔の中でも、特別な強さの存在なのであろう。
「マリア、ここは私が時間を稼ぐ。はやく逃げろ」
お父様も相手の危険度を察していた。
目の前に相手に勝てないとことを、自分でも知っているのだ。
身を挺して非力な私を、部屋の外に逃がそうとする。
「ですが、お父様……」
「早く行くのだ、マリア! これは父としての最期の頼みだ……頼む」
お父様は微笑んでいた。
怯える愛娘を、精いっぱい安心させようとしている。
「はい、お父様。必ず助けを、呼んでまいります!」
父の決死の覚悟を、無駄にさせる訳にはいかなかった。
助けを求めに、私は部屋の出口に向かう。
『逃がしはしない。“我らが神の器”よ』
だが相手も反応してきた。
シャーーー!
無防備な私に、槍先が襲いかかる。
戦闘能力がない私には、回避できない危険な攻撃。
ガッ、キーン!
だが私は無事だった。
お父様の斬撃が、槍を打ち落としたのだ。
「妖魔め! 我が娘には指一本、触れさせんぞ! “バルマンの荒獅子”と呼ばれた、我が剣を受けるがいいぃい!」
お父様は荒々しい猛き叫びをあげる。
まるで若き日の父のようなエネルギーだった。
『邪魔者は消す』
「させぬぞ!」
槍の妖魔とお父様の激戦が始まる。
剣と槍が激しくぶつかり合う。
金属音が室内に響く。
(お父様……)
戦いにわき目もふらずに、私は駆けていく。
負傷しているお父様は、このままでは力は果ててしまう。
私の役目はこの部屋から脱出して、救援を求めに行くこと。
くっ……足が鉛のように重い。
私自身も連戦で、疲労がピークに達していたのだ。
(あと少し!)
ようかく目の前に、脱出の扉が迫る。
この先に逃げ込んだら、何とかなるはず。
「――――っ⁉」
だが、その時だった。
嫌な気配を感じて、私は横に飛ぶ。
「うっ⁉」
直後、左腕に激痛がはしる。
視線を向けて、確認する。
私の左腕が切れて、鮮血が飛び散っていた。
(攻撃を……受けた⁉)
これは間違いなく自分の血。
何者かが攻撃してきたのだ。
「逃がしはしない。“我らが神の器”よ」
無機質な声と共に、槍の妖魔が目の前に姿を現す。
こいつが私を攻撃してきたのだ。
(どうして、コイツが⁉)
先ほどの槍の妖魔は、お父様とまだ戦闘中。
「二体目がいたの……か」
私は理解する。
“真紅の槍の妖魔”は最初から二体いた。
こっちは出口を封鎖していたのだ。
「マリアァ!……くっ!」
お父様の悲痛な叫びが、背後から聞こえる。
私を助けようとしているのだ。
だが、もう一体に行く手を阻まれている。
こちらに近づくことすらできないでいた。
室内には他に誰もいない。
まさに絶体絶命の状況だった。
「“我らが神の器”よ。死をもって、その肉体から解放してやる」
妖魔は攻撃してきた。
目の前に槍先が迫ってくる。
スローモーションのように、ゆっくりと見えてきた。
周囲の音も聞こえない。
ああ……きっと、これが走馬灯なのであろう。
ゆっくりと、でも確実に私の心臓に、槍先が迫ってくる。
(ああ……このまま私は死んじゃうのか……)
それは諦めでもなく、事実だった。
避けようにも自分の身体は、微かにしか動かない。
絶対に避けられない必殺の一撃
“自分の死”が目の前にあった。
――――だが突如、槍先は止まる。
ガッキーーン!
いや違う。
激しい火花と共に、吹き飛んでいったのだ。
「マリアァ!!」
直後、時が動き出す。
私の名を呼ぶ声が、無音の空間を切り裂いたのだ。
ザッ、シュバーーーン!
槍の妖魔が吹き飛んでいく。
この声の主が斬撃で、吹き飛ばしたのだ。
「えっ……」
時間と音が動き出し、私は状況が把握する。
“一人の騎士”が私を助けてくれたのだ。
「そんな……なぜ……アナタがここに……?」
状況を把握しても、私は混乱していた。
目の前に立つ騎士の姿を見て、私は言葉を失ってしまう。
どうして、この騎士がここにいるの?
もしかしたら、これは夢?
妖魔の見せる幻術なのか?
――――いや違う。この騎士の顔を、私が見間違えるはずがない。
「マリア、待たせたな! オレ様が来たから、もう安心だぜ!」
暑苦しくも自信に満ちた声と姿。
頼もしいほどの不遜の笑みを。
この騎士のことを、私マリアンヌが見間違えるはずがなかった。
「ライン……あなた……」
私の窮地を救ってくれたのは、赤髪の幼馴染。
ファルマの学園が誇る最強の騎士団、"蒼薔薇騎士”の一人。
《太陽の騎士》ラインハルト=ヘルトリングが駆けつけてくれたのだ。
狂戦士となり形勢が逆転する。
『見つけた。我らが神の器よ』
だが私の前に、真紅の槍の異質な妖魔が出現。
槍はよって、お父様はダメージを受けてしまう。
「妖魔が……喋った⁉」
妖魔が人語を話した記録はない。
だが相手は明らかに意思をもって、言葉を口にしてきた。
「くっ……そうか。狙いは城ではなく、マリアだったのか……」
お父様の傷は深くはない。
剣先で相手をけん制しながら、お父様は私をかばう。
バルマン騎士剣術の守り構えをとる。
今の“司令の間”には、他の誰もない。
つい先ほど数人の従者たちがいた。だが彼らはすでに息をしていない。
恐らくこの槍の妖魔の仕業。
音も無く殺されてしまったのだろう。
頼りの他の騎士たちは、総動員で妖魔に攻撃をしかけている。
城内の残るは、警備の正規兵たちだけであろう。
(まずい状況ね……)
目の前の槍の妖魔は“普通”ではない。正規兵では援軍にもならない。
何故ならお父様に気配も感知させずに、コイツは奇襲してきたのだ。
父は歳を取ったとはいえ、腕利きの騎士。上級妖魔となら互角以上に戦える。
(つまり、こいつは上級よりも、更に上の妖魔なの?)
妖魔の中でも、特別な強さの存在なのであろう。
「マリア、ここは私が時間を稼ぐ。はやく逃げろ」
お父様も相手の危険度を察していた。
目の前に相手に勝てないとことを、自分でも知っているのだ。
身を挺して非力な私を、部屋の外に逃がそうとする。
「ですが、お父様……」
「早く行くのだ、マリア! これは父としての最期の頼みだ……頼む」
お父様は微笑んでいた。
怯える愛娘を、精いっぱい安心させようとしている。
「はい、お父様。必ず助けを、呼んでまいります!」
父の決死の覚悟を、無駄にさせる訳にはいかなかった。
助けを求めに、私は部屋の出口に向かう。
『逃がしはしない。“我らが神の器”よ』
だが相手も反応してきた。
シャーーー!
無防備な私に、槍先が襲いかかる。
戦闘能力がない私には、回避できない危険な攻撃。
ガッ、キーン!
だが私は無事だった。
お父様の斬撃が、槍を打ち落としたのだ。
「妖魔め! 我が娘には指一本、触れさせんぞ! “バルマンの荒獅子”と呼ばれた、我が剣を受けるがいいぃい!」
お父様は荒々しい猛き叫びをあげる。
まるで若き日の父のようなエネルギーだった。
『邪魔者は消す』
「させぬぞ!」
槍の妖魔とお父様の激戦が始まる。
剣と槍が激しくぶつかり合う。
金属音が室内に響く。
(お父様……)
戦いにわき目もふらずに、私は駆けていく。
負傷しているお父様は、このままでは力は果ててしまう。
私の役目はこの部屋から脱出して、救援を求めに行くこと。
くっ……足が鉛のように重い。
私自身も連戦で、疲労がピークに達していたのだ。
(あと少し!)
ようかく目の前に、脱出の扉が迫る。
この先に逃げ込んだら、何とかなるはず。
「――――っ⁉」
だが、その時だった。
嫌な気配を感じて、私は横に飛ぶ。
「うっ⁉」
直後、左腕に激痛がはしる。
視線を向けて、確認する。
私の左腕が切れて、鮮血が飛び散っていた。
(攻撃を……受けた⁉)
これは間違いなく自分の血。
何者かが攻撃してきたのだ。
「逃がしはしない。“我らが神の器”よ」
無機質な声と共に、槍の妖魔が目の前に姿を現す。
こいつが私を攻撃してきたのだ。
(どうして、コイツが⁉)
先ほどの槍の妖魔は、お父様とまだ戦闘中。
「二体目がいたの……か」
私は理解する。
“真紅の槍の妖魔”は最初から二体いた。
こっちは出口を封鎖していたのだ。
「マリアァ!……くっ!」
お父様の悲痛な叫びが、背後から聞こえる。
私を助けようとしているのだ。
だが、もう一体に行く手を阻まれている。
こちらに近づくことすらできないでいた。
室内には他に誰もいない。
まさに絶体絶命の状況だった。
「“我らが神の器”よ。死をもって、その肉体から解放してやる」
妖魔は攻撃してきた。
目の前に槍先が迫ってくる。
スローモーションのように、ゆっくりと見えてきた。
周囲の音も聞こえない。
ああ……きっと、これが走馬灯なのであろう。
ゆっくりと、でも確実に私の心臓に、槍先が迫ってくる。
(ああ……このまま私は死んじゃうのか……)
それは諦めでもなく、事実だった。
避けようにも自分の身体は、微かにしか動かない。
絶対に避けられない必殺の一撃
“自分の死”が目の前にあった。
――――だが突如、槍先は止まる。
ガッキーーン!
いや違う。
激しい火花と共に、吹き飛んでいったのだ。
「マリアァ!!」
直後、時が動き出す。
私の名を呼ぶ声が、無音の空間を切り裂いたのだ。
ザッ、シュバーーーン!
槍の妖魔が吹き飛んでいく。
この声の主が斬撃で、吹き飛ばしたのだ。
「えっ……」
時間と音が動き出し、私は状況が把握する。
“一人の騎士”が私を助けてくれたのだ。
「そんな……なぜ……アナタがここに……?」
状況を把握しても、私は混乱していた。
目の前に立つ騎士の姿を見て、私は言葉を失ってしまう。
どうして、この騎士がここにいるの?
もしかしたら、これは夢?
妖魔の見せる幻術なのか?
――――いや違う。この騎士の顔を、私が見間違えるはずがない。
「マリア、待たせたな! オレ様が来たから、もう安心だぜ!」
暑苦しくも自信に満ちた声と姿。
頼もしいほどの不遜の笑みを。
この騎士のことを、私マリアンヌが見間違えるはずがなかった。
「ライン……あなた……」
私の窮地を救ってくれたのは、赤髪の幼馴染。
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