99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

文字の大きさ
上 下
37 / 57

第36話:学園祭の準備

しおりを挟む
 
 学園祭に向けて本格的な準備が始まる。
 まずは衣装デザインの確認から。

「これが“メイドカフェ”の……私たちの衣装ですか……? マリアンヌ様」

出来立ての試作メイド衣装を、クラス委員長さんはまじまじと見つめる。

「はい、そうですわ。実際にはスカートの丈や、細かい部分はもう少し可愛らしくなりますわ」

 メイドカフェの衣装デザインの担当は、私マリアンヌ。
ラフ画を見せながら、今後の仕上げてゆく衣装の説明をする。

 委員長は『なるほど』と頷きながら、細かい点を確認してくる。
 表情と言葉から、好印象であることがうかがえる。 

 ちなみに試作メイド服のラフ画デザインは、私が描いたものだ。
 試作の服は、ファルマの街に店を構える高級仕立ての屋さん製作。

私が次のような感じで頼んで、急遽作ってもらったものだ。



『こ、こんな奇抜なデザインの女中メイド服を、仕立てるのですか、マリアンヌ様?』

「はい、できる限り大胆に、なおかつ可愛らしくお願いしますわ!」

『なるほど、そういうことですか。これほど素晴らしいアイデアの詰まったデザインは、初めて目にしました。これをバルマン侯爵家のお嬢さまが考案されたとは、いやはや』

「では明日の朝までに、まずは試作品をお願いしますわ」

『えっ、明日の朝までですか⁉ いくらなんでもそれは……』

「条件として学園祭までの期間、こちらの店の売り上げを、全て当家で補償いたしますわ。いかがですか?」

『す、すべて⁉ は、はい! 喜んで明日の朝までに、試作品を完成させます! マリアンヌ様』



 こんな感じで、メイド服の試作一号機が完成していた。

 えっ? 
服のデザインなんて描けたのか、お前は……ですか?

 ふっふっふ……私は前世での漫画やゲーム、アニメが好きな女子。
だから乙女のたしなみとして、イラストを少しだけ描いていたの。

 あと、ちょっとアダルトなイケメンの絵も(小声)
 
 それにプラスして、マリアンヌさんのスキルもおかげもある。
令嬢な彼女は幼い頃から、絵画や楽器演奏などの芸術的な教育も受けてきた。
 
だから私の前世のメイドカフェ服の記憶を元に、デザイン画を用意したのだ。

さて、クラス委員長たちの反応はどうかな?

「これは……想像していた庶民の女中メイド服とは違い、素敵な衣装ドレスですわ、マリアンヌ様!」

「これほどの素晴らしい才能があったとは……さすがマリアンヌ様ですわ!」

 おお、好反応。
クラスの委員長さんをはじめ、他の子たちも試作メイド服を手にして、目を輝かせ感動している。
 うんうん、確かに可愛いメイド服は、乙女心にぐっとくるよね。
 
今までのメイド服と彼女たちはイメージが、違っていたのだ。
何しろこっちの世界の女中メイドさんといえば、掃除や家事などの肉体労働をする労働者。
 そのためにメイド服は汚れてもいいように、生地や色合いも作業服に近い。
あまり可愛らしくないのだ。

記憶が覚醒したばかりの私も、バルマン家に仕える女中たちの格好を見て、実はびっくりしたのだ。

『こ、こんな地味なのはメイドさんの服じゃない!』って内心ね。

 だから今回のデザインは、とにかく明るく可愛らしいものにした。
乙女でも萌える感じね。
 デザインを忠実に再現してくれた職人さんよ、ぐっじょぶ。
 
 ちなみに秋葉〇とかのメイドさんみたいに、この衣装にはエロスはあんまりない
 何しろ私たちは恥じらいのある、乙女な女学生なのですから。オッホホホ……。

 メイド服の可愛らしさが火を点けたのか、クラス委員のみんなはヤル気が出ていた。

「では、マリアンヌ様の衣装を元に、カフェの内容を決めましょう」

「まず飲み物は王室御用達の……」

「料理はオムライスが必須だということで、当家専任のシェフを……」

「教室の内装は、新進気鋭のデザイナーの方に改装を……」

 私の説明したメイドカフェのシステムを元に、どんどんと内容を細かく詰めていく。
凄く具体的に決めていっていた。
 
 取りまとめが的確なのは、流石は人望ある委員長さんだ。
 更にはクラス委員のみんなも、自分たちの持てるコネと財力を使い、凄い内容で計画してゆく。

 “王室御用達”や“専任のシェフ” 、“新進気鋭のデザイナー”とか、凄すぎる単語が出ているけど、その辺は気にしないおこう。
 
 何しろ彼女たちは、金持ち過ぎる貴族令嬢ばかり。
 この辺の金銭感覚は別次元であり、現実世界と比べてはいけないのだ。

「では、料理と飲み物、それに内装工事はこの内容でいきましょう。マリアンヌ様は衣装デザインと統括プロデューサーをお願い致します」

 委員長の役割指示も済み、今日の放課後会議は無事に終了。
 
 学園祭までの時間は限られている。
でも学園祭の準備は基本的には、令嬢的なマネー・パワーによる外注がほとんどだ。

 だから企画さえ決まってしまえば、スケジュール的にはまだ余裕があるのだ。
 
 それにしても私の担当は統括プロデューサーか。
 かなり大事な役職っぽい。

 でも実質な運営は、委員長さんが取り仕切ってくれている。
私も面倒くさいことは執事ハンスに丸投げしちゃえばいいから、何とかなりそうだね。
 
 よし、やる気が出来たぞ。
明日からも頑張って、学園祭の準備をしないとね!
 
ジロリ。

わ、分かっているわよ、ハンス。
もちろん、毎日の学業も忘れてないようにするわ。



 それから数日後の休日。
街の仕立て屋さんに、クラスの皆とやって来た。

 職人さんが突貫作業で、クラス全員分のメイド服が完成したのだ。
サイズを微調整するためにやって来た。
 
「この可愛らしい衣装が、私の"メイド服”……」

「スカートや首回りも素敵ですわ! マリアンヌ様」

 この数日間、私が改良に改良を重ねたメイド服は、“メイド服三式”まで到達。
その努力も甲斐もあり、クラス内で大好評。
クラスのみんなからも感嘆の声があがっている。

皆は今、実際に試着していた。
鏡に写る自分の姿に、誰もが感動している。

そんな中でクラスメイトのヒドリーナさんも試着していた。

「ヒドリーナ様、大変お似合いですわ」

 試着してご機嫌そうなヒドリーナさんを、褒め称える。
 でもこれはお世辞ではなく、確かに彼女は似合っていう。

 今回のメイド服はデザイン都合上、女性的な体型のメリハリが強調される。
だからヒドリーナさんのスタイルの良さが、よく分かるのだ。

 ヒドリーナさんはスタイルが良い。
胸も適度に大きいし、腰もくびれて細い。

前に聞いたらドルム領特産の激辛料理の効果で、スタイルを維持しているという。
女性の美しさを引き出す効果があるみたいだ。

 えっ、私の身体ですか?

 ヒ、ヒドリーナさんと比べないで欲しいんだから……私の可愛いお胸さまを。
 うちのバルマン領には、そんな素晴らしい特産品が無いから、仕方ないのよ……。

「マリアンヌ様も素敵でございます。この中で一番に似合っておりますわ!」

 でも落ち込む私を、ヒドリーナさんが褒めてくれる。
 
 えっ。そ、そうかな?
この中で一番似合っている、だってさ。
 
 えへへっ……お世辞でも嬉しいかも。
ハンス、鏡をここに!

うん、たしかに私マリアンヌも、メイド服が良く似合っている。
 これで私の機嫌も回復だね。

「では明日からまた学園祭に向けて、最終準備をしてまいりましょう」

 委員長さんの号令で、いよいよ学園祭の準備もラストスパートだ。
今のところ準備は順調に進んでいる。

 私も少しだけクラスのみんなと、打ち解けたし、衣装も好評。
 当日になるのが楽しみだ。

 えっ? 
油断はできない……ですか?

 止めてよ、そんな不吉な予言!
 久しぶりに……というか、私がはじめて順調に、イベントが進んでいるんだから。

 でも、私も心配になってきた。

塩でもまいておこうかな……ぽいっ!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私、確かおばさんだったはずなんですが

花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。 私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。 せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。 そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。 正義感強いおばさんなめんな! その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう! 画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ

春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。 エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!? この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて… しかも婚約を破棄されて毒殺? わたくし、そんな未来はご免ですわ! 取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。 __________ ※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。 読んでくださった皆様のお陰です! 本当にありがとうございました。 ※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。 とても励みになっています! ※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...